ヒトラーの忘れもの(2015年 デンマーク・ドイツ)

ヒトラーの忘れもの [DVD] - ローラン・ムラ, ミゲル・ボー・フルスゴー, ルイス・ホフマン, ジョエル・バズマン, エーミール・ベルトン&オスカー・ベルトン), マーチン・サントフリート
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1945年5月、ナチス・ドイツによる5年間の占領が終わったデンマークでは、デンマーク軍のカール・レオポルド・ラスムスン軍曹(ローラン・ムラ)が、憎きナチス・ドイツ軍の兵士たちを一刻も早く追い出そうと、威張り散らした態度を取っていました。隊列を組んで、ひたすら歩く彼らに、「さっさと帰れ!」と怒鳴ったかと思うと、デンマークから何かを持ち帰ろうとしていた者を見つけると、馬乗りの状態で相手の顔をしつこく殴り続け、それを止めに入る者が現れると、今度は足蹴りを喰らわせました。ラスムスン軍曹は、叫びました。「ここは俺の国だ!出てけっ!!」

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この頃、ラスムスン軍曹は、新たな任務が始まろうとしていました。戦争中に、ナチス・ドイツ軍が、デンマークの西海岸の海岸線に、200万個以上に及ぶ地雷を埋めたのですが、それらを除去する作業の監督を担う事になったのです。実際に作業にあたるのは、捕虜となったナチス・ドイツ軍の兵士たち。彼らは、大半が15歳から18歳までの少年兵で、地雷を扱った経験がある者はほとんどいませんでした。そんな状況で、まず、地雷の除去作業の練習が始まりました。作業がほんの数秒でも遅いと、練習の監視役であるデンマーク軍のエベ大尉(ミゲル・ボー・フルスゴー)がすぐに鞭で叩き、地雷が爆発したという設定を作って、「死んだぞ。」と面白がりました。しかし、時には、練習で失敗して、地雷が爆発し、兵士の一人が本当に命を落とす事もありました。

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こうして、ナチス・ドイツ軍の兵士たちは、実際に作業を行う西海岸へ向かいました。彼らが西海岸に到着してすぐに、ラスムスン軍曹も到着しました。ラスムスン軍曹は、彼らを「汚い豚」と呼び、横一列に並ばせました。兄のヴェルナー・レスナー(オスカー・ベルトン)と弟のエルンスト・レスナー(エーミール・ベルトン)の双子の兄弟、ヴィルヘルム・ハーン(レオン・サイデル)、ルートヴィヒ・ハフケ(オスカー・ブーケルマン)、セバスチャン・シューマン(ルイス・ホフマン)、ヘルムート・モアバッハ(ジョエル・バズマン)ら、ナチス・ドイツ軍の兵士たちは、ラスムスン軍曹から一人ずつ名前を尋ねられると、ラスムスン軍曹の導火線に火が付かないよう、恐る恐る答えました。全員、余計な口を利いたり、小柄であったり、目に涙を浮かべたりした事で、ラスムスン軍曹から怒鳴られたり、殴られたり、馬鹿にされたりしましたが、しっかりと前を見つめていました。

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兵士たちが最初に命じられたのは、海岸の黒い旗と小道の間に埋まっている、45,000個の地雷を除去する事でした。45,000個全てを除去すれば、ドイツに帰国する事ができます。もし、1日に6個ずつ除去し、上手く行けば、早くて3か月後に帰国できます。ただし、もし、作業に失敗したら、命がなくなると思わなければならなりません。こうして、地雷の除去作業は始まりました。一人一人が、黒くて長い棒を少しずつ砂浜に刺し、地雷の有無を調べます。そして、作業が始まってすぐに、1つ目の地雷が見つかります。見つけた少年兵は、ゆっくりと蓋を開け、信管を抜きます。その後、他の者たちも、同様に地雷を見つけ、作業を行いました。

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兵士たちは、作業が一通り終わると、寝泊まりするための小屋に戻りました。「捕虜生活は、思ったより悪くはないな。」ヴィルヘルムは、そう独り言をつぶやくと、帰国後の夢を語りました。ヴィルヘルムは、父親の親友が経営する工場に、機械工として就職するのが夢でした。しかし、それを聞いた者の中には、その夢を冷めた目で見る者がいました。ヘルムートです。ヘルムートは、「俺も(同じ職場に就職できるように)頼むよ。」とヴィルヘルムをからかうと、セバスチャンにそれを止められます。

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その日の夕方、エルンストは、小屋の外で一休みしている時に、小屋の近くに住む幼い少女・イリザベトと出会い、イリザベトが大切にしている人形の、外れてしまった腕の部分を治してあげます。すると、そこへ母親がやって来ます。母親は、ナチス・ドイツ軍の兵士から大事な娘を守るべく、大急ぎで名前を呼び、連れて行きました。それからすぐに、そこへラスムスン軍曹もやって来ます。兵士たちは、皆、小屋に戻り、ラスムスン軍曹は、どの兵士も脱走しないよう、閉じた後の扉の前に、幅の広い板を次々に掛けていきます。

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翌日、兵士たちは、地雷の除去作業を淡々と進めていました。しかし、2日間も飲まず食わずのままでいるため、空腹に耐え続けるのはもう限界で、ラスムスン軍曹に食事を要望したい者も出てきましたが、それは、土台無理な話でした。しかし、セバスチャンは、そんな者の要望を叶えてあげたいと考え、ラスムスン軍曹に直訴します。ラスムスン軍曹は、最近まで自身の母国を占領していた国の人間である彼らに同情する気はさらさらなく、「どうなろうと、知ったこっちゃない。勝手に餓死すればいい。」と言い放ちます。

