タクシー運転手~約束は海を超えて~(2017年 韓国)

タクシー運転手 約束は海を越えて [DVD] - ソン・ガンホ, トーマス・クレッチマン, ユ・ヘジン, リュ・ジュンヨル
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1979年、韓国における独裁政権は、朴正煕(パク・チョンヒ)大統領の暗殺により、収束を迎えました。しかし、全斗煥(チョン・ドゥファン)将軍率いる軍部が、クーデターによって実権を掌握したため、1980年に、民主化を望む国民たちが引き続きデモを行っていました。

タクシー運転手 約束は海を越えて [Blu-ray] - ソン・ガンホ, トーマス・クレッチマン, ユ・ヘジン, リュ・ジュンヨル
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1980年春、韓国・ソウル。個人タクシーの運転手をしているキム・マンソプ(ソン・ガンホ)は、仕事で高速道路を走行中に、カーラジオから流れる流行のナンバーを大きな声で歌っていました。その後、高速道路を降りて、市街地に出たマンソプは、間もなくして、渋滞に巻き込まれます。その間、渋滞の列の先頭では、大勢の大学生たちが、プラカードや横断幕を持って、デモを行っていました。「戒厳令を解除せよ」と唱える一人の参加者の声に、他の参加者たちが「解除せよ」と、後に続いているのが、マンソプの耳に何度も入ってきます。暇を持て余すマンソプは、運転席の窓ガラスを開けて、デモの様子を遠くから見つめます。すると、今度は、「解散せよ、強制排除を行う。」と言う、軍人の声が聞こえてきます。デモ隊の列は、みるみるうちに真っ白な煙に覆われ、何も見えなくなります。マンソプは、何不自由なく育ち、社会に対して言いたい放題に文句を言う彼らを見るのが嫌になり、車両を少しバックさせて、近くの細い道へ迂回します。

タクシー運転手 ~約束は海を越えて~(吹替版) - ソン・ガンホ, トーマス・クレッチマン, ユ・ヘジン, リュ・ジュンヨル, チャン・フン, オム・ユナ
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迂回した細い道でかなりのスピードを出すマンソプ。すると、今度は、横から飛び出してきたデモ隊の若い男性とぶつかりそうになります。マンソプは、つい頭に来て、車両から降ります。「急に飛び出してくる奴があるか。」と、マンソプは一喝しますが、若い男性は、話を全く聞かずに逃げてしまいます。実は、この若い男性は、軍人に追いかけられていました。マンソプは、何度も男性を呼び留めようとしましたが、立ち止まってはくれませんでした。

タクシー運転手 ~約束は海を越えて~(字幕版) - ソン・ガンホ, トーマス・クレッチマン, ユ・ヘジン, リュ・ジュンヨル, チャン・フン, オム・ユナ
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そんな時、背後から一組の若い夫婦が近付いてきます。臨月を迎えた妻が産気づき、病院に向かうところだったのです。マンソプは、2人を後部座席に乗せ、かなりのスピードで病院へ向かいます。しかし、そんな一行を、デモ隊の長い列が阻みます。しかし、それを強引に突破する訳にはいきません。「これじゃ、車内で産まれちまう。」マンソプは、車両をバックさせ、別のルートへ移動します。マンソプのおかげで、2人は無事に病院に到着します。ところが、夫はあるとんでもないミスに気付きます。なんと、財布を家に置いてきてしまったのです。マンソプは、これまで何度か乗客にタダ乗りされてしまった経験がある事から、「この夫婦にタダ乗りされてなるものか。」と、思い、「その手には乗らん。」と、言い切ります。しかし、夫は、自身の名刺を渡し、「明日、2倍お支払しますから。」と、言って、病院の建物の中へ入っていくのでした。



夕方、マンソプは、仕事を終えて、帰宅します。家の中では、11歳になる娘のウンジョン(ユ・ウンミ)が、布団をかぶって、眠っていました。マンソプが「(夕食を)食べてから、寝ろ。」と、言って、ウンジョンを起こすと、額に傷ができているのが見えました。「誰にやられた?」と、尋ねるマンソプに、ウンジョンは、「転んだの。」と、答えます。しかし、マンソプは、誰が犯人なのか、よく分かっていました。自身とウンギョンが暮らす自宅の大家を親に持つサング(クォン・スンジュン)の仕業なのだと。それでも、ウンジョンは、「違うってば、本当に転んだの。」と、主張します。マンソプは、何よりも、嘘をつくのを嫌います。「父さんに怒られたいのか?」と、マンソプの口調が厳しくなると、ウンギョンは、ようやく真実を話し始めます。そして、マンソプは、一人でサングの自宅に乗り込みます。



しかし、実際にサングの自宅に行ってみると、サングの額にも傷がありました。サングの母(チョン・ヘジン)は、マンソプに猛抗議します。「ウンジョンが、我が家の大事な長男であるサングに、傷をつけた。」、「ウンジョンは、とても強情だ。」、そして、「ウンジョンは、父子家庭で甘やかされて育った。」と、主張します。父子家庭であるのを理由にウンギョンを甘やかした覚えなど一切ないマンソプは、その場で反論しますが、サングの母から、家賃の未払いが10万ウォンも溜まっている事を指摘されます。すると、マンソプは、急に無口になり、うつむきます。



