デビルズ・バックボーン(2001年 スペイン)

デビルズ・バックボーン スペシャル・エディション [DVD]
デビルズ・バックボーン スペシャル・エディション [DVD]

内戦が続く1930年代末のスペイン。12歳の少年・カルロス(フェルナンド・ティエルブ)は、1台の車に乗せられ、共和派の孤児院サンタ・ルチアにやって来ます。カルロスは、共和派の闘士だった父・リカルドを亡くした事をまだ聞かされておらず、リカルドの消息が分かるまでのほんの少しの間、ここに滞在する事になったのだと信じていました。着いて早々、カルロスは、敷地内に刺さったままの大型爆弾に、興味津々の様子。爆弾を触ったり、叩いたりする様子は、まさに怖いもの知らずです。この爆弾は、ここに落ちた後に、信管が人の手によって抜かれたため、カルロスのように、触ったり、叩いたりしても、爆発する心配は全くありませんでした。一方、サンタ・ルチアの教師たちは、カルロスが到着したのを知り、ガッカリを通り越して、呆れ返っていました。というのも、サンタ・ルチアは、人が予定通りに訪ねてこないのが日常茶飯事だからです。この場合は、本来であれば、アヤラとドミンゲスという2人の教師が来るはずだったのですが、アヤラは怪我で来られず、ドミンゲスも何らかの事情で来られなくなったようです。そんな時に、カルロスがやって来たのです。

デビルズ・バックボーン(字幕版)
デビルズ・バックボーン(字幕版)

しばらくの間、爆弾の傍で座って過ごすカルロス。ふと、建物の大きな扉に目をやると、一人の少年の幽霊が立っていました。しかし、幽霊はすぐに姿を消してしまいます。カルロスは建物の中がどうなっているのか、興味が湧き、建物に侵入します。すると、侵入してすぐに、背後から食べ物を乞う少年の声が聞こえてきます。声の主は、サンタ・ルチアで暮らす少年・ガルベスでした。ガルベスの隣には、彼の仲間である少年・フクロウもいました。皆がお互いに自己紹介をすると、カルロスは侵入していた建物を離れ、ガルベスたちと一緒にどこかへ向かうのでした。

スペイン内戦―老闘士たちとの対話 (講談社現代新書 603)
スペイン内戦―老闘士たちとの対話 (講談社現代新書 603)

サンタ・ルチアの院長・カルメン(マリサ・パレデス)は、カルロスを車で連れてきた男性に、抗議をしてました。今、サンタ・ルチアは、受け入れている子どもの数があまりにも多く、もうこれ以上の受け入れは無理なのです。男性は、カルロスの父・リカルドが共和派の闘士として立派に闘った事を話し始めて、逆にカルメンを説得しようとするのですが、カルメンは、「闘ったのは、私。リカルドは学究の人だわ。」と反論します。リカルドは、かつてこの施設にカルメンを遺し、信念を貫いたに過ぎなかったのです。彼女の使う義足は、内戦での闘いの壮絶さを如実に物語っていました。



しかし、カルメンには、カルロスの受け入れよりも、もっと心配な事がありました。もし、反乱軍がサンタ・ルチアについて調べたら、サンタ・ルチアが共和派の孤児院だと分かってしまうのではないかと心配していたのです。カルメンは、このような不安を抱えながら、子どもたちと向き合ってきましたが、とうとうサンタ・ルチアを離れる決意をし、武器代にと、男性に地金を10本渡すのでした。そんな時、アヤラが、予定より遅れて、サンタ・ルチアにやって来ます。敷地内で偶然、アヤラの姿を見つけたカルロスは、以前からアヤラを知っていたため、大喜びして、後を追いかけます。しかし、後を追って、門を開けると、残酷な事に、アヤラを乗せた車が遠くへ行ってしまいます。だんだん小さくなっていく車を、カルロスは泣きながら見つめていました。カルメンと、サンタ・ルチアの教師・カサレス(フェデリコ・ルッピ)は、小さく震えるカルロスの背中を見て、とうとうカルロスを受け入れる決意をします。



カルロスは、これから、孤児用の大部屋で寝起きする事になります。しかし、この大部屋は、利用されている形跡があまりありません。カルメン曰く、これまで多くの孤児たちがこの大部屋から逃げ出していったのが、その理由だとか。そんな大部屋でカルロスに与えられたベッドの番号は、12番。カルメンは、カルロスにロッカーの鍵を渡して、去っていくと、カルメンと入れ替わるように、大勢の孤児たちが入ってきます。一部の孤児たちは、カルロスの方を見ながら、ひそひそと話をします。これからカルロスが使う12番のベッドは、サンティ(フニオ・バルベルベ)が使っていたものだと。



サンタ・ルチアの敷地内に建つ1軒の家には、もともと孤児としてやって来た、管理人のハシント(エドゥアルド・ノリエガ)とコンチータ(イレネ・ビセド)の若いカップルが住んでいます。2人は、いつか結婚して、知り合いが全くいないグラナダで農場を始めたいと考えていました。ある日の晩、ハシントの仲間2人が訪ねて来ます。ハシントとコンチータは、彼らと夕食を共にします。夕食後、ハシントは、車で帰宅の途に就こうとする彼らを前に、「今夜、ひと仕事やってやる。」と宣言します。ハシントは、生活のために金塊を取りに来た人がいるとの情報を耳にしていて以来、何か危機感を覚えたのか、心が落ち着かずにいたのです。仲間たちは、「期待してるぜ。」とハシントを応援します。そのやり取りを見ていたコンチータは、ハシントの仲間たちに対し、嫌悪感を抱きます。ハシントは、少年時代、よく空を見上げて、こう思っていました。いつかこの地を出て行って、金持ちになり、この地の建物を買って、全部ぶち壊すのだと。その目的は、15年にも及ぶ自身の過去を消す事でした。



