判決、ふたつの希望(2017年 レバノン・フランス)

判決、ふたつの希望 ブルーレイ&DVDセット [Blu-ray] - アデル・カラム, カメル・エル=バシャ, リタ・ハーエク, クリスティーン・シュウェイリー, カミール・サラーメ, ディヤマン・アブー・アッブード, ジアド・ドゥエイリ
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中東・レバノンの首都・ベイルート。「今でも、我々にとっての真の大統領とは、我が党の創設者、故バシール・ジュマイエルだ。」歓声を挙げながらレバノンの小さな国旗を振る大勢の人々の前で、一人の男性が演説をしています。この男性の名は、ハキーム。キリスト教マロン派の民兵組織で右派政党の「レバノン軍団」を率いる人物です。レバノン人でキリスト教徒のトニー(アデル・カラム)は、自宅にわざわざハキームの写真を飾る程、「レバノン軍団」を支持していました。この日、トニーは、ハキームの演説を聴きに訪れていました。トニーは、ハキームの顔を真っ直ぐ見つめ、演説に聞き入っていました。

判決、ふたつの希望(字幕版) - アデル・カラム, カメル・エル=バシャ, リタ・ハーエク, クリスティーン・シュウェイリー, カミール・サラーメ, ディヤマン・アブー・アッブード, ジアド・ドゥエイリ, ジアド・ドゥエイリ, ジョエル・トゥーマ
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しかし、出産を間近に控えた妻・シリーン(リタ・ハーエク)は、自宅に飾られているハキームの写真に24時間監視されているような気がするからと、トニーに写真をしまうよう頼みますが、聞き入れてもらえません。また、シリーンは、今よりも広くて静かな家に引っ越したいと願っていましたが、トニーは、今の自宅を買うのに、一生懸命貯金した事を考えると、引っ越しをする気になれません。シリーンはどうしても自身の希望を諦められず、ダムールに引っ越す事を提案します。「ダムールには、トニーの実家があって、安心できるし、街自体が復興して、戻ってくる人も多い。」と、理由を語るシリーン。さらに、シリーンは、「教会も再建されたし、…。」と、トニーに更なる安心材料を与えようとしますが、トニーは、「ここがいい。」と、きっぱりと断ります。

シリア・レバノンを知るための64章 (エリア・スタディーズ123) - 黒木 英充, 黒木 英充
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一方、トニーとシリーンが暮らす自宅の外では、工事が行われていました。現場監督でパレスチナ人のヤーセル(カメル・エル=バシャ)は、部下に指示を出していました。「連中がサボらないよう、見張ってくれ。電線に気を付けろ。」すると、そこへ1台のセメント車が到着します。ヤーセルは、無線を使い、「厚さ8センチ分の生コンクリートを。」と、指示を出します。無線の相手は、「通りを塞ぐ事になるけど…。」と、心配します。それを聞いたヤーセルは、返事をしようとしますが、返事をしようとした瞬間、ヤーセルの頭に水が思いっきりかかってしまいます。



この水は、ある住民が、バルコニーでホースを使って撒いたものでした。水を撒いていたのは、なんと、トニーでした。ヤーセルは、部下を一人連れて、トニーの自宅を訪ねます。もしかしたら、トニーの自宅のバルコニーにある樋(とい)に、何か問題があるかもしれないと考えたのです。しかし、トニーは、すぐに承諾せず、バルコニーの樋を見る理由を尋ねます。ヤーセルは、「作業員に水がかかるから。」と、説明します。しかし、トニーは、この説明に納得がいかず、「離れた所で作業しろ。」と、ぶっきらぼうに命令します。ヤーセルたちは、バルコニーに入れてもらう事を諦め、自分たちの判断で配水管の交換をし始めます。