1980年5月19日、日本・東京プレスセンター。日本に住んで8年になるドイツ人記者のヒンツペーター(トーマス・クレッチマン)は、タクシーを降りて、建物の中に入っていきます。そして、中にある一軒のレストランに入り、食事中だった他国の記者たちの輪の中に入ります。ヒンツペーターは、韓国に駐在していたBBCの記者・ジョン(ダニエル・ジョーイ・オルブライト)から、韓国政府が戒厳令を敷いた事を知らされます。この頃、韓国では、野党の指導者たちが自由を奪われ、大学も閉鎖を余儀なくされていました。さらに、ジョンは、現地にいる知人と、前夜から連絡が取れなくなっていました。ヒンツペーターは、真相を知るべく、韓国へ向かう決意をします。



翌日、ヒンツペーターは、飛行機で韓国へ向かいます。そして、金浦国際空港に降り立つと、ある人物と会うため、待ち合わせ場所の喫茶店に入ります。ある人物とは、ジョンと連絡が取れなくなってしまった知人の事でした。知人は、一刻も早く喫茶店を出たがっていました。なぜなら、誰かに追われているような気がしてならなかったからです。野党の指導者のうち、金大中(キム・デジュン)は既に逮捕され、金泳三(キム・ヨンサム)は自宅軟禁を余儀なくされました。韓国南部の都市・光州(カンジュ)の新聞の紙面は、検閲によって、ほぼ真っ白になっていました。これらの一連の動きは、かなり深刻な問題であるにもかかわらず、日本では全く報道されておらず、ヒンツペーターは衝撃を受けます。知人は、19日の午前3時に取材先で重要な証言を得たのを理由に、自宅の電話が不通になってしまいました。韓国に駐在している海外メディアの記者たちも、行動を厳しく制限されており、厳しい現状を海外に伝えるのは非常に困難でした。ヒンツペーターは、このただならぬ状況を世界に知ってほしいという気持ちが強くなり、たった一人で光州へ取材に行く決意をします。



一方、マンソプは、車両のサイドミラーが取れそうになり、修理に出します。そして、この日、偶然会ったサングの父・トンス(コ・チャンソク)の誘いで、近くの焼き肉店へ行きます。食事中、マンソプは、別のテーブルにいたタクシー運転手が、「国都(ククト)劇場前で、長距離の外国人客と待ち合わせている。」と、話しているのを耳にします。目的地は、光州。光州では戒厳令が敷かれているため、道路が通行禁止になる前に到着しなければなりません。報酬は、なんと、10万ウォンです。10万ウォンと言えば、マンソプがまだ支払っていない家賃の総額です。トンスは、もし、マンソプがこの仕事をすれば、ついに家賃を支払ってくれるかもしれないと思い、「お前にもできそうな仕事だな。」と、話し掛けようとします。しかし、そこに、マンソプの姿はありませんでした。マンソプは、既に、その運転手の車両へ向かって、スキップをしていました。マンソプの頭の中に罪悪感は全くなく、自身が10万ウォンを受け取る姿しか考えていませんでした。その後、光州で波乱の展開が待ち受けている事を、マンソプはまだ全く知りませんでした…。



ここで、この映画自体をよく知るために、まず、光州事件について、大まかに説明させていただきます。光州事件とは、1980年5月18日から27日にかけて、韓国の南部にある、全羅南道の道庁所在地・光州市で続いた事件で、全斗煥(チョン・ドゥファン)将軍率いる軍部がクーデターによって実権を掌握した事に抗議する学生デモが起こり、市民軍が阻止に向けて立ち上がりました。後に、軍による暴行の激しさに抗議する市民たちもデモに加わり、デモの参加者数は、約20万人になりました。最終的には韓国政府が鎮圧しましたが、それまでに、多くの人々が亡くなりました。



この映画でメガホンを取ったのは、「映画は映画だ」(2008年)、「義兄弟~SECRET REUNION」(2010年)のチャン・フン監督。韓国では、1200万人を動員する大ヒットとなり、第54回大鐘賞で、最優秀作品賞と企画賞を受賞しました。また、第90回アカデミー賞では、韓国代表作品に選ばれました。



この後、マンソプは、国都劇場で外国人客を乗せて、いよいよ光州へ向かいます。しかし、既に道路は通行禁止になっており、せっかくマンソプが強引に他の運転手から奪い取った仕事は、一筋縄ではいきません。この映画は、光州事件を基にしたフィクションなのですが、次第に史実を上手く取り入れたコメディーとなっていきます。光州への道中のコメディータッチのシーンで、重要な役割を担っているのは、マンソプを演じたソン・ガンホ。過去に、「シュリ」(1999年)、「パラサイト 半地下の家族」(2019年)に出演しています。マンソプは、経済的なゆとりがなくて家賃を払えず、それをどうにかするために、横着な行動を取ってしまう、いわゆるダメ親父ですが、韓国語と英語を融合させたユーモアたっぷりの台詞や非常にコミカルな身振り手振りは、この映画の見どころの一つです。



しかし、マンソプたちが光州に到着すると、そこには、多くの市民が、軍人たちに容赦なく暴力を振るわれ、喜怒哀楽の感情を完全に奪い取られるという、壮絶な光景が広がっていました。マンソプは、この光景を目にした事で、大きな心境の変化が起こります。「自分には、ある大きな使命が課せられている。」と、悟るのです。この映画は、全世界が決して忘れてはならない悲惨な事件に立ち向かった人物の物語です。実際にどのように立ち向かったのか、ご関心のある方は、ぜひご覧いただきたいと思います。

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