同じ頃、カルロスは、あの12番のベッドに横になっていました。しかし、カルロスは、なかなか眠れません。カルロスは、ベッドの側面に彫ってあった「サンティ」の文字を指でなぞりながら、「サンティ」と声に出して読んでいました。すると、どこかから、カルロスを呼ぶ声が聞こえてきます。カルロスは、思わず上半身を起こし、身体全体を自身のベッドと隣のベッドとを遮るカーテンの方に向けます。そして、思い切ってカーテンを開けるのですが、そこには誰もいません。隣のベッドの寝具をどかしても、ベッドの下を覘いても、人の気配がありません。その時、水の入った瓶が倒れる音がしました。カルロスが立ち上がると、倒れた瓶から水がこぼれ、水で濡れた床には、人間の子どもの足跡がいつの間にかできていました。すると、そこへ物音に気付いた子どもたちが集まってきます。彼らは、カルロスが水をこぼしたのだと思い込み、カルロスに水を汲みに行かせようと考えます。カルロスは、自身を呼ぶ声の主を探ろうとしますが、それでも、彼らは、カルロスに水を汲みに行かせる事しか頭になく、なかなかその場を動こうとしないカルロスを臆病者扱いします。カルロスは、自身のやりたい事をいったん諦め、水を汲みに行く事にします。自身を「臆病者」と最初に呼んだ、リーダー格のハイメ(イニーゴ・ガルセス)と一緒に。



カルロスは、ハイメと一緒に井戸のある建物を目指します。各自、空になってしまった瓶を持ち、ゆっくりと歩を進めます。信管が抜いてある爆弾の前を通り、ハシントとコンチータが住む家の前も通り、井戸のある建物に辿り着きます。2人は、早速、水を汲みます。先にハイメが慣れた手つきで水を汲み、その後に、カルロスが慣れない手つきで水を汲みます。ところが、カルロスが水を汲んでいる途中で、井戸のすぐ傍にあったハサミが大きな音を立てて落ちてしまいます。ハシントとコンチータもハサミが落ちる音に気付き、ハシントが、一人で、井戸のある建物に向かいます。ハシントは、建物の出入り口にあるライフル銃を手に取り、人の気配がないかどうかを確かめると、壁面の一部を取り外します。そこには、見るからに重そうな扉がありました。ハシントは、手元にあった鍵を鍵穴に差し込むのですが、残念ながら、扉は開かず、まるで人が変わったかのように悔しさを爆発させます。その後、ハシントは外に出て、出入り口の扉と扉を太い鎖でつなぎ、さらに鍵をかけ、それまでずっと口に加えていた、火が付いたままの煙草を地面に投げ落とします。カルロスよりも先に水を汲んでいたハイメは、既に外に出ていて、爆弾の陰に隠れていたため、ハシントに見つからずに済みました。



一方、カルロスは、落ちてしまったハサミを慌てて片付け、水を汲んだ瓶を持って、建物からの脱出を試みます。ところが、再び、「カルロス」と呼ぶ声が聞こえてきます。カルロスが、声の聞こえてくる方へ近付いていくと、そこには、茶色っぽく濁った水が今にも溢れそうになっている貯水槽がありました。さらに、突然、人の気配も。カルロスが人の気配のする場所へ恐る恐る近付くと、誰かがカルロスの肩にそっと手を置きます。カルロスが思わず振り向くと、その人は、「ギャアアア~~~~~ッ!!」と悲鳴を上げて、姿を消してしまいます。カルロスの手の指からは、不思議な事に血が滲み出てきました。さらに、同じ人の声で、「大勢死ぬぞ…。」という言葉も聞こえてきます。カルロスは、さすがに怖くなり、逃げ出そうとするのですが…。



この映画でメガホンを取ったのは、ギレルモ・デル・トロ監督。「パシフィック・リム」(2013年)、「シェイプ・オブ・ウォーター」(2017年)と、最近、話題作を世に送り出している監督です。



この映画を観る前、私は、この映画の事をてっきりホラー映画だと思っていたので、「観ている途中で、怖さのあまり、ギブアップしないだろうか。」と、少し心配していました。しかし、実際に観てみると、全然違いました。この映画は、確かに、幽霊が登場しますが、悲鳴を上げたくなるシーンの連続ではないので、ホラー映画ではありませんでした。また、スペインの内戦の時代(1936年~1939年)の設定ではありますが、内戦の様子を描いたシーンはほとんどないので、戦争映画だと断定する事もできませんでした。



では、これは、どういうジャンルの映画なのでしょうか?私は、ミステリー映画だと思います。この映画には、ハシントとコンチータという若いカップルが登場します。ハシントは、15年にも及ぶ過去を消す事にこだわっていますが、実は、この映画のキーパーソンは、主人公のカルロスではなく、ハシントであると考えています。なぜなら、映画の後半で、ハシントの決して許されぬ心の闇が様々な形となって現れるからです。ハシント役のエドゥアルド・ノリエガの演技は、時間が経つにつれて、鬼気迫る演技がグレードアップしていくのが感じられ、カルロス役のフェルナンド・ティエルブよりも存在感が大きくなっていきます。ハシントの哀れな心の内に注目してみると、非常に見応えがある映画です。ご興味があれば、ぜひご覧いただきたいです。

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