帰ってきたヒトラー(2015年 ドイツ)

帰ってきたヒトラー [DVD] - オリヴァー・マスッチ, ファビアン・ブッシュ, クリストフ・マリア・ヘルプスト, カッチャ・リーマン, フランツィスカ・ウルフ, ラース・ルドルフ, ミヒャエル・ケスラー, トーマス・ティーメ, デヴィッド・ヴェンド
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2014年、ドイツ・ベルリン。マナー講師・ケップルは、世界中の誰もが知っている一人の中年男性に初めて対面しました。男性は悩んでいました。どこに行っても、きちんと敬礼してもらえないと。ケップルは、苦笑しながら、今は誰もが敬礼してもらえない事を教え、敬礼の代替案として、握手を提案します。しかし、男性は、あくまで敬礼にこだわりたいので、納得できません。男性にとって敬礼とは、右腕をしっかりと伸ばし、右手の指も全てしっかりと伸ばし、指と指の間に隙間を作らない事なのです。それでも、現代のドイツでは、男性のこだわりの敬礼は絶対に許されません。そこで、男性は、右腕を伸ばさずに、右手の指をしっかりと伸ばす事を提案しますが、それも、ケップルによって、あっさりと却下されてしまいます。この男性の名は、アドルフ・ヒトラー(オリヴァー・マスッチ)。あのアドルフ・ヒトラー本人が、なんと、現代のドイツで生きているのです。



ヒトラーが現代のドイツで最も驚いたのは、ドイツ国民が現代においても存在している事でした。ヒトラーは、全身全霊を傾け、ドイツ国民全員が生存できぬよう、全ての社会基盤を破壊すべく、努力してきました。ところが、実際には、思惑通りにはなりませんでした。ヒトラーにとって、まさに信じ難い光景でした。また、既に亡くなっているはずの自分自身も生きていました。これもまた、信じ難い事でした。今、ヒトラーは、頭が痛いのを除いて、健康です。「おじさん、大丈夫?」ヒトラーは、ベルリンの民法テレビ局・マイTVのニュース番組の取材を受けていた、ベルリンの貧民街に住む一人の少年の声に気付き、後ろを振り向きます。そこには、少年が2人の友だちと一緒に立っていました。少年たちは、ヒトラーの顔を見て、まさかの事実に、思わず言葉を失います。ヒトラーは、少年たちに、自身の側近のナンバーワンであるマルティン・ボルマンの居場所を尋ねますが、少年たちは、居場所どころか、マルティン・ボルマンの名前さえも知りませんでした。少年たちは、テレビカメラの近くまで戻っていきます。その後、番組のレポーターのファビアン・ザヴァツキ(ファビアン・ブッシュ)がカメラの前に立ちます。ファビアンの後ろには、ヒトラーが小さく映っていました。

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その後、ヒトラーは、総統官邸を目指し、ベルリンの街を歩きます。ヒトラーは、セグウェイに乗った若者の集団に驚き、ブランデンブルク門までやって来ると、瓦礫が見当たらない事にも驚き、大勢のドイツ国民や外国人観光客がにこやかな顔をして歩いている事にも驚きます。中には、ヒトラーと一緒に自撮りをしたくて、誘ってくる人たちもいました。ヒトラーは、彼らが正気を失っているように思えてなりませんでした。ヒトラーは、総統官邸までのルートを知っている人を探し始めますが、当然、知っている人は誰もいません。パントマイムのパフォーマンス中の人に尋ねても当然答えてもらえず、我が子をベビーカーに乗せて歩いていた母親に尋ねても、防犯用に持ち歩いている催涙スプレーを両目に勢いよく吹きかけられるだけでした。

