おみおくりの作法(2013年 イギリス・イタリア)

おみおくりの作法 [DVD] - エディ・マーサン, ジョアンヌ・フロガット, アンドリュー・バカン, ウベルト・パゾリーニ
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イギリス・ロンドン南部の下町・ケニントン地区にある教会では、葬儀が行われています。「アメイジング・グレイス」の歌声が響く中、棺を見守るのは、この教会の神父と参列者のジョン・メイ(エディ・マーサン)の2人だけです。ジョンは、これまで、様々な人たちの葬儀に、必ず一人で参列してきました。なぜ、ジョンは、誰も参列しない葬儀にばかり足を運ぶのでしょうか?なぜなら、ジョンは、この地区で民生係として働く勤続22年の公務員で、孤独死した人たちの葬儀を執り行うのを仕事にしているからです。そのため、ジョンは、教会の神父をはじめ、火葬場の職員や、引き取り手がなかなか現れない遺体を何か月もの間預かっている監察医と顔馴染みでした。

おみおくりの作法 [Blu-ray] - エディ・マーサン, ジョアンヌ・フロガット, アンドリュー・バカン, ウベルト・パゾリーニ
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そんなある日、ジョンは、2日前に遺体が発見されたという女性・ジェーンの自宅で、遺品の整理を行います。ジョンを案内した管理人の男性(マイケル・エルキン)によると、10年以上にわたって来客がなく、飼い猫が近くで目撃されていました。男性は、リビングルームで、バースデーカードを見つけます。宛て名はスージーとなっていて、1年前の消印が押されていました。ジェーンには身寄りがないと聞かされていたジョンは、スージーの存在に驚きますが、男性が文面を読み進めていくと、スージーが飼い猫の名前である事が分かります。さらに、ジェーンは、スージーから自身に宛てて書いたという設定でバースデーカードの返事も書いており、生前のジェーンの孤独感に、男性は胸を痛めます。

おみおくりの作法(吹替版) - エディ・マーサン, ジョアンヌ・フロガット, アンドリュー・バカン, ウベルト・パゾリーニ, ウベルト・パゾリーニ, ウベルト・パゾリーニ
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その後も、ジョンは、ジェーンの遺品の整理を淡々と進めていきます。ジョンは、スージーが映った写真、ジェーンが使っていた化粧品、引き出しの中にあった書類などを1つ1つ丁寧にビニール袋に入れていきます。整理の途中、ジョンが寝室のベッドにふと目をやると、ジェーンが頭を乗せた跡がしっかり残ったままになっている枕が視界に入ります。ジョンは、ジェーンの生活感がまだ枕にしっかりと残っているのを感じ、神妙な面持ちになります。

おみおくりの作法(字幕版) - エディ・マーサン, ジョアン・フロガット, カレン・ドルーリー, アンドリュー・バカン, シアラン・マッキンタイア, ウベルト・パゾリーニ
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職場のデスクに戻ったジョンがデスクワークをしていると、電話がかかってきます。電話の声の主は、6週間前に亡くなり、遺体の引き取り手がなかなか現れなかったラドゥロヴィッチの息子・ラドリーでした。ラドリーは、訳あって名字をラドゥロヴィッチからラドリーに改めていました。ジョンは、ついにラドゥロヴィッチを知る人物が現れた事を喜び、葬儀費用を負担する必要がない事、葬儀への参列の義務がない事などを説明します。しかし、父と息子の間には、長きにわたる確執があったようで、ラドリーは、葬儀に参列する意志が毛頭ありませんでした。ジョンは、またしても、自分だけが参列する葬儀を執り行う事になりました。



実は、ジョンもまた、身寄りがない人間でした。レンガ造りのアパートの一室で暮らすジョンは、いつも家中を綺麗にしていました。食事は、ダイニングルームの片隅に置いたテーブルで摂ります。ナイフ、フォーク、白いナプキンを丁寧に並べ、白くて平らな皿に、魚の缶詰の中身を広げ、そこに焼きたてのトーストを添え、皿の両側には、淹れたてのコーヒーと、フルーツを置きます。仕事と同じような丁寧な暮らしぶりに、ジョンの真面目さがひしひしと伝わってきます。また、ジョンは、自宅にあるアルバムに、葬儀を執り行った人たちの写真を、1枚ずつ丁寧に貼り付けていました。どの写真もにこやかな表情をしているものばかりで、ジョンは、こうする事で、たとえ彼らと話をした事がなくても、彼ら一人一人を心から敬っていました。



数日後、ジョンは、教会でジェーンの葬儀を執り行います。神父のスピーチの原稿は、ジェーンの歩んだ生涯についてジョンが詳しく調べ、書き上げたものでした。ジェーンが生まれた時の両親の気持ちを想像する事から始まり、ジェーンが真っ赤なネックレスを大切にしていた事、趣味がフラメンコだった事、晩年は飼い猫のスージーをまるで血の繋がった娘のようにかわいがっていた事など、生前のジェーンの姿が目に浮かぶような内容でした。葬儀が終わった後、ジェーンの遺体は、教会の敷地内にある公営合同墓に6人目の遺体として埋葬されました。埋葬を見守っていたジョンは、別の遺体がたくさんの参列者に見守られて埋葬されるのを見かけ、人によって、与えられる運命が大きく違うのを改めて感じるのでした。



