トガニ 幼き瞳の告発(2011年 韓国)

トガニ 幼き瞳の告発<オリジナル・バージョン> [DVD] - コン・ユ, チョン・ユミ, キム・ヒョンス, チョン・インソ, 監督: ファン・ドンヒョク
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韓国・霧津(ムジン)。ここは、古くからよく霧がかかる事で有名な町です。この町が真冬の深い霧に包まれたある日、カン・イノ(コン・ユ)は、誰もいない田舎道を運転していました。手元にあった携帯電話が鳴り、出てみると、「まだ着いてない?」イノを心配する母親(キム・ジヨン)の声がします。イノが、「霧で道が分からない。」と、答えると、母親は、「じゃあ、着いたね。」と、一安心します。しかし、イノの娘・ソル(キム・ジヨン ※同姓同名です。)は、この日の前夜に、「パパに会いたい。」と、夜通し泣いていました。ソルは、幼くして実の母親と死別しており、父親であるイノが傍にいないと不安なのです。イノは、そんなソルの事が心配でなりませんが、母親は、「やっと、就職したんだから、しっかり続けるのよ。」と、イノを励まします。ところが、その直後、イノは、ハンドル操作を誤り、動物を撥ねてしまいます。そして、しばらく時間を置いてから、再びハンドルを握り、車の修理工場に到着すると、修理を依頼します。

トガニ 幼き瞳の告発 (オリジナル・バージョン) [Blu-ray] - コン・ユ, チョン・ユミ, キム・ヒョンス, チョン・インソ, ペク・スンファン, ファン・ドンヒョク
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この日、イノは、聴覚障がいのある子どもたちが学ぶ全寮制の学園・慈愛学園へ向かうところでした。イノは、慈愛学園の美術教師になったばかりでした。イノは、早く車の修理が終わってほしいと願っていましたが、この日の気候が気候なだけに、修理工場では、たくさんの車が修理の順番を待っていました。イノは、もし、慈愛学園へ向かうバスがあれば、それに乗りたいと考えていましたが、残念ながら、バスは全くなく、タクシーに乗って、5万ウォンを支払うしかありませんでした。

トガニ 幼き瞳の告発〈オリジナル・バージョン〉(字幕版) - ファン・ドンヒョク
トガニ 幼き瞳の告発〈オリジナル・バージョン〉(字幕版) - ファン・ドンヒョク

イノは、車の修理を断念し、再びエンジンをかけますが、今度は後続の車にぶつかってしまいます。後続の車を運転していたのは、ムジン人権運動センターの幹事であるソ・ユジン(チョン・ユミ)。ユジンは、すぐに車を降り、まるで何か鬱憤を晴らすように、「後方注意を知らないの?」、「女だからって甘く見るのは、大間違いよ!」などと大声を上げると、今度は携帯電話を取り出して、事故の証拠を集めるべく、写真を撮り始めます。イノは、「(そもそも)エンジンを掛けていない。」と、反論しますが、ユジンは、当然、信じるはずがなく、いきなり、飲酒運転を疑って、イノの匂いを嗅ぎ始め、「焼酎の匂いがする」と、騒ぎ始めます。すると、そこへ修理工場の社長(イ・サンヒ)が近付き、ユジンの匂いを嗅ぎ始め、こう言います。「ソ幹事、また朝まで飲んだのか?」すると、ユジンは、急に黙ってしまい、少し間を置いてからイノに謝るのでした。

トガニ 幼き瞳の告発〈オリジナル・バージョン〉(吹替版) - ファン・ドンヒョク
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その後、イノは、ユジンの車に乗せてもらい、慈愛学園へ向かいます。イノの乗る助手席は、窓ガラスがほぼ完璧に割れていたため、寒風がまともに入ってきます。ユジン曰く、前日に同僚と飲んで帰ったら、誰がやったのかはわからないが、ガラスが割れていたのだとか。ユジンは、よく仕事で、人様から恨みを買います。ユジンの仕事内容は、刑事に似ていて、いつも売春街の元締めや妻子を殴る奴から恨みを買っていたのです。

トガニ―幼き瞳の告発 - 孔 枝泳, 枝泳, 孔, 薫, 蓮池
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やがて、車は、慈愛学園に到着します。イノが校舎に入ると、歓声を挙げる生徒もいれば、何人かで固まって、黙ってスナック菓子を食べる生徒もいました。その後、イノは、校長室で校長のイ・ガンソク(チャン・グァン)と対面します。しばらくの間、2人で話をしていると、そこへ、ガンソクの双子の弟で、行政室長のガンボク(チャン・グァン ※二役)が入ってきます。イノは、2人の顔が全くもって同じである事に、思わず、目を丸くしてしまいます。ガンボクは、ある事を心配していました。しかし、ガンソクは、なぜか、その心配事について、話を避けようとしていました。実は、イノは、大学時代の恩師・キム(ナム・ミョンニョル)に、この仕事を紹介してもらったのですが、ガンボクは、コネで教職に就いたイノを、あまり快く思っていなかったのです。