ヤーセルの部下たちが新しい配水管を取りつけ、端をセメントで固定させていると、トニーが大きなトンカチを持ってバルコニーに現れ、新しい配水管を荒っぽく砕きます。そして、全てのパーツが地面に落ちると、すぐ目の前にいたヤーセルを睨みつけます。「何をしてるのよ?」と、シリーンがトニーの元に駆け付けると、ヤーセルがトニーに向かって「クズ野郎!」と、叫びます。しかし、トニーは、ヤーセルの言葉に耳を貸さず、自身の方を何度も振り返りながら去っていくヤーセルを睨み続けるのでした。



トニーの元には、「新しく取り付けた配水管をあなたが壊した。」と、ヤーセルからヤーセルの会社の社長を通して、苦情が入ります。トニーは、社長との1対1での話し合いの場に臨みます。しかし、トニーは、ヤーセルからの苦情に対し、「うちのバルコニーだ。」と、自身のした事を当然の事のように話します。しかし、ヤーセルたちは、何も悪くありません。ヤーセルたちは、あくまでベイルート市から違法建築であるトニーの自宅の補習を請け負い、ヤーセルは現場監督として仕事をしていただけです。それなのに、トニーは、「悪態をついたぞ。」と、ヤーセルに濡れ衣を着せるだけでなく、「何様のつもりだ?もし、謝罪しないなら、奴と会社を訴えるぞ。」と、脅しをかけます。社長は、配水管の取りつけをトニーに約束しようとしますが、トニーは、「手を出すな!」と、強い口調で抵抗します。その後、社長は、ヤーセルの元を訪ね、ヤーセルに冷静な対応をするよう注意すると同時に、トニーに謝罪してから配水管の工事を行うよう命じます。さらに、社長は、トニーの自宅も訪ねますが、あいにくトニーが不在だったため、留守番をしているシリーンに謝罪し、お詫びの品物を渡します。



しかし、お詫びの品物を渡すという行為は、逆効果でした。なんと、社長とヤーセルが仕事の話をしている所にトニーが突然現れ、2人を睨みつけながら、お詫びの品物を机に投げ付けて、そのまま帰ってしまったのです。社長は、すぐにトニーの後を追います。そして、トニーに追い付くと、こう尋ねました。「まだ、ご不満ですか?」これに対し、トニーはこう言い放ちました。「納得できるか?女房は騙せても、俺は許さん。」トニーは、品物で誤魔化すのではなく、あくまでヤーセルに謝罪をさせたいのです。社長は、「謝罪が苦手な人もいます。」と、ヤーセルをかばいますが、トニーは、ヤーセルが要望通りに謝罪するまで、態度を軟化させるつもりは毛頭ありませんでした。



土曜日、トニーは、ヤーセルの自宅を訪ねます。トニーは、ヤーセル、妻・マナール(クリスティーン・シュウェイリー)と共に、バルコニーの椅子に座ると、ヤーセルの目の前で、マナールに向かって、ヤーセルの事を堂々と罵ります。そして、ヤーセルに「警察が来る前に、カタをつけたい。」と、謝罪を迫ります。さらに、トニーは、「謝罪をすれば、難民キャンプでの2年にわたる修繕の仕事を受注できる。」と、褒美をちらつかせて、謝罪の言葉を引き出そうとします。



トニーが帰宅した後、マナールは、「彼も、辛い立場なのよ。」と、トニーの気持ちを思いやり、ヤーセルに謝罪を勧めます。しかし、ヤーセルは、トニーが悪いのは誰の目にも明らかなのに、わざわざトニーに謝罪するつもりはありませんでした。しかし、翌日、ヤーセルは、謝罪をするため、社長と共に、トニーの経営する自動車修理工場を訪れます。まず、社長が作業中であるトニーに近付き、「(自分たちの)誤解だった。」と、反省の弁を述べます。ところが、トニーは、「誤解」という言葉が引っ掛かり、怒りが湧いてきます。そして、ヤーセルからの謝罪の言葉を受け入れる前に、社長やヤーセルの事を罵り始めます。「パレスチナ人は、平和交渉をする気がない。」と。ヤーセルは、怒りで震えながら、社長と共にその場を後にしようとします。