ある日、ジョンの元に、ビリーという男性の遺品の整理を依頼する電話がかかってきます。ジョンは、遺体が発見された場所の住所を尋ねると、それまでメモを取っていた手が突然、止まります。ビリーが住んでいたのは、ジョンの住むアパートの向かい側に建つ、別のアパートだったのです。ジョンはすぐに現場に駆けつけ、管理人の男性(デヴィッド・ショウ・パーカー)に案内してもらいます。男性曰く、警察に「異臭がする」と通報し、駆け付けた警察官と一緒に部屋に入ると、死後数週間は経過していると思われるビリーの遺体が見つかったのです。ジョンは、我が家のすぐ目の前に、身寄りのない男性が住んでいた事に全く気が付いていませんでした。ジョンと男性は、ジョンが普段持ち歩いている白衣にそれぞれ着替え、遺品の整理を始めるのでした。



ジョンは、職場のデスクに戻り、早速、レポートの作成を始めます。その途中、上司のプラチェット(アンドリュー・バカン)が訪ねてきます。プラチェットは、自室でジョンにある重大な事実を告げようと考えていました。実は、経費削減を理由に、ケニントン地区の民生係のポジションとダリッチ地区の民生係のポジションが統合される事になったのです。ジョンがプラチェットの部屋に入ると、プラチェットの隣に、ダリッチ地区で民生係として働く女性職員・ピルジャーが立っていました。プラチェットは、今日からケニントン地区で発生する業務がダリッチ地区に移り、ケニントン地区のも、ダリッチ地区のも、全てピルジャーが担っていくといいます。つまり、ジョンは、リストラを告げられてしまったのです。プラチェットは、ジョンの上司になってわずか2か月しか経っていませんでしたが、ジョンが孤独死した人たちの葬儀をわざわざ執り行う事を「経費の無駄遣いだ。」と問題視していました。常に冷静沈着なジョンは、自身の故人に対する真摯な姿勢を鼻で笑うプラチェットからの突然の知らせに、戸惑いを隠せませんでした。ジョンがプラチェットの部屋を去る際、プラチェットは、現在ジョンが担当しているビリーのケースを最後の業務とし、それを3日間で終えるよう、命じます。ジョンは、自身が執り行う最後の葬儀となってしまったビリーの葬儀に向けて最善を尽くす決意をし、スピーチのための調査に取り掛かります…。



あくまでこの映画の範囲に限って言わせていただきたいのですが、同じイギリス人でも、故人に対する考え方は見事に分かれていましたね。プラチェットのように、「身寄りがない故人の葬儀なんて、経費の無駄遣いだ。」と言い切る人もいれば、ジョンのように、身寄りがない故人のために最善を尽くす人もいましたね。私は、ジョンの考え方に近い日本人が多いものと信じたいです。私たち日本人は、既にジョンの考え方に近くても、万が一そうでなくても、ジョンの真心を尽くす姿勢を、ぜひ見習いたいものです。



監督は、ウベルト・パゾリーニ。「フル・モンティ」(1997年)でプロデューサーを務めた事で知られる人物です。「おみおくりの作法」は、監督デビューして第2作目で、第70回ヴェネチア国際映画祭で、オリゾンティ部門の監督賞を含む4つの賞を受賞しました。パゾリーニ監督は、ガーディアン紙に掲載されていたある記事に目が留まった事がきっかけで、この映画の制作を決意したそうです。その記事とは、ロンドンのウェストミンスター地区で、ジョンと同じ仕事をしている公務員を紹介するものでした。パゾリーニ監督は、ロンドンの各地区に1人いる民生係のうち、30人に取材し、さらに、6か月にわたって、彼らの仕事も見学しました。故人の自宅を見学したり、葬儀や火葬に参加したりする事で、同じ民生係でも、事務的に仕事をこなす人もいれば、故人のためにもっと時間をかける人もいる事を学んだそうです。また、パゾリーニ監督は、実際に亡くなった方々の写真を譲り受け、ジョンがアルバムに写真を1枚ずつ貼り付けるシーンで使用しています。写真に写っている一人一人の笑顔に、ぜひ注目していただけたらと思います。



この後、ジョンは、ビリーの生涯を辿る旅に出ます。ジョンが会いに行った人全員が口にするのは、ビリーが極端なまでに気性が荒く、誰からも煙たがられていた事でした。しかし、ビリーがこうなったのには、理由があります。それは、1982年に、イギリスとアルゼンチンが、アルゼンチンの沖合に浮かぶフォークランド諸島の領有権を争った、フォークランド紛争の際に、現地へ出兵した事でした。ビリーは、ならず者の集まりとされるパラシュート部隊に所属し、罪のない人たちを殺める経験を積み重ね、心を病みました。そして、フォークランド紛争が終わり、ロンドンに戻ると、妻や娘のケリー(ジョアンヌ・フロガット)と縁を切り、路上生活者となったのです。ジョンは、会いに行った人全員に、ビリーの葬儀への参列を頼むのですが、誰もが首を横に振ります。特に、娘のケリーは、優しい性格ではありますが、自身と母親を裏切ったという恨みをずっと抱いていて、ジョンが説得するのはとりわけ困難でした。ジョンは、彼女の優しい性格を信じ、なんとしても葬儀に参列してほしいと願うのですが、そんな矢先に…。

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