英国総督 最後の家(2017年 イギリス)

英国総督 最後の家 [DVD] - ヒュー・ボネヴィル, ジリアン・アンダーソン, マニーシュ・ダヤール, フマー・クレイジー, マイケル・ガンボン, グリンダ・チャーダ O.B.E.
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1947年、イギリス領インドの首都・デリーにある壮麗な総督官邸では、500人もの使用人たちが、新たに総督に就任するマウントバッテン卿(ヒュー・ボネヴィル)、妻・エドウィナ(ジリアン・アンダーソン)、そして、18歳になる娘・パメラ(リリー・トラヴァース)を迎える準備に追われていました。総督官邸は、大広間と迎賓室が34部屋、食堂は10部屋、さらに、映写室も備わった大邸宅でした。この頃、イギリスは第二次世界大戦によって国力が疲弊し、約300年間支配してきた植民地・インドを去る事を発表していました。マウントバッテン卿は、イギリスからインドへの主権譲渡のため、インドの最後の総督に任命されたのです。

英国総督 最後の家(字幕版) - ヒュー・ボネヴィル, ジリアン・アンダーソン, マニーシュ・ダヤール, フマー・クレイジー, マイケル・ガンボン, グリンダ・チャーダ, ポール・マエダ・バージェス, モイラ・バフィーニ, ディーパック・ナヤール, ディーパック・ナヤール
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そんな中、インド・パンジャーブ出身の青年ジート・クマール(マニーシュ・ダヤール)が、友人で、総督官邸の使用人として働くドゥリープ(ジャズ・ディオール)の紹介で、新たにマウントバッテン卿に仕える事になり、総督官邸にやって来ます。これから、ジートは、上司・グプタ(ダルシャン・ジャリワラ)の下で、少しずつ仕事を覚えていく事になります。ジートの前職は、警察官。ラホール(※現在のパキスタンの北部にある都市)にある刑務所で、国の指導者を監禁する任務に就いていました。しかし、自身の道徳意識に反した仕事内容に次第に耐えられなくなり、わずか2年で退職しました。また、ジートは、マウントバッテン卿がビルマ(※現在はミャンマー)を解放した英雄である事を知っていました。それ故、「次はインドも開放してほしい。」と、期待していました。グプタたちは、そんなジートの政治思想を警戒します。

大英帝国インド総督列伝―イギリスはいかにインドを統治したか - 浜渦 哲雄
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一方、以前から総督官邸で働いているアーリア(フマー・クレイシー)は、パメラの秘書に抜擢されます。アーリアは、これまでの経験を買われたのではありません。18歳であるパメラには、アーリアのような若い女性の秘書が必要だったのです。アーリアは、今の部署を離れると、上司や同僚たちに迷惑をかけてしまうのではないかと考えますが、上司は、むしろ「名誉に思いなさい。」と、たしなめるのでした。



その後、アーリアは、総督官邸の歩廊で、ジートの姿を見つけ、驚きます。ジートも、アーリアとのまさかの再会に驚きます。アーリアとジートが再会したのは、2年ぶりの事でした。しかし、アーリアは次の予定があったため、ジートに何も言わずにその場を離れます。かつて、2人は惹かれ合っていました。アーリアの父親(オーム・プリー)がデモ行進に参加して、逮捕され、刑務所に服役していた時に、刑務所に勤務する警察官だったジートが、面会が禁じられていたアーリアに代わり、手紙や食料、薬を届けてくれたのがきっかけでした。しかし、2人の間には、インド特有の問題がありました。それは、宗教の違いでした。ジートはヒンドゥー教を信仰し、アーリアはイスラム教を信仰していたのです。さらに、アーリアには、幼い時に決められた婚約者・アシフがいて、今も婚約中でした。アーリアはアシフを裏切るような真似は断固避けたいのですが、ジートは、たとえアーリアがそんな事情を抱えていても、アーリアの事がどうしても諦められませんでした。



その頃、マウントバッテン卿一家は、インドへ向かう飛行機に乗っていました。マウントバッテン卿は、真っ白な軍服に身を包み、鏡を見ながら身なりを整えていました。エドウィナは、窓の向こうの山並みを見つめていました。一方、パメラは、愛犬・ミッツィに同じ山並みの景色を見せていました。その後、一家はインドに入国し、馬車で総督官邸に入ります。総督官邸の前では、500人もの使用人たちが馬車の通り道の両側に並び、一家を盛大に出迎えます。



この頃、インドは、国中が大混乱となっていました。インド国民会議と全インド・ムスリム連盟は、同席を拒む程の対立関係にあり、死者の数は膨大になっていました。ヒンドゥー教徒とシーク教徒は、統一インドの誕生を望んでいましたが、インドでは少数派であるイスラム教徒は、インドとは別に、イスラム国家・パキスタンの建国を望んでいました。マウントバッテン卿は、難しい舵取りを任されてしまったのです。



