500ページの夢の束(2017年 アメリカ)

※この映画は、文部科学省特別選定(青年向き・成人向き)及び文部科学省選定(少年向き・家庭向き)です。

500ページの夢の束 [DVD] - ダコタ・ファニング, ベン・リューイン
500ページの夢の束 [DVD] - ダコタ・ファニング, ベン・リューイン

ある日曜日の朝、一人の若い女性が、ヘッドホンを両耳に当て、両目を閉じたまま、何かに聞き入っています。聞き入っているのは、「航海日誌 最後の記録」。彼女が自ら執筆した物語の世界です。彼女の耳には、老若男女、様々な人々の声が入ってきます。「全艦に告ぐ。警戒せよ。」、「放射線レベル上昇中。現在35%。」、「シールド起動。」、「シールド、60%にダウン。現在も下降中。」、「放射線の発生源は?」「生命維持装置にダメージ。繰り返す。生命維持装置に…。」宇宙船・エンタープライズ号は、どうやら破壊されたようです。生存者は、スポックと自分の2人だけ。このような事態において誰が生き残るのかは、誰も知らず、まさに、「運命は神のみぞ知る」なのです。

500ページの夢の束(字幕版) - ダコタ・ファニング, トニ・コレット, アリス・イヴ, パットン・オズワルト, ベン・リューイン, マイケル・ゴラムコ, ダニエル・ダビッキ, ララ・アラメディン, トッド・ワグナー, ベン・コスグローヴ
500ページの夢の束(字幕版) - ダコタ・ファニング, トニ・コレット, アリス・イヴ, パットン・オズワルト, ベン・リューイン, マイケル・ゴラムコ, ダニエル・ダビッキ, ララ・アラメディン, トッド・ワグナー, ベン・コスグローヴ

「航海日誌 最後の記録」を書き上げたのは、ウェンディ(ダコタ・ファニング)。ウェンディは、自閉症を抱えています。訳あって、唯一の肉親である姉・オードリー(アリス・イヴ)と離れ、自立支援ホーム「ベイ・エリア自立支援所」で暮らしています。そんなウェンディの趣味は、誰よりも大好きで、誰よりも知識がある『スター・トレック』のオリジナル脚本を書く事でした。

自閉スペクトラム症の理解と支援 ―子どもから大人までの発達障害の臨床経験から― - 本田 秀夫
自閉スペクトラム症の理解と支援 ―子どもから大人までの発達障害の臨床経験から― - 本田 秀夫

しばらくすると、「ベイ・エリア自立支援所」のソーシャルワーカーのスコッティ・カイル(トニ・コレット)が、出勤します。スコッティは、出勤してすぐに、入所者一人一人に笑顔で声を掛けると、ウェンディの部屋に向かいます。ウェンディは、まだ執筆に没頭していました。スコッティが小さな笛を吹くと、ウェンディがそれに気付き、同じように小さな笛を吹きます。2人は、毎日、このように挨拶をします。いつも執筆に没頭してしまうウェンディが、相手の気配に気付けるようにするための工夫です。



実は、来週、オードリーがウェンディを訪ねてくる事になっていました。スコッティがこの話題に触れると、ウェンディは、小さな声で「少し緊張してる」と、本音を明かします。そして、ウェンディは、スコッティと一緒に、毎日の日課を確認します。朝、起床し、ベッドを整え、タオルと洗面道具を用意。変な臭いがしたら、タオルを換えます。その後、バスルームへ行き、生理が始まっているかどうかを確認。始まっていたら、片手の親指を上げて、知らせます。そして、ナプキンを当てたら、親指を下ろします。それが済むと、着替えます。着替える服の色は、曜日ごとに決まっています。月曜はオレンジ、火曜はラベンダー、水曜は青、木曜は水玉、金曜は黄色、土曜は紫、そして、日曜は赤です。着替えが終わると、今度はキッチンでトーストを焼きます。ただし、同じ入所者のリチャードがキッチンを占領していなければですが。



朝食を食べ終えたら、シナモンを使ったスイーツを扱う飲食店「シナボン」へ出勤します。ペイジ通りを右へ行き、ブキャナン通りを右へ行き、マーケット通りでは停止します。ウェンディは、マーケット通りを絶対に渡ってはいけない事になっています。その後、321番のバスに乗って、「シナボン」の最寄りの停留所であるストーンズタウン・ガレリアへ向かいます。仕事中、店先で商品の試食を出す際は、通行人に笑顔を見せる事、早口で繰り返さない事、毎回違う口調で言う事を心掛けなければなりません。勤務時間が終わると、午後3時から勉強の時間です。午後4時になったら、愛犬のピートを散歩に連れていき、午後6時になったら、大好きな『スター・トレック』を観ます。それが終わると、午後7時から夕食、午後8時からは雑用の時間です。そして、雑用が終わると、就寝時間まで自由に時間を過ごす事ができます。



しかし、ウェンディの日課の確認が終わり、話題が「名前と場所」に変わると、ウェンディは、「名前と場所、大嫌い!」と、激怒します。ウェンディは、以前から、名前と場所を覚えるのが大の苦手なのです。ウェンディは、名前と場所を覚えない代わりに、テレビを観たいと訴えます。スコッティは、テレビを観る前に気持ちを落ち着かせる事の大切さを説くと、ウェンディは、「落ち着く、落ち着く。」と、自分に言い聞かせながら、気持ちをゆっくりと落ち着かせるのでした。