新装改訂版 ベルリンガイドブック 歩いて見つけるベルリンとポツダム 13エリア (GEM STONE 037) - 中村 真人
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やがて、ヒトラーは、一軒のキオスクに辿り着きます。販売されていた新聞を手に取ると、発行された年を知って、動揺します。ヒトラーが今、彷徨い歩いているのは、亡くなった年である1945年から70年近くの歳月が過ぎた2014年だったのです。キオスクの店主(ラルス・ルドルフ)は、新聞を万引きされるのではと危惧し、新聞を指定の場所に戻すよう、警告します。すると、ヒトラーは、店主の声に憤りを覚え、胸ぐらを掴もうとします。しかし、ヒトラーは、そうしようとした矢先に倒れてしまいます。

帰ってきたヒトラー(吹替版) - オリヴァー・マスッチ, ファビアン・ブッシュ, クリストフ・マリア・ヘルプスト, カッチャ・リーマン, フランツィスカ・ウルフ, ラース・ルドルフ, デヴィッド・ヴェンド, デヴィッド・ヴェンド, ミッツィ・マイヤー
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一方、ベルリンにあるマイTVの社屋では、ファビアンが既に出社していました。ファビアンは、受付にいる全身黒づくめの受付係の女性・フランツィスカ(フランツィスカ・ウルフ)が、風邪をひいてしまったというペットのネズミに餌を与えているのを見て、衛生面に不安を感じます。その頃、会議室では、新しい局長を決める重役会議が行われていました。新たに局長に選ばれたのは、カッチャ・ベリーニ(カッチャ・リーマン)でした。副局長のクリストフ・ゼンゼンブリンク(クリストフ・マリア・ヘルブスト)は、最初、普段の努力ぶりを称賛されて、自身が局長に選ばれるのだと確信していただけに、ひどく落胆します。まさか、引き続き、副局長を務める事になるとは全く考えていなかったのです。



その後、クリストフは、受付にいたファビアンを自室に呼び出します。経費削減のため、ファビアンを解雇しなければならなくなったのです。クリストフは、ファビアンが元々映画監督を志望していたのを知っていたため、「(映画監督を目指す)良い機会だ。」と、ファビアンを説得します。しかし、ファビアンは、映画監督を目指す決心がつかないのか、「いいネタがある。」と、クリストフを引き止めようとします。いいネタとは、貧民街の少年たちへの取材の事でした。ファビアンには、このネタが絶対にあたるという確信がありました。しかし、最後の悪あがきは通用しませんでした。

帰ってきたヒトラー(字幕版) - オリヴァー・マスッチ, ファビアン・ブッシュ, クリストフ・マリア・ヘルプスト, カッチャ・リーマン, フランツィスカ・ウルフ, ラース・ルドルフ, デヴィッド・ヴェンド, デヴィッド・ヴェンド, ミッツィ・マイヤー
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その頃、キオスクの前で倒れたヒトラーは、店主に助けられていました。しばらくの間、店主がヒトラーをレジの奥の部屋で休ませていたのです。ヒトラーは、ゆっくりと目を覚ますと、目の前にいた店主に、改めて今の年を尋ねます。店主の答えは、新聞と同じく2014年でした。ヒトラーは、もしかしたら、自分は店主に誘拐されたのではないかと思い込むのですが、店主は、それに対して、「そうだよ。」と、冗談めかして、仕事に戻っていくのでした。

帰ってきたヒトラー 上下合本版 (河出文庫) - ティムール・ヴェルメシュ, 森内薫
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その日の夜、マイTVを解雇され、自宅に戻ったファビアンは、ベルリンの貧民街で撮影された自身の映像に見入っていました。ファビアンの目は、解雇されたショックで潤んでいました。母(ロマナ・クンツェ=リブノウ)は、そんなファビアンを手作りの料理で元気づけます。その後、ファビアンは、しばらくの間、母と一緒に映像に見入ります。すると、母は、どこかで見た事があるような出で立ちの人物が映っているのに気付きます。その人物とは、ヒトラーでした。母は、ファビアンに映像を拡張してもらいましたが、間違いなくヒトラー本人でした。母は、愛する息子が特ダネを掴んだ、マイTVに復帰するチャンスを掴んだと確信したのでした。



