ワン・フロム・ザ・ハート(1982年 アメリカ)

ワン・フロム・ザ・ハート 【2003年レストア・バージョン】 [DVD]
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ある年の7月3日、アメリカ・ラスベガス。アメリカ独立記念日を翌日に控えたこの日、旅行代理店「パラダイス」の前を、一獲千金を夢見る大人たちが大勢行き交っています。「パラダイス」のショーウィンドーの中では、女性社員・フラニー(テリー・ガー)がそんな大人たちに目を向ける事なく、展示物の入れ替え作業に気持ちを集中させていました。その後、作業が終わり、ショーウィンドーの中でニューヨークの町並みが出来上がると、フラニーは、抱え切れないくらいの数の荷物を抱え、車で帰宅の途に就きます。自宅に到着したフラニーは車を降り、一度にすべての荷物を運ぼうとしますが、玄関の扉に着く前に、幾つか落としてしまい、それに気付かぬまま、中に入っていきます。すると、そこへ1台の車が通りかかります。車を運転していたのは、一人の若い男性でした。男性は、フラニーが落とした荷物が風に吹かれて転がっているのを目にし、車から降りて、ざっと拾い集め、フラニーの自宅に持っていきます。この男性の名は、ハンク(フレデリック・フォレスト)。実は、ハンクは、フラニーの恋人であり、なんと、ここでフラニーと一緒に暮らしているのです。翌日の7月4日は、5年前に2人が出会った記念日。2人は、記念日の前に、お互いにプレゼントを渡します。フラニーはタヒチ・ボラボラ島旅行の往復航空券を、ハンクは自分たちが住む自宅の譲渡証書を、それぞれ渡します。

ワン・フロム・ザ・ハート 【2003年レストア・バージョン】 [Blu-ray]
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しかし、そんな幸せな時間も束の間、2人は口論を始めてしまいます。付き合い始めたばかりの頃は、お互いにお互いの事でときめいていたものですが、出会いから5年も経つと、それぞれ自分磨きを面倒臭がってしまい、やがて、付き合っている事に飽きてしまうのです。この年の初め、フラニーはハンクの親友・モー(ハリー・ディーン・スタントン)と、ハンクはモーの恋人・ジャンと、キスをしていました。フラニーは、その頃から「ハンクとの恋はもう終わった。」と考えていましたが、この口論をきっかけに、「今度こそ、この恋は終わりよ。」と破局を確信し、車に乗って、出て行ってしまいます。

ワン・フロム・ザ・ハート(エクスパンディッド・ヴァージョン) - ARRAY(0x11210730)
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フラニーが出て行った後、ハンクが最初に取った行動は、モーの自宅を訪ねる事でした。目的は、勿論、フラニーがモーとキスをしてしまった理由を知る事でした。モーは、「あくまで、新年の挨拶として、キスをしただけだ。」と釈明しますが、ハンクは、全く信じようとはしません。しかし、ハンクも、モーの恋人・ジャンを相手に、同じ事をしているため、人の事をどうこう言える立場ではありません。ハンクは、逆に、ジャンとキスをしたいきさつについてモーから尋ねられると、何も言えなくなり、帰ろうとしますが、すぐに引き返して、モーに謝罪したのでした。同じ頃、フラニーは、「パラダイス」の同僚で親友のマギー(レイニー・カザン)の元に身を寄せていました。



フラニーは、マギーの元に身を寄せて間もなく、「パラダイス」のショーウィンドーで、再び展示物の入れ替えをしていました。今度は、タヒチの青空と海が広がる景色を作っていました。その途中、フラニーは、「パラダイス」の前を通りかかったタキシード姿の男性・レイ(ラウル・ジュリア)に声を掛けられます。フラニーは、タヒチに1度も行った事がありませんが、レイは、何度か行った事がありました。また、レイは、ショーウィンドーで作業に打ち込むフラニーを以前からよく見かけていました。レイは、「パラダイス」の近くにある店でピアノを弾き、歌を歌う事もあると言います。レイは、フラニーを店に招待しようとしますが、この日、フラニーはマギーと一緒にショッピングに出掛ける約束をしていました。しかし、レイの猛アタックには勝てず、店の連絡先が書かれたマッチ箱を受け取ってしまいます。フラニーは、レイと一旦別れ、マギーと一緒にショッピングに出掛けます。レイと別れた瞬間、フラニーは、横に並んで歩いていたハンク、モーと偶然すれ違います。しかし、お互いにすれ違った事に、4人共、気付いていませんでした。



その後、街を歩いていたハンクとモーは、街角で写真撮影に臨んでいたサーカス団のダンサー・ライラ(ナスターシャ・キンスキー)に一目惚れします。ライラも、2人をじっと見つめていましたが、ライラが2人のうちのどちらに関心があるのかはよく分かりませんでした。しかし、その後、ライラは、仕事のやり方を巡って、自身の父親と口論になってしまいます。ハンクは、ライラと父親の口論には全く関心がなく、ライラの美貌にますます惚れるばかり。そして、ライラが一人になったタイミングを見計らって、ライラに声を掛けます。そして、喫煙者であるライラに「ライターの火を貸してほしい。」と求められると、快くライターに火を付けて、差し出します。さらに、ライラの体の美しさを褒めたたえると、ライラの口から「9時にフリーモント・ホテルで」との言葉が。ハンクは、迷わず首を縦に振るのでした。