すると、トニーは追い打ちをかけるように、「シャロンに抹殺されていればな!」と、言い放ちます。シャロンとは、1982年、イスラエルがレバノンに侵攻し、パレスチナ難民が多数虐殺された際に、イスラエルの国防相を務めていた人物です。パレスチナ人にとって、「サブラ・シャティーラの虐殺」と呼ばれるこの虐殺は、歴史上この上ない悲劇なのです。ヤーセルは、これまでのトニーの怒りの根源をここで初めて理解し、拳を上げます。



トニーは、肋骨を2本折る怪我をして、病院に運ばれます。自動車修理工場の社員・エリーは、犯人捜しを約束したり、パレスチナ人相手の裁判を引き受けてくれる弁護士がいるのだろうかと心配してくれたりと、トニーの心中を思いやり、行動に出ようとします。トニーは、この怪我をきっかけに、自分自身に正義がある事を改めて感じますが、トニーの父は、トニーのこれまでの態度を批判します。しかし、トニーには、父の言葉が全く響かず、警察に訴えに行きます。ヤーセルが難民キャンプに逃げ込んだのだと勝手に思い込み、協力を要請したのです。しかし、警察は、法的な理由でそれを断ります。トニーは、対応した警察官がパレスチナ人である事を理由に、警察官に向かって暴言を吐きます。傍でやり取りを見ていたシリーンは、さすがにトニーに対して憤りを覚えます。



ある日、ヤーセルが警察に出頭します。社長が、トニーに告訴を取り下げてもらうべく、ヤーセルにそうさせたのです。しかし、そんなやり方は、トニーに全く通用するはずがありませんでした。トニーは、ヤーセルからの謝罪の言葉を求め、法廷で争う決意をします。しかし、この裁判は、トニーの並々ならぬ怒りに注目したマスコミに大々的に報じられ、かねてからパレスチナ人全体を地獄の底に突き落としたいと願ってきた弁護士たちが、一方的にトニーに近付いてきて、タッグを組みたがり、やがて、国を揺るがす事態に発展するのです…。



トニーの自宅のバルコニーの樋を巡る些細な言い争いが、国を揺るがす事態になるなんて、とても信じられない話ですよね。すべて、人徳の欠片もないトニーが原因としか思えません。因みに、この映画は、監督・脚本を務めたジアド・ドゥエイリの実体験が基になっています。このような類の信じられない話が、この映画と全く同じとはいかないまでも、実際に存在しているのかと思うと、驚かずにはいられません。



ドゥエイリは、レバノン・ベイルート出身。レバノン内線状況下で少年期を過ごし、20歳の時に、アメリカのサンディエゴ州立大学に留学。映画学位を取得しました。その後、クエンティン・タランティーノ監督の映画「レザボア・ドッグス」(1991年)や「パルプ・フィクション」(1994年)などで、アシスタントカメラマンを務め、1998年に「西ベイルート」で長編映画監督デビューを果たしました。そして、ドゥエイリにとって、長編映画4作目となる「判決、ふたつの希望」は、第90回アカデミー賞で、レバノン映画としては初めて外国語映画賞(現・国際長編映画賞)にノミネートされ、第74回ベネチア国際映画祭では、ヤーセル役のカメル・エル=バシャが、パレスチナ人として初めて、ボルピ杯(最優秀男優賞)を受賞しました。



さて、最後に正直に申し上げますが、この映画は、物語が大袈裟になっていくにつれて、観る者を少しずつ疲れさせていきます。この映画をご紹介させていただく者としては、アカデミー賞で外国語映画賞(現・国際長編映画賞)にノミネートされる程、見応えがあるので、ぜひ最後まで観ていただきたいですが、今回はさすがに途中でギブアップしてしまうのは仕方がないと思います。ぜひ、無理のない程度と申しますか、ご自分のペースでご覧いただけたらと思います。

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