ソウル・キッチン(2009年 ドイツ・フランス・イタリア)

ソウル・キッチン [DVD] - アダム・ボウスドウコス, モーリッツ・ブライプトロイ, ビロル・ユーネル, アンナ・ベデルケ, ファティ・アキン
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ドイツ第2の都市・ハンブルクのヴィルヘルムスブルク地区。この地区にあるレストラン「ソウル・キッチン」では、一人の青年が開店に向けて準備を進めています。青年の名は、ジノス(アダム・ボウスドウコス)。ギリシャ系の青年で、このレストランの若き主です。 夜になり、レストランが開店すると、店内はいつものように多くの常連客で賑わいます。ジノスは、ルチア(アンナ・ベデルケ)をはじめとする従業員たちと協力しながら、仕事をこなします。

ソウル・キッチン - アダム・ボウスドウコス, モーリッツ・ブライプトロイ, ウド・キア, ファティ・アキン
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「ソウル・キッチン」の営業時間終了後、外に出たジノスは、学生時代の同級生で、今は不動産関係の仕事をしているトーマス(ヴォータン・ヴィルケ・メーリング)と、偶然再会します。トーマスの隣には、婚約者のタニヤがいました。トーマスは、久々に再会したジノスの近況に興味津々で、根掘り葉掘り質問をするのですが、タニヤは、トーマスとは正反対に、疲労困憊していました。トーマスは、「ソウル・キッチン」を訪ねる事をジノスと約束し、タニヤと共に家路に就くのでした。

ソウル・キッチン (字幕版) - アダム・ボウスドウコス, モーリッツ・ブライプトロイ, ウド・キア, ファティ・アキン 
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トーマスたちと別れたジノスは、近くの高級レストランを訪れます。インド系の知人女性・クリューガーが主催する食事会に出席するためです。クリューガーは、ジノスの姿を見つけると、女性店員に椅子を1脚用意するよう頼み、他の出席者全員には少しずつ横に移動してもらうよう頼みます。ジノスは、早速着席しますが、クリューガーに姿勢の悪さをたしなめられてしまいます。



一方、同じ店内では、ある困った事が起きていました。ホールスタッフの女性が、人一倍、味にうるさいクレーマーとして有名な常連客の男性から、冷たいガスパチョを下げて、熱いガスパチョを持ってくるよう、言われたのです。女性は、男性の要望をすぐにシェフのシェイン(ビロル・ユーネル)に伝えます。シェインは、要望を耳にしてすぐに、男性の元へ向かいます。

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同じ頃、ジノスは、クリューガーからある驚きの言葉を聞かされます。なんと、クリューガーの孫が、犬肉を食べに、上海へ行ってしまったというのです。クリューガーの隣の隣にいた出席者の男性は、あまりの衝撃的な内容にショックを受け、クリューガーの話を途中で止めさせます。「俺なら、(クリューガーの孫を上海へ)行かせない。」と、クリューガーの気持ちに共感するジノス。しかし、ジノスの隣にいた恋人・ナディーン(フェリーネ・ロッガン)は、「一緒に(上海まで)来て。」と、ジノスに頼みます。実は、ナディーンは、近々上海に赴任する予定で、ジノスは、これまで「一緒に上海まで来てほしい。」と、何度もナディーンから頼まれていたのです。ナディーンがジノスについて来てほしい理由は、ただ寂しいからではありません。実は、ナディーンは飛行機恐怖症で、抗不安薬を服用する程だったのです。しかし、「ソウル・キッチン」で料理を作るのは、ジノスにとって、とても大切な仕事。ナディーンのためだけに、簡単に仕事を手放す訳にはいきません。やがて、両者による話し合いは、激しい口論と化し、クリューガーは、大声で口論を止めさせます。結局、ナディーンは、長きにわたる葛藤の末に、一人で上海に赴任したのでした。



