スーパー・チューズデー 正義を売った日(2011年 アメリカ)


スーパー・チューズデー ~正義を売った日~ [DVD]
松竹
2012-09-08

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アメリカでは、大統領選挙が行われる年の3月上旬或いは中旬の火曜日の事を、「スーパー・チューズデー」といい、アメリカ国内の多くの州で予備選挙や党員集会が行われます。この日に候補者がかなりの数の代議員を獲得すると、共和党の候補者であれば共和党の、民主党の候補者であれば民主党の、大統領選挙の候補者に指名されるため、この日はどの候補者にとっても非常に重要な日なのです。





アメリカ北東部に位置するオハイオ州では、開始まであと数時間に迫った民主党の予備選挙の討論会の準備が進められていました。予備選挙が行われるのは、1週間後の3月15日です。候補者でペンシルベニア州知事のモリス(ジョージ・クルーニー)に代わり、討論会の会場の壇上でリハーサルに臨んでいるのは、モリスの陣営で広報官を務めるスティーブン(ライアン・ゴズリング)。スティーブンはかなりのやり手でした。モリスが演説の練習で、自ら掲げた政策をアピールする際に、発した言葉の持つ説得力が不十分であれば、「もっと強気に出ろ」と真正面から意見をぶつけられるような人物でした。

オハイオ州の代議員の数は、161人。かつて湾岸戦争に出征し、当時のブッシュ大統領から勲章を賜っているモリスは、既にカリフォルニア州をはじめとする4つの州で合計2047人の代議員を獲得していました。一方、対立候補のプルマン上院議員(マイケル・マンテル)がこれまで獲得した代議員の数は、フロリダ州をはじめとする4つの州で合計1302人。今のところ、モリスの方が優勢です。オハイオ州で行われる民主党の予備選挙は、「オハイオを制す者は、国を制す」という有名な言葉がある程、まさに大統領選挙における重要な鍵となっているのです。

数時間後、いよいよ討論会が始まります。会場の舞台裏では、スティーブンが、モリスの陣営で指揮を執るポール(フィリップ・シーモア・ホフマン)と一緒に、立て板に水の如く演説を行うモリスをじっと見守っていました。討論会終了後、スティーブンは、ポール、そして、タイムズ紙の記者・アイダ(マリサ・トメイ)と一緒に、1軒のバーでテーブルを囲んでいました。ポールは、アイダにしばしば特ダネを提供している事から、モリスが予備選挙に当選する確率をアイダから繰り返し尋ねられますが、ポールにとって、具体的な数字を出すのは、たとえ選挙の経験が豊富であっても、非常に難しい事でした。



翌日、スティーブンは、モリスの選挙事務所にある自室で、インターンのモリー(エバン・レイチェル・ウッド)から、ある書類を受け取ります。それは、プルマン上院議員の中傷ネタの詳細について書かれたもので、どの新聞にも掲載される事間違いなしと言えるような次元のものでした。スティーブンは、「これで、モリスが予備選挙でさらに有利になる。」と確信します。



そんな時、プルマン上院議員の陣営で指揮を執るダフィ(ポール・ジアマッティ)から電話が入ります。ダフィは、どうしてもスティーブンに見せたいものがあるらしく、「ヘッド・ファースト・バー」で待ち合わせをしたいと考えていました。スティーブンは、半信半疑で「ヘッド・ファースト・バー」を訪れ、先にカウンター席に座っていたダフィの隣の席に座ります。すると、ダフィから何らかの情報提供があるのかと思いきや、なんと、「プルマン上院議員の陣営に寝返らないか。」と誘われます。プルマン上院議員の陣営による調査で、プルマン上院議員の方が、支持者の数が多い事が分かったというのです。しかし、スティーブンは、簡単にモリスを裏切る訳には行かず、ダフィからの誘いには応じませんでした。

一方、ポールは、オハイオ州で特定の候補者を支持していないトンプソン上院議員(ジェフリー・ライト)と面会します。この事を知るのは、モリス、スティーブン、そして、昨夜、別れ際にオフレコでこの事を教えたアイダの3人でした。もし、トンプソン上院議員を味方につけられたら、代議員356人を得たも同然です。ポールは、トンプソン上院議員に、「(予備選挙の)1週間前に、モリスを支持する事を表明してほしい。」と頼みます。しかし、トンプソン上院議員は、首を縦に振らず、なんと、プルマン上院議員を支持する事を表明します。実は、プルマン上院議員は、トンプソン上院議員に「自分が大統領に就任した暁には、貴方を国務長官に抜擢する。」と約束をしていたのです。モリスの陣営は、もはや窮地に立たされていると言っても過言ではありませんでした。

やがて、この厳しい状況は、モリスに伝えられます。ポールとスティーブンは、オハイオ州での当選を諦め、プルマン上院議員に対するネガティブ・キャンペーンに転じる事をモリスに勧めますが、モリスはどうしても諦める事ができません。トンプソン上院議員を味方につけるには、プルマン上院議員の陣営と同様、国務長官のポストを用意するしかありません。しかし、モリスは、トンプソン上院議員の要求に応じるつもりはありませんでした。



その後、モリスの陣営に置かれた状況は厳しさを増していきます。なんと、モリーが大金を目当てに、モリスと肉体関係を結んでいた事が発覚したのです。モリーと恋人同士の関係になりつつあったスティーブンは、ショックを隠し切れません。民主党の全国委員長を務めるジャック・スターンズ(グレゴリー・イッツェン)を父に持ち、さらに、一家全員がカトリックを信仰しているモリーも、このスキャンダルが発覚したからと言って、家族に助けを求められません。スティーブンは、モリスの陣営がダメージを受けるのを何としても避けるため、誰にも分からないように陣営の経費からモリーへの手切れ金を用意し、モリーにそれを渡して陣営を去ってもらう事にします。さらに、自分とモリーとの間にできた子どもの中絶を一方的に決め、彼女の自宅と中絶の手術を受ける婦人科クリニックとの間の送り迎えまでします。



しかし、これで、スキャンダルが全て揉み消された訳ではありません。今度は、スティーブンが「ヘッド・ファースト・バー」でダフィと接触していた事実が、アイダの耳に入ってしまったのです。容赦なく追及するアイダに対し、白を切るスティーブン。一体誰がアイダに情報を提供したのか、スティーブンは皆目見当が付きません。スティーブンは、アイダと別れた後に、ダフィに電話をかけ、情報源がダフィなのかどうかを何度も確かめますが、ダフィははっきりと否定します。電話の途中で、スティーブンが遠くへ視線を向けると、マスコミが自分に近付いてくるのが見えます。実は、アイダに情報を提供したのは、…。



最近、世界中で報じられているアメリカ中間選挙の映像から分かるように、アメリカの選挙と言えば、ネガティブ・キャンペーンです。言葉は悪いですが、アメリカでは、候補者同士がお互いを批判し、より説得力のある批判をした候補者が優勢になり、当選しています。日本人である私から見ると、何の公約も用意できない人の逃げ道にしか見えませんが、アメリカではこれが当たり前なのです。この映画のように、候補者も、候補者を支える人たちも、普段、水面下でこんな風に作戦を練りに練っているのかと思うと、改めてアメリカの政界の恐ろしさを感じます。



この映画の原作は、2008年にボー・ウィリモンが書いた戯曲"Farragut North"です。ウィリモンは、2004年に民主党大統領予備選挙に立候補したハワード・ディーン候補の選挙スタッフで、大統領選挙に着想を得て、この戯曲を執筆したのだそうです。また、この映画でメガホンを取ったのは、ジョージ・クルーニー。監督、主演(モリス役)を務めただけでなく、脚本の執筆もしています。クルーニー演じるモリスは、凛としていながらも、存在感をきちんと抑えられているのが非常に印象深かったです。モリスは、選挙の候補者として表舞台に立っているので、確かに主役なのですが、この映画の事実上の主役は、スティーブン、ポール、ダフィら、候補者を支える人たちだったのではないでしょうか。彼らによるスリリング且つ残酷な駆け引きを原作者のウィリモン、監督のクルーニーは最も伝えたかったのではないでしょうか。



物語の後半では、いよいよスティーブンが崖っぷちに立たされます。モリスを大統領にするべく良かれと思って取った行動の数々が全て裏目に出てしまい、スティーブンは破滅への道を歩んでいきます。しかし、スティーブンは、あらゆる人たちを地獄に陥れる事で、再び這い上がります。スティーブンには、もう何の罪悪感もありません。邦題にある「正義を売った日」は、アメリカの政界の邪悪さにすっかり毒されてしまったスティーブン自身を表しているように感じました。


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