イノは、校長室を出た後、ガンボクから、どの教職員も支払うという、学校の発展資金5000万ウォンを要求されます。しかも、ガンボクは、小切手で済ませないよう、イノに釘を刺します。5000万ウォンという金額は、とても高く感じますが、イノの場合は、キム教授からの紹介のため、金額がある程度安くなっていました。それでも、このお金を工面するのは、決して楽な事ではありませんでした。



週末の休みが明け、イノの美術の授業がいよいよ始まります。この日、イノは、教壇にリンゴを置き、子どもたちにリンゴの静物画を描かせました。授業中、真面目に課題に取り組む子どももいれば、堂々とリンゴをかじる子どももいました。そんな時、一人の男子生徒・ミンス(ペク・スンファン)が授業に遅刻します。イノが注意しようとして、うつむいていたミンスの首を少し上げると、左の瞼に大きなあざができていました。実は、ミンスは、数日前に、鉄道事故で、たった一人の弟・ヨンス(オム・ジソン)を亡くしたばかりでした。さらに、父親には精神障がいがあり、母親は行方不明になっていて、同じ家族の中に頼れる人が全くいませんでした。



その日の夜、イノが残業を終えて帰宅しようとすると、生徒の泣き叫ぶ声が聞こえてきます。イノは、声の聞こえてくる方角へ向かって、歩きます。そして、いよいよ、女子トイレに近付くと、扉の向こうで、再び泣き叫ぶ声がしました。「誰かいますか?」、「どうしましたか?」イノは、扉の向こう側に向かって、声を掛けますが、全く反応がありません。イノは、扉を開けようとしますが、背後からやってきたパトロール中の守衛のオ・ジョンシク(ホン・ソギョン)に止められます。ジョンシクは、イノに、女子トイレに入ってはいけない事、そして、この学園の生徒が、退屈しのぎに女子トイレに入って叫んで遊んでいる事を教えます。



ある日、刑事のチャン(オム・ヒョソプ)が、慈愛学園のガンボクの部屋を訪ねます。「苦労をかけるね。」というガンボクに、チャンは、「とんでもないです。生活指導も警察の仕事ですから。」と、応じます。チャンは、ガンボクから受け取った、分厚い札束が入った封筒を握っていました。すると、そこへ、イノが発展資金を持参して入ってきます。



その頃、ミンスは、職員室の奥で、ある人物から殴る蹴るの暴力を受けていました。ミンスは、顔があざだらけになっていて、体の震えが止まりません。職員室には教師が何人かいるのですが、誰も止めに入ろうとしません。ミンスに暴力を振るっていたのは、パク・ポヒョン(キム・ミンサン)。なんと、この学園の教師でした…。



だんだん、慈愛学園の腐敗ぶりが見えてきましたね。とても信じ難い事に、この映画は実話で、2000年から2005年にかけて、韓国にある聴覚障がい者学校で実際に起きた事件が基になっている、コン・ジヨンの同名タイトルの小説が映画化されたものです。ただ、物語の舞台・霧津(ムジン)は、架空の地名です。韓国で劇場公開された当時、この映画がきっかけで、事件そのものが韓国国内に広く知れ渡り、事件の現場となった学校が閉鎖されるなど、社会現象を巻き起こしました。



メガホンを取ったのは、ファン・ドンヒョク監督。この他に、「怪しい彼女」(2014年)、「天命の城」(2017年)でも、メガホンを取っています。主人公の美術教師・イノを演じたのは、コン・ユ。人一倍強い正義感を静かに貫く姿が、とてもカッコよかったです。また、物語の後半で、イノとタッグを組む事になるユジンを演じたのは、チョン・ユミ。いつも、警察や役人などの権力者に堂々と立ち向かう、負けん気の強い女性を演じる姿は、観ていてとても痛快な気分にさせられました。



至って静かな霧の町・霧津にある慈愛学園には、黙って見過ごす訳にはいかない問題が幾つか存在していました。イノは、これらの問題に何としても対処しなければと思い、ユジンの力を借りますが、物語が展開するにつれて、問題の数がますます増えていきます。私は、事のあまりの深刻さに、胸が締め付けられました。そして、この映画の結末を観て、なぜ、この事件自体が、小説化、そして、映画化されたのかをよく理解できました。障がい者だって、健常者と同じように喜怒哀楽を表現できるというのに、それを信じるつもりがない健常者がいるのかと思うと、憤りを感じずにはいられませんでした。韓国の究極の闇を目にした思いがした映画でした。

トガニ 幼き瞳の告発<オリジナル・バージョン> [DVD] - コン・ユ, チョン・ユミ, キム・ヒョンス, チョン・インソ, 監督: ファン・ドンヒョク
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