レイと一旦別れたフラニーは、マギーと一緒に、「パラダイス」の近くにあるショッピングモールを訪れ、後でレイと会う時に着るドレスを選んでいました。一方、ハンクも、後で「フリーモント・ホテル」でライラに会う時に着るスーツを買うため、モーと一緒に、同じショッピングモールに来ていました。両者がこのショッピングモールでバッタリ会う事はありませんでしたが、フラニーが、身支度のために、ハンクが一人で暮らす自宅に戻った時は、ハンクが背後から声を掛けてきました。フラニーは、手早く身支度をしますが、ハンクは、フラニーがこれからどこへ出掛け、何をするのかが、気になって仕方がありませんでした。そして、ハンクは、自宅を離れようとするフラニーを背後から抱きしめますが、フラニーは、ハンクの腕を力いっぱい振りほどき、出て行くのでした。



一路、レイの待つ店に向かうフラニー。ところが、その道中、「葉巻に火を付けたい」と声を掛けてきた高齢の男性に、うっかりして、マッチ箱を渡してしまいます。フラニーは、店の名前も住所もよく覚えておらず、ただラスベガスの街を彷徨うしかありませんでした。一方、ハンクは、ライラと約束した通り、「フリーモント・ホテル」に来ているのかと思いきや、そうではなく、同じくラスベガスの街を彷徨っていました。その後、フラニーは、レストラン「トロピカル」の前までやって来ます。すっかりヘトヘトになっていたフラニーは、店の中に入っていき、店のオーナー(アレン・ガーフィールド)に、空いているテーブルに案内されます。フラニーが着席して、しばらくすると、レイが通り掛かります。レイは、できたての料理で両手がふさがっている状態で店内を歩き回っていました。実は、フラニーがずっと探していた店は、この「トロピカル」だったのです。レイは、ここでピアノを弾いたり、歌を歌ったりしているのですが、実は、それらをさせてもらえる機会はあまりなく、勤務時間のほとんどをウェイターの仕事に費やさなければなりませんでした。レイは、仕事の手を休め、フラニーの隣の席の客が注文した料理をフラニーのテーブルに置き、フラニーの席の向かい側に座って、なんと、デートを始めてしまいます。レイの身勝手な行動は、当然、すぐにオーナーに見つかってしまい、レイは、「トロピカル」を解雇されてしまいます…。



この後も物語は続きますが、物語の後半の必見ポイントは、歌とダンスです。この後、レイとフラニーは、「トロピカル」にある、誰もいないラウンジへ行き、2人っきりの時間を楽しみます。レイは、ここで初めてピアノの弾き語りをします。レイのピアノの弾き語りは、とても味わい深いものがあり、オーナーがレイを解雇した事を後悔するのではないかと思うくらいでした。次に、レイはフラニーと一緒にタンゴを踊りますが、最初に2人が動き出した瞬間から最後までずっと引き込まれてしまい、時間が凄く短く感じました。そして、タンゴを踊り終えた2人は、ラスベガスの街に出て、町中の若者たちを巻き込んで、ダイナミックに踊ります。観ていて、私の心の中でテンションがグングン上がるのを感じました。また、ハンクが「フリーモント・ホテル」で会う事になったライラも、艶かしい表情でハンクを誘惑するように歌ったり、美脚を存分に活かしてダンスをしたりと、大活躍します。物語の後半は、まさに見せ場の連続で、観ていて凄く楽しくなります。



監督は、「地獄の黙示録」(1979年)、「ランブルフィッシュ」(1983年)のフランシス・フォード・コッポラ。「ワン・フロム・ザ・ハート」は、コッポラ監督の映画の中では大変珍しい、物腰の柔らかいタイプの映画です。コッポラ監督の通常のイメージがしっかり染みついている映画ファンにとって、この映画は、かなり実験的な造りに見えるかもしれません。



当時、この映画は、最初から最後まで、コッポラ監督が所有していたスタジオ「ゾーイトロープ・スタジオ」で撮影されました。屋内での撮影は天候に左右される心配がないとは思いますが、普段、スタジオでの撮影とロケの両方が上手く組み合わさっている映画を観る事に慣れている私としては、スタジオの中で、「建物の外」という設定でセットが組まれ、撮影が行われた事に、何となく違和感を感じました。



違和感といえば、この映画はミュージカル映画であるにもかかわらず、ハンク役のフレデリック・フォレストも、フラニー役のテリー・ガーも、劇中ではほとんど歌っていません。実際に劇中に登場する曲のほとんどを歌っていたのは、シンガーソングライターのトム・ウェイツと、カントリー歌手のクリスタル・ゲイルです。ウェイツがハンクの心情を、ゲイルがフラニーの心情を、それぞれ歌っています。私は、プロの歌手が役の気持ちを代弁している事に、戸惑いを覚えました。何事も、プロの歌手に任せれば良しという訳ではないと思います。この映画は、大変残念な事に、興行的に大失敗し、コッポラ監督は、「ゾーイトロープ・スタジオ」の売却を余儀なくされたそうです。ひょっとしたら、劇場公開当時に映画館に足を運んだ人たちも、私と同じ事、或いは、私とは別の視点で何かを感じたのかもしれません。もし、ご興味があれば、ぜひご覧いただけたらと思います。

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