一方、ガスパチョの温度の件でクレームを付けてきた男性のテーブルに着いたシェインは、ガスパチョとは冷たい飲み物であるとの揺るぎない認識を男性に伝えます。しかし、男性の方の揺るぎない認識は、全くの正反対。両者の話し合いは、ずっと平行線をたどったままでした。やがて、シェインは、自身の仕事に対する口出しが止まりそうにないこの男性に対して、堪忍袋の緒が切れ、持っていたナイフを男性のテーブルに勢いよく突き刺してしまいます。そのやり取りを少し離れた場所から見ていたレストランのオーナーは、シェインのプライドの高さに嫌気がさして、シェインに解雇を言い渡します。



オーナーがシェインに解雇を言い渡す声は、ジノスの席にも聞こえていました。ジノスは、突然、仕事を失ったシェインを心配し、シェインをレストランの外まで追いかけます。ジノスが外に出ると、レストランのスタッフが何人か外に出てはいましたが、誰もシェインを引き留めませんでした。スタッフが皆、店内に戻った後、ジノスは、シェインに向かって、「あんたの料理、大好きだ。」と、叫びます。そして、「じゃ、仕事をくれ。」と、シェインが応じると、ジノスは雇う決意をします。

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一方、ある刑務所には、ジノスの兄・イリアス(モーリッツ・ブライプトロイ)が、収監されていました。イリアスは、この日、仮出所を果たしました。ただし、仮出所できるのは週末だけで、午後6時までに刑務所に戻らなければなりません。イリアスが向かったのは、ジノスが一人で自身を待ってくれているであろう「ソウル・キッチン」でした。実は、イリアスは、ジノスに頼みがありました。もし、イリアスが定職に就いていたら、平日も仮出所が可能です。イリアスは、就職には興味がありませんが、平日も娑婆の空気を吸いたくて、半年でいいから、平日に「ソウル・キッチン」で働くふりをしたいというのです。ジノスは断固断りますが、イリアスは、融通の利かないジノスに苛立ちを見せ、「17時~2時まで」と、嘘の就業時間が書かれた申請書にサインをさせようとします。ジノスは、イリアスの相変わらず横着な手法に憤りますが、結局、目上の人からのプレッシャーには勝てず、サインをしてしまいます。イリアスは、ようやくわがままが通じ、ジノスに感謝の投げキッスをします。さらに、イリアスは、ジノスに対し、従業員に仮出所の話をしないよう頼んだり、20ユーロを貸してくれるよう頼んだりするのでした。



イリアスが刑務所に戻った後、ジノスは、店内にあるギリシャ製の食洗器を動かそうとして、腰を痛めてしまいます。ジノスは、「医者に行って。」と、心配してくれるルチアに対して、「行けねえよ。」と、大きな声では言えない事情を明かします。実は、ジノスは、保険に加入していなかったのです。今、ジノスにできる事は、腰の痛みに耐えながら、早退する事だけでした。その日の夜、ジノスは、スカイプを使って、上海にいるナディーンと再会します。2人は、久々にお互いの顔を見る事ができて、喜び合っていました。しかし、ジノスは、ナディーンの肌に直に触れられない事が辛くてたまりませんでした。ジノスは、決意します。ナディーンがいる上海へ行くと。上海のガイドブックを何冊か購入し、腰の痛みを抑えるための体操を習いに行き、ジノスの頭の中は、ナディーンの事でいっぱいでした。



そんなある日、シェインが、「ソウル・キッチン」を訪ねてきます。しかし、「ソウル・キッチン」で提供される料理は、高級レストランで腕を磨いてきたシェインからすれば、誰でも作れる、目新しさがないものばかり。シェインは、ジノスのプロ意識の低さ、そして、本物の料理を知らずに何でも喜んで食べてしまう常連客たちの人生経験の乏しさを、鋭く指摘します。シェインの指摘は、当然、ジノスのプライドを傷付け、…。