一方、オードリーは、自宅のキッチンで、まだ幼い娘・ルビーにミルクを飲ませていました。夫、ルビーとの3人暮らしであるオードリーは、夫の就職が決まったのを機に、子どもの頃にウェンディや母親と一緒に暮らした家を売る決意をし、玄関先に、「売り家」と書かれた看板を掲げていました。そんな事など知る由もないウェンディは、「ベイ・エリア自立支援所」の自室で、『スター・トレック』に夢中になっていました。その途中、ウェンディは、『スター・トレック』50周年を記念した脚本コンテストが開催される事を知ります。締め切り日である2月16日までに、印刷した原稿をハリウッドのパラマウントスタジオに郵送し、もし、優勝すれば、賞金10万ドルが贈られます。ウェンディがこのコンテストを知ったのは、締め切り日の1週間前。ウェンディは、毎日、一心不乱に脚本を書き続け、やがて、500ページから成る大作ができ上がります。



しかし、この脚本ができ上がったのは、締め切り日の2日前でした。物語をかなり細かく設定し、これでもか、これでもかと、推敲を重ねた結果、この日を迎えたのです。そんな時、オードリーが、約束通り、ウェンディを訪ねてきます。昔、ウェンディの事で苦労が絶えなかったオードリーは、スコッティに礼を述べ、ウェンディのいる部屋に向かいます。オードリーは、どうにかして、引っ越しする事をウェンディに伝えようとします。しかし、今、ウェンディには、オードリーとゆっくり話をしている暇はありません。頭の中が、『スター・トレック』の脚本コンテストの事でいっぱいなのです。賞金10万ドルを手にすれば、幼い頃に暮らした家を手放さずに済み、また、オードリーと一緒に暮らせると考えるウェンディ。しかし、オードリーは、苦労の連続だった過去を振り返りたくなくて、ウェンディの精一杯の努力を一切否定します。ウェンディは、パニック状態になり、近くにいたスコッティに助けを求めますが、すぐに過呼吸の症状が出ます。スコッティは、「大丈夫よ。そのまま待機。」と、ウェンディに何度も声を掛け、落ち着かせます。その間に、オードリーは、腹を立てて、そのまま黙って、道路脇に止めていた自家用車に戻ると、声を上げて泣くのでした。



午後7時、ウェンディが自室のベッドで横になっていると、スコッティが夕食の時間を知らせに訪れます。しかし、今のウェンディには食欲が全くありません。スコッティは、説得を諦め、その場を離れます。その後、少し時間が経つと、ウェンディはある事に気が付きます。この日は、日曜日。毎週日曜日は郵便の集荷がなく、おまけに、今週の場合、その翌日である月曜日が祝日。つまり、『スター・トレック』の脚本コンテストの原稿を、締め切り日に届くように郵送するのは、もはや不可能なのです。それでも、夢を諦められないウェンディは、愛犬・ピートを連れて、なんと、数百キロも離れたハリウッドのパラマウントスタジオへ原稿を持参する決意をします…。



この映画は、「JUNO ジュノ」(2007年)、「マイレージ、マイライフ」(2009年)の名プロデューサー、ダニエル・ダビッキが惚れ込んだ脚本が映画化されたもので、ダビッキは、「マネーモンスター」(2016年)のララ・アラメディンと共に、製作を務めています。メガホンを取ったのは、「セッションズ」(2012年)のベン・リューイン監督。リューイン監督は、1946年にポーランドで誕生し、3歳の時に家族でオーストラリアへ移住しました。リューイン監督は、物心が付いた頃から映画一筋の人生を歩んだ訳ではなく、なんと、刑事弁護士から映画監督に転身した、異色の経歴の持ち主です。



主人公のウェンディを演じたのは、「アイ・アム・サム」(2001年)、「宇宙戦争」(2005年)のダコタ・ファニング。スコッティと一緒に決めた毎日の動作の一つ一つを正しく行いながら、夢の実現に一歩ずつ近付こうとする一生懸命さがとても素敵である一方、姉のオードリーに今の自分を認めてもらえない悲しさに、胸が苦しくなりました。



ウェンディの姉・オードリーを演じたのは、「セックス・アンド・ザ・シティ2」(2010年)、「スター・トレック イントゥ・ダークネス」(2013年)のアリス・イヴ。ウェンディの成長した姿から目を背けるオードリーですが、オードリーは、決して、根っからの悪ではなく、人として前に進もうとする努力ぶりよりも、ウェンディがパニックになる度に、大変な苦労を強いられた記憶の方がはるかに上回っていて、オードリーは、オードリーで、深く悩んでいたのだと思います。そんな苦悩を、アリス・イヴは、見事に演じていました。



そして、ソーシャルワーカーのスコッティを演じたのは、「シックス・センス」(1999年)、「リトル・ミス・サンシャイン」(2006年)のトニ・コレット。スコッティは、ウェンディにとって、一番の理解者。ウェンディの身に何が起こっても、絶対に頭ごなしに叱る事はなく、常に、「もし、自分がウェンディだったら…。」と、考えて行動します。物語の後半では、スコッティのこの考え方が物語自体に大変な深みを与え、観る者を感動させます。ぜひ、映画を最後まで観て、それを確かめていただけたらと思います。



さて、ウェンディがいなくなった「ベイ・エリア自立支援所」は、大騒ぎになります。スコッティが他のスタッフと一緒になって探している間に、ウェンディは、ロサンゼルス行きの長距離バスに乗ります。しかし、愛犬・ピートを連れての長距離移動は楽ではなく、ウェンディは、ピートがバスの車内で粗相をしたのを理由に、何もない荒野にある停留所で降ろされてしまいます。この後、ウェンディは、様々な人々と出会い、心が豊かになっていきますが、何度か悲しいアクシデントにも遭い、追い詰められていきます。ウェンディは、自身を襲う数々のアクシデントをどう乗り越えるのでしょうか。

500ページの夢の束 [DVD] - ダコタ・ファニング, ベン・リューイン
500ページの夢の束 [DVD] - ダコタ・ファニング, ベン・リューイン

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント