THE BEATLES EIGHT DAYS A WEEK(2016年 イギリス)





今回は、少し趣向を変えて、久々にドキュメンタリー映画を取り上げます。2016年にイギリスで制作され、2017年に日本で劇場公開されたばかりの"THE BEATLES EIGHT DAYS A WEEK"です。現代のハリウッドを代表する映画監督の一人であるロン・ハワード監督と、音楽をテーマにしたドキュメンタリー映画の製作の経験が豊富なプロデューサーであるナイジェル・シンクレアとスコット・パスクッチがタッグを組み、ビートルズのリヴァプール時代、そして、1963年から1966年の3年間にわたり、15か国90都市166公演にも及ぶコンサートをこなした日々を、著名人や関係者のインタビューを織り交ぜながら、追っていきます。





この映画は、1963年11月20日にマンチェスター・ABCシネマで行われたコンサートの映像で幕を開けます。"She Loves You"を披露するビートルズの4人の様子がデジタル技術で修復され、さらにカラー化されています。カラー化された映像のあまりの美しさに、いきなり驚かされてしまいました。今から55年も前の映像である事がとても信じられません。



ビートルズが活動を始めた場所は、イギリス・リヴァプールにあるライブハウス「キャヴァーン・クラブ」です。当時は、黒い革ジャンにジーンズ姿で演奏をしていたそうで、私たちがよく知る、あのお洒落な衣装のイメージとは程遠い感じでしたが、演奏の技術はかなり高いと言われていました。そんな彼らに目を付けたのが、後にマネージャーとなるブライアン・エプスタインでした。両親がレコード店を経営しているエプスタインがビートルズを知ったのは、1961年10月。両親のレコード店に、ある若い客がビートルズのレコードを買いに訪れた事がきっかけでした。エプスタインは、ビートルズの実力を知るべく、「キャヴァーン・クラブ」を訪れます。エプスタインは、彼らのパフォーマンスを観た時、パフォーマンス自体が新鮮且つ純粋に感じられ、そして、眩いばかりの存在感も感じました。

しかし、20代の時には既に非常に風格があったエプスタインの目から見て、ビートルズの衣装は、全くスター性を活かせておらず、「勿体ない」の一言に尽きます。そこで、エプスタインは、彼らを仕立て屋に連れて行き、スーツを仕立ててもらう事にします。これがきっかけで、ビートルズはデビューし、やがて、世界へ羽ばたいていくのです。



1963年、ビートルズは、この年の終わり頃から始まったヨーロッパ・ツアーで世界に進出します。翌年の2月9日には、アメリカの人気テレビ番組「エド・サリヴァン・ショー」に出演し、世界的なスターの仲間入りを果たします。同年6月、今度は、初のワールド・ツアーをスタートさせるのですが、この後、4人は、3年間にも及ぶ長い過密スケジュールをこなす事になるのです。

その過密ぶりがよく分かるのが、1964年6月のスケジュールです。わずか1か月の間に、デンマーク・コペンハーゲン、オランダ・アムステルダム、レバノン・ベイルート、香港(当時はイギリス領)、オーストラリア・アデレード、同・メルボルン、ニュージーランド・ウェリントンを巡り、さらに、忙しい合間を縫って、主演映画「ア・ハード・デイズ・ナイト」の撮影に臨んでいます。翌月以降も、4人は相変わらず忙しく、スウェーデン・ストックホルムでコンサートに臨んだ後、今度は、カナダ国内、アメリカ国内を巡る北米ツアーをスタートさせます。カナダでは、バンクーバー、トロント、モントリオールなどを巡り、アメリカでは、インディアナポリス、シンシナティ、ミルウォーキー、シカゴ、デトロイトなどを巡りました。この北米ツアーで、ビートルズは、次の公演先に向かう度に、とてつもない数の若い女性ファンに取り囲まれていました。動く隙は1ミリもなく、けが人が出る事も珍しくありませんでした。



1965年になると、コンサートの規模がますます巨大化していました。観客動員数は増加の一途を辿り、プロモーターや警察から「スタジアムでコンサートを開いてほしい」と懇願される程になっていました。また、コンサートのステージに立つ4人も、疲労の色を隠せなくなっていました。ニューヨークのシェイ・スタジアムで、56500人もの観客を動員したコンサートが終了した後、最初にエプスタインに苦しみを訴えたのは、ジョージでした。日々のコンサートの疲れを4人で分かち合えるものの、毎年このような状態が続くのか。もうウンザリだと。



そんな時、4人に、これまでの労をねぎらわれる機会が訪れます。なんと、エリザベス女王から大英帝国勲章を授与されたのです。さらに、1966年、新たな主演映画の製作が中止となった事がきっかけで、4人は、3か月間の長期休暇を取ります。この長期休暇は、メンバー一人一人にとって、大きなターニングポイントとなりました。ポールは、絵画に興味を持つようになり、パリへ絵画を購入しに行きます。ジョージは、インド音楽に興味を持つようになり、リンゴは、自宅を購入します。その近くには、ジョンの自宅がありました。長期休暇は、4人全員にとって、皆がいつも一緒にいなければならない日々が終わりに近づいているのを実感する、良い機会となったのです。そして、長期休暇を終えた4人は、日本武道館でのコンサートに臨むため、日本へ向かいます…。



ここで、この映画のポイントをあと二つ挙げたいと思います。一つは、インタビューに応じた著名人や関係者の顔ぶれの豪華さです。ポール、リンゴの他に、リチャード・カーティス監督、ウーピー・ゴールドバーグ、エルヴィス・コステロ、「ア・ハード・デイズ・ナイト」や「ヘルプ!」でメガホンを取ったリチャード・レスター監督、ビートルズの北米ツアーで同行取材を行ったラリー・ケインなど、錚々たる顔ぶれです。また、今は亡きジョンとジョージの存命中のインタビュー映像も使われています。ビートルズのコンサートの現場にいた人たちからは、ファンの前では絶対に見せる事のないビートルズのメンバーたちの素顔が、ビートルズの熱心なファンだった著名人たちからは、ファンとしての心情がストレートに伝わってきます。



そして、もう一つは、この映画で使われているビートルズの楽曲の多さです。正確に数を数えてはいませんが、おそらく40曲近くは登場しているのではないでしょうか。ほんの一部のご紹介になりますが、"She Loves You", "Please Please Me", "Twist And Shout", "I Want To Hold Your Hand", "Can't Buy Me Love", "A Hard Day's Night", "Eight Days A Week"と、世界的に有名な楽曲の連続で、この上なく贅沢な気分に浸る事ができます。そして、極め付けは、エンドロール。ビートルズが解散する前の年に、アップル社の屋上で最後のパフォーマンスが行われたのですが、"Don't Let Me Down"と"I've Got A Feeling"を披露している時の様子をエンドロールで観る事ができます。メンバー一人一人が久々のパフォーマンスを楽しみ、アップル社の屋上にいる人々がそれを温かく見守り、通りすがりの人たちが思わず足を止めて屋上を見つめていて、この映画を観ていた私も、思わずジーンと来てしまいました。ビートルズのファンの皆さんはもちろん、ファン以外の皆さんも、この映画で空腹を満たしませんか?





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