この後、シェインは、「ソウル・キッチン」で働き始めますが、歯に衣着せぬ物言いが仇となり、ジノスの大衆向けの味付けに魅力を感じていた常連客たちは皆、足を運ばなくなります。唯一、足を運んでくれるのは、近所に住む年老いた男性・ソクラテス(デミール・ゲクゲル)だけでした。閉店の危機を感じたジノスは、シェインに自宅待機を命じ、「ソウル・キッチン」で働くふりをする契約をしたイリアスは、古くからの遊び仲間たちと一緒に「出勤」し、タバコをふかしながら、大声ではしゃぎます。そんな中、ジノスの学生時代の同級生で、不動産関係の仕事をしているトーマスが、店舗の売却をジノスに勧めます。しかし、ジノスは、簡単に首を縦に振りません。そこで、トーマスは、なんと、衛生局に電話をかけ、「『ソウル・キッチン』で食中毒が発生した。」と、嘘の通報をして、ジノスから「ソウル・キッチン」を強引に奪い取ろうとします。ジノスは、おそらく「ソウル・キッチン」開業以来最大であろう困難と、どう向き合うのでしょうか?



メガホンを取ったのは、ドイツ・ハンブルク出身で、トルコ系の若き巨匠、ファティ・アキン監督。「愛より強く」(2004年)でベルリン国際映画祭グランプリに、「そして、私たちは愛に帰る」(2007年)でカンヌ国際映画祭脚本賞に、そして、2009年に、この映画で、ヴェネチア国際映画祭審査員特別賞&ヤングシネマ賞の2冠に輝き、36歳の若さで、世界三大映画祭を制覇しました。



この映画に登場するレストラン「ソウル・キッチン」には、モデルとなった場所があります。それは、ジノスを演じたアダム・ボウスドウコスがハンブルクで経営していたレストランでした。アキン監督はそのレストランをよく訪れていたそうで、そこで過ごした日々を映画に収めたくて、プロジェクトを起ち上げました。この映画の舞台であるドイツで公開されたのは、2009年末でした。公開2か月で、映画は130万人を動員する大ヒットとなり、その後、イタリア、フランス、ギリシャ、オーストリア、トルコでも大ヒット。さらに、アメリカでも公開され、公開1週目で、劇場1館あたりの興行収入1位となりました。



ドイツ第2の都市・ハンブルクが舞台となっているこの映画では、世界最大と言われる赤レンガの倉庫街、運河沿いの高級レストラン、朝まで営業しているクラブやバー等の観光地を目にする事ができます。さらに、ルイ・アームストロングや、クインシー・ジョーンズ、カーティス・メイフィールドら大御所の曲や、近年のドイツの若者向けの曲を聴けるのも、この映画のポイント。どれも、アキン監督とボウスドウコスの2人が選曲しているそうです。曲のジャンルの幅広さは、ギリシャ系、トルコ系等、多民族が暮らす町・ハンブルクそのものを表現しているように感じました。



私が印象に残っているシーンは、冒頭のシーンです。ジノスが「ソウル・キッチン」の開店前に仕込みをしているのですが、業務用の既製品の袋を次々に開封し、豪快に野菜や果物等を切り、凍ったままの揚げ物を、油の入った鍋の中に豪快に入れていました。どの料理も、既製品に少し手を加えたものだと分かっていましたが、不思議な事に、どれも本当に美味しそうに見えました。いい意味で、料理自体に庶民的な雰囲気を感じ取り、魅了されたという事なのかもしれません。しかし、このやり方に待ったをかけるのが、高級レストランを解雇されたシェイン。シェインの料理に対する考え方は、高級志向の極みと言えますが、プロの料理人としての最低限の意識の持ち方をジノスに教えて、「ソウル・キッチン」の売り上げがアップするのかと思いきや、まさかの急降下。シェインは、この急降下を機に、高級志向を改めるのでしょうか、それとも、変わらぬままなのなのでしょうか?



また、エンドロールの真っ黒な背景と、登場人物が描かれたカラフルでモダンなイラスト、文字の一部に鮮やかな色のペンキをサッとひと塗りしたようなシンプルな色付けと、ソウルミュージックのBGMの融合が非常にスタイリッシュです。ぜひ、注目を!

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