マウントバッテン卿は、総督官邸に到着して早々に、親友でインド国民会議のネルー(タンヴィール・ガニー)らを食事に招待します。前総督のウェーヴェル(サイモン・ウィリアムズ)、参謀長のイズメイ卿(マイケル・ガンボン)は、ネルーが訪れる事を知り、気が気ではありません。第二次世界大戦の際、ネルーは、イギリスとナチス・ドイツとの戦いに異を唱えて逮捕され、9年間服役しました。しかし、9年間服役しても、気力が衰える事はなく、インド国民会議でインド独立運動を進めているのです。ネルーは、早々に総督官邸に到着し、ウェーヴェルらに挨拶します。ウェーヴェルらが拒否反応を示しているのに対し、ネルーは、ケンブリッジ大学出身のおかげか、実に弁が立ち、ウェーヴェルらの拒否反応を全く気にしませんでした。



こうして、マウントバッテン卿は、インドの最後の総督に就任しました。インドには、インド国民会議と全インド・ムスリム連盟の対立の他に、非識字率が92%に上る事、赤ん坊の5分の1が生後4か月より前には亡くなる事などの様々な問題がありました。これらを知ったエドウィナは、それぞれの問題の重要性をマウントバッテン卿に説くのですが、マウントバッテン卿は、インドの知事全員から意見を聞くのに忙しく、それらに関わる時間がありませんでした。しかし、マウントバッテン卿は、多忙な日々を送る中で、使用人たちには、人種や宗教に関係なく、平等に接しました。エドウィナも、料理人たちの腕前を素直に称賛したり、動物を食べず、右手で食べ物を掴んで、そのまま食べるインドの食文化をすんなりと受け入れました。パメラも、非識字率の高さに危機感を抱き、子どもたちに文字を教えるようになりました。



ある日の深夜、数多の報告書に目を通していたマウントバッテン卿は、パンジャーブで暴動が悪化の一途を辿っている事を知り、独立を早める必要がある事を痛感します。エドウィナは、「焦りは禁物。」と、かねてからの親友であるネルーに会う事を勧めます。しかし、後日、マウントバッテン卿が平和的な解決方法をネルーに尋ねると、ネルーから、「(そもそも、)同胞が憎み合うように、あなた方は仕向けた。」と、厳しい意見をぶつけられます。しかし、ネルーが敢えて厳しい意見をぶつけたのは、マウントバッテン卿を信頼しているからこそでした。そんなある日、総督官邸を、一人の男性が訪れます。インド独立運動指導者の一人であるマハートマー・ガンディー(ニーラジ・カビ)でした…。



1947年に、イギリス領インドが、インドとパキスタンに分離独立した際、史上最大規模の大移動が発生しました。1400万人が移住を余儀なくされ、そのうち、ヒンドゥー教徒、イスラム教徒、シーク教徒合わせて、100万人が尊い命を奪われました。当時、一人の女性が、子どもたちを連れて、パキスタンからインドへ向かいました。女性は、赤ん坊だった娘が道中で餓死するという、非常に悲しい出来事を経験しましたが、やがて、難民キャンプに辿り着き、夫との再会を果たす事ができました。この女性の孫娘にあたるのが、この映画でメガホンを取ったグリンダ・チャーダ監督です。



私がこの映画を観て感動したのは、マウントバッテン卿一家の分け隔てなく人々と接する様子です。マウントバッテン卿は、自身と同様にインドに滞在するイギリス人にも、総督官邸で働くヒンドゥー教徒、イスラム教徒、シーク教徒の使用人たちにも、平等に接していました。妻のエドウィナは、全くわがままを言わず、イギリスとかけ離れたインドの食文化を尊重していました。また、娘のパメラは、少しでも識字率を上げようと、インドの子どもたちに文字を教えていたのですが、笑顔で優しく教えていたのが印象的でした。他人との違いを受け入れるのは、人としての基本だと思いますが、この映画でマウントバッテン卿一家の振る舞いを観て、心が温かくなりました。



また、それとは正反対に、納得がいかないシーンがありました。それは、ネルーがマウントバッテン卿に向かって、「(そもそも、)同胞が憎しみ合うように、あなた方は仕向けた。」と、言い放ったシーンです。たとえ、イギリス側がそう仕向けたとしても、宗教の違いだけを理由に、相手を敵視しない事が大切なのではないでしょうか。イギリスのせいにするような問題ではありません。しかし、実際には、イギリス領だったインドは、インドとパキスタンに分離する形で独立しました。その間、100万もの人々が尊い命を奪われました。当時、もし、インドの社会で、誰もが宗教の違いを認めていたら、インドの歴史は全く違うものになっていたかもしれません。



ところで、皆さんは、イギリスのチャールズ皇太子がマウントバッテン卿を尊敬してやまないのをご存知でしょうか?チャールズ皇太子は、マウントバッテン卿から見て、甥(エリザベス女王の夫・フィリップ殿下)の息子にあたり、幼少の頃からずっと、マウントバッテン卿を慕っていたそうです。1979年に、マウントバッテン卿がアイルランドで暗殺された時は、他の誰よりもショックを受け、翌年になると、ある女性と知り合い、生前のマウントバッテン卿について語り合ったそうです。女性の名は、ダイアナ・スペンサー。後のダイアナ妃です。マウントバッテン卿は、現代のイギリス王室に大きな影響を与えていたのですね。

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