木と市長と文化会館 または七つの偶然(1992年 フランス)





フランス・ヴァンデ県にある田舎町・サン=ジュイール。この町にある小学校では、国語の授業が行われています。この日、子どもたちは、校長のマルク・ロシニヨル(ファブリス・ルキーニ)から、「もし」の使い方について教わっていました。これから、この町で起こったある騒動が、「もし」という言葉を用いて描かれていきます。


フランスの政治制度 (制度のメカニズム)
東信堂
大山 礼子

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第1章 もし1992年3月の地方選挙の前に大統領が属する左派が議会少数派になってなければ

地方選挙を間近に控えていたこの頃、町の至る所で候補者のポスターが張られていました。町にある飲食店「ブラッスリー・リップ」では、有権者同士が意見を戦わせていました。この町から選挙に立候補しているのは、社会党公認候補のジュリアン・ドゥシューム(パスカル・グレゴリー)。生まれも育ちもサン=ジュイールで、今は、サン=ジュイールの市長を務めています。プライベートでは、既に離婚しており、元妻はストラスブールに住み、自身は、娘・ヴェガ(ジェシカ・シュウィング)と一緒に、サン=ジュイールで暮らしていました。





第2章 もしジュリアンが落選後、小説家のボリヴァージュに恋をしていなかったら

ジュリアンは、パリに行く事を夢見ていました。実は、以前から、国会議員を目指しているのです。ジュリアンは、政治家たちの汚職事件にうんざりしている有権者の心を掴もうと必死になっていました。また、町の過疎化を解消したいという夢もありました。自分の夢を叶えるには、長い階段を登られなければならないと思っているジュリアンでしたが、恋人で小説家のベレニス・ボリヴァージュ(アリエル・ドンバール)には、ジュリアンが時間の無駄遣いをしているようにしか見えませんでした。ボリヴァージュは、「早くパリへ行って、作戦を練るべき。緑の党の動きにも注意した方がいい。」とジュリアンにアドバイスをします。ジュリアンが国会議員を目指す上で何よりも大事なのは、環境保護の大切さを過激に訴える政党・緑の党の考えに多くのエコロジストが共感するような事態を避ける事でした。しかし、ボリヴァージュは、親切な人に見えて、実は全く違います。ジュリアンにパリへ行くのを勧めた本当の理由は、サン=ジュイールの環境にありました。ボリヴァージュは、田舎ならではの濃密な人間関係が嫌で、パリのような都会で誰にも干渉されない生活を送りたかっただけなのです。それに対し、ジュリアンは、地元の人や伝統的な建物、そして、自然を大切にし、また、地元で採掘された石を使った市民会館の建設も考えていました。図書館やメディアセンター、展覧会に使える会場、野外劇場、プールの建設も行うつもりでいました。



第3章 もし保護地区の木が風雨に耐えて奇跡的に残っていなかったら

市民会館の設計は、有名建築家のアントワーヌ・ペルゴラが担う事になりました。しかし、そんな中、景観が大きく変わっていくこの計画に反対する市民がいました。小学校で国語の授業をしていた校長のロシニヨルです。ロシニヨルは、死刑制度には反対していますが、ジュリアンだけは別だといいます。ロシニヨルにとっては、町に残る自然こそが芸術作品。それが傷付けられるのは、わざわざスローライフを求めて都会から移住した人間として、どうしても許せないのです。声を荒げて、自分の意見を妻にぶつけるロシニヨル。妻はロシニヨルを優しくなだめますが、声は大きくなる一方です。すぐ近くで声を聴いていた娘・ゾエ(ギャラクシー・バルブット)は、両手で耳を力いっぱい押さえていました。ロシニヨルが大声になるのには、れっきとした理由がありました。たとえしっかりとした意見を持っていても、「自分は政治家になれそうにない。」と諦めていたためです。ロシニヨルは、「自分にできる事は、陰で毒を吐く事だけだ。」と勝手に思い込んでいました。しかし、「誰も自分に投票してくれないに決まっているし、自分は誰からも賄賂を受け取っていない。」と弱気になったかと思うと、「どうせ、ジュリアンは、緑の党から賄賂を受け取っているに決まっている。」と何の根拠もない発言で、自分を強く見せる一面もありました。やがて、市民会館の模型が完成します。しかし、設計のプランには、植樹をすべきかどうか、駐車場をどうすべきかなど、まだまだ改善の余地がありました。



第4章 もし雑誌「明後日」のブランディーヌ・ルノワールがラジオ放送を録音するために留守番電話を切っていなければ…

雑誌「明後日」で活躍中のフリーライター・ブランディーヌ(クレマンティーヌ・アムルー)は、息子を小学校まで送り届け、「明後日」の編集部のオフィスに出勤します。出勤した時、同じ編集部で働く秘書が、ブランディーヌと電話が繋がらなくて困っていました。ブランディーヌは、留守電電話を切ったままにしていたのです。秘書が電話で伝えたかった内容を説明しようとしたその時、ブランディーヌは、編集長(フランソワ・マリー・バニエ)に呼び止められます。編集長は、義妹のいとこから「恋人を紹介したい。」と言われ、ブランディーヌとの打ち合わせの日程を急遽変更しなければならなくなったのです。編集長の義妹のいとことは、ジュリアンの事。そう、紹介したい恋人とは、ボリヴァージュの事だったのです。すると、そこへボリヴァージュがジュリアンと一緒にやって来ます。2人がやって来た目的は、ボリヴァージュは次回作の取材、ジュリアンは市民会館の建設の件の陳情でした。緑の党を支持するエコロジストたちが計画に理解を示しているかどうかを心配した編集長は、緑の党の思想に注意するよう、ジュリアンに警告するのですが…。



私は、「とてもシンプルなドタバタ劇なのかな?」と想像して、この映画を観ましたが、実際に観てみると、もう少し複雑な構成の、風刺の効いたコメディー映画でした。「勝手にドタバタ劇だと期待してこの映画を観るのは、あまり良くなかった。」と反省してしまいました。この映画は、政治に関する討論のシーンが多いので、フランスの政治への関心が高い人に勧めたい、少々マニアックな映画と言えます。しかし、フランスの政治にあまり詳しくない人も、十分楽しめると思います。と言うのも、日本でも問題となっている過疎化対策がテーマになっているので、過疎化対策の視点で観る方法もあるからです。この方法で観ると、過疎化に危機感を覚えているのは、日本も、フランスも同じなのだという事がよく分かります。



この後、物語は、

第5章 もし雑誌の入稿時にブランディーヌがユニセフに付き添いソマリアに行っていなければ

第6章 もし市長の娘ヴェガが教師の娘ゾエが通る道にボールを飛ばしていなかったら

第7章 もしある公務員が通常の業務を熱心に遂行していなかったら

と、続いていきます。

第1章から第7章までのどのタイトルも、ある共通のフレーズが続くのですが、それは一体何でしょうか?答えは、結末を観ないと分かりません。結末まで観るのに、なかなかの量のエネルギーが必要ですが、結末が分かった瞬間の喜びは、何とも言えないものがあります。ぜひ、この映画で、その喜びの瞬間を味わってください。特に、第6章が大きなポイントですよ!





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