翌朝、ヒトラーは、キオスクのレジの奥にある部屋で目を覚まします。店主は、ヒトラーの着ていたコートからガソリンのような臭いがするのが気になり、ヒトラーに、コートをクリーニング店に持っていく事を勧めます。ヒトラーは、黄色のポロシャツと青いジーンズに着替え、店主から言われた通りに、コートをクリーニング店に持っていきます。そして、キオスクに帰ると、店主が店先で待っていました。店主曰く、ヒトラーに会いたがっている人がいるとの事。その人は、ファビアンでした…。



ドイツ出身のデヴィッド・ヴェンド監督がメガホンを取ったこの映画の原作は、ジャーナリストの経験があるドイツ出身の作家ティムール・ヴェルメシュが、2012年にドイツで発表した同名タイトルの小説です。小説は、ヒトラーの極悪ぶりだけを描くのではなく、ヒトラーにも少しは人間らしい一面があったのではないかというメッセージを込めている事から物議を醸し、ドイツ国内で250万部を売り上げました。その後、小説は、42の言語に翻訳され、権威あるタイムズのベストセラーリストで堂々No.1に輝きました。



2012年10月、後にこの映画でプロデューサーを務める事になるラース・ディートリヒが、ドイツ・フランクフルトで開催されたブックフェアで、この小説と出会い、400ページもある大胆不敵なストーリーに興奮し、後にこの映画でディートリヒの製作パートナーとなるクリストフ・ムーラーに、映画化の話を持ち掛けました。ムーラーは、随分前に映画化権が別の製作会社に買われている事を伝えましたが、ディートリヒは諦められず、一晩かけてアイデアをよく練った上で、翌日に小説の発売元のアイヒボーン出版に電話で待ったをかけ、数週間後にヴェルメシュとアイヒボーン出版社の経営陣による話し合いが行われました。そして、話し合いの結果、ディートリヒは見事に映画化権を手にしたのです。



主人公アドルフ・ヒトラーを演じたのは、オリヴァー・マスッチ。印象に残ったのは、ヒトラーが総統官邸を目指して歩くシーン。まさか、死んだはずの年から70年近くも経過しているベルリンの街を歩くとは夢にも思わなかったヒトラー。道行く人に総統官邸までのルートを尋ねる時の真面目な口調に、クスクスと笑ってしまいました。この映画を観ている人をあの手この手で笑わせようというわざとらしさがないところに好感が持てました。プロデューサーのディートリヒらは、ヒトラー役のキャスティングの際、リアリティを追求すべく、様々な舞台を観劇しました。そして、オーストリア・ウィーンのブルク劇場を訪れた際、無名の実力派舞台俳優であるマスッチに注目しました。マスッチ自身は、顔が全然ヒトラーと似ておらず、身長も193㎝のため、ヒトラー役のオファーが来た時は不思議な感覚でしたが、YouTubeを観て、ヒトラー独特の話し方を練習しました。そして、撮影の際、マスッチは、2時間掛けて、人工の鼻、目の下の隈、口周りのしわ、口ひげを付けて、ヒトラーらしい外見を作り上げたそうです。



この映画は、コメディー映画に分類されますが、社会問題に目を向けたシーンもあります。ヒトラーとファビアンがドイツ全土を回り、様々なドイツ国民に、最も困っている問題を尋ねるのですが、移民問題で困っているとの返事が目立ちました。移民の子どもの躾がきちんとされていない、(いかにも罪を犯しそうな)怪しい移民を母国に返したい、移民の流入が増えていて困っている…。自国第一主義と呼んでいいのかどうか判断が難しいですが、それに近いものを感じたのは、確かでした。因みに、このシーンは、クランクインして最初に撮影されたアドリブシーンだそうです。



この後、ヒトラーは、ファビアンの取った行動が原因で、とんでもないイメージに苛まれます。とんでもないイメージとは、なんと、コメディアン!ヒトラー自身には、人様を笑わせるつもりは全くなく、思った事を口にしているに過ぎないのに、なぜこんな事になってしまうのでしょうか。そして、ファビアンは、このような事態をどうやって収拾するのでしょうか。気になる方は、ぜひご覧いただきたいと思います。

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