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さらにその翌日、ヴェルナーとエルンストが、ラスムスン軍曹に体調不良を訴えます。ラスムスン軍曹は、自身の手をエルンストの額に当て、発熱は認めましたが、「このくらいなら、働けるだろう。」と言って、笑みを浮かべ、仮病だと決めつけて、作業に戻るよう命じます。その後も、何度も何度も体調不良を訴えた2人でしたが、これ以上訴え続けるのは無理だと判断し、命令に従います。



その後、各々が作業を進めていると、空腹で集中力がなくなっていたヴィルヘルムが地雷に向かって、嘔吐します。すぐ近くで作業していたセバスチャンは、ヴィルヘルムの名前を呼び、近付こうとします。すると、ヴィルヘルムのすぐ目の前にあった地雷が、巨大な音を立てて爆発。セバスチャンがヴィルヘルムの元に近付くと、ヴィルヘルムは、両腕がほぼ丸ごとちぎれていて、「家に帰りたい、家に帰りたい。」と号泣していました。セバスチャンは、周囲に助けを求めますが、誰もがあまりの衝撃の大きさに身体が固まってしまい、助けに行けません。しかし、セバスチャンがもう一度助けを求めると、やっと、1人、2人と、助けに来てくれました。



その後、セバスチャンたちは、ヴィルヘルムをラスムスン軍曹の元に連れて行きますが、ラスムスン軍曹は、彼らの声を一切無視します。イリザベトの母親も、ヴィルヘルムの声を聞いて、家の扉を小さく開けますが、何もせずに、扉を閉じてしまいます。しかし、しばらくして、ラスムスン軍曹が外に出てきます。ラスムスン軍曹は、ヴィルヘルムの肩に薬を注射し、病院への搬送を行う車両を手配します。セバスチャンが礼を述べると、ラスムスン軍曹は何も言わずに、その場を去りました。



翌日、兵士たちが小屋の中で、次々に嘔吐します。ラスムスン軍曹が様子を見にやって来ると、ヘルムートが前に進み出て、「自分のせいです。」と言い出します。実は、前夜に、空腹に耐え続ける仲間たちを助けたい一心で、イリザベトが母親と暮らす家にあった家畜の餌を盗み、全員に分け与えていたのです。ラスムスン軍曹は、イリザベトの母親に会いに行き、証拠を確認させてもらうのですが、家畜の餌らしきものは全く見当たりませんでした。その場に立ち会っていたイリザベトの母親は、ネズミの糞を少しだけ手に取り、ネズミの糞を食べると、お腹を下してしまう事を教えてくれました。イリザベトの母親は、思わずクスッと笑います。「何がおかしい?」とラスムスン軍曹が尋ねると、イリザベトの母親は、「ドイツ人に仕返しができた。」と満足感を口にします。ラスムスン軍曹は、彼女と同じデンマーク人として、この言葉を聞き、違和感を禁じ得ませんでした…。



デンマークのナチス・ドイツに対する憎悪は、凄まじいものがあります。憎悪があまりにもひどく、人間味が失われています。少なくとも、この映画に登場するデンマーク軍の幹部たちは、ナチス・ドイツ軍の兵士たちを「貴様」、「汚い豚」と呼んで、何かきっかけがあれば、やりたい放題に暴力を振るいます。相手を骨折させてでも、大量出血させてでも、戦争中にナチス・ドイツ軍から受けた侮辱をこうして徹底的に晴らしたいのではないでしょうか。最初は、ラスムスン軍曹もその中の一人でした。しかし、ある日、自身と同じデンマーク人である、イリザベトの母親の持つ行き過ぎた考えを耳にした時に、違和感を覚えます。ラスムスン軍曹にとって、これが大きなターニングポイントとなるのです。



この映画で描かれているストーリーは、舞台となっているデンマークではほとんど知られていない史実に基づいています。当時、2,000人を超えるナチス・ドイツ軍の捕虜が地雷の除去に携わり、除去した地雷の数は、150万を上回ります。捕虜の多くを占めたのは少年兵で、捕虜全体の半数近くが死亡、または、重傷を負いました。



監督・脚本は、デンマーク出身のマーチン・サンフリート。独学で演出と脚本を学び、ドキュメンタリー映像の編集スタッフとしてキャリアを積み、2009年に長編映画の監督としてデビューしました。この映画は、長編映画の監督となって第3作目です。この映画は、2015年に、第28回東京国際映画祭で、ラスムスン軍曹を演じたローラン・ムラと、セバスチャンを演じたルイス・ホフマンが、揃って最優秀男優賞を受賞しました。翌年の2016年には、デンマークのアカデミー賞にあたるロバート賞で、作品賞、監督賞、オリジナル脚本賞、撮影賞、編集賞、観客賞を受賞。さらに、その翌年の2017年には、第89回アカデミー賞で、外国語映画賞(現・国際長編映画賞)にノミネートされました。



ラスムスン軍曹役のローラン・ムラは、この映画が初主演作となりました。ナチス・ドイツ軍の兵士たちに対して容赦ない威圧感を見せつける時と、イリザベトの母親の言葉に違和感を覚えた時の良心が現れた瞬間との演じ分けが実に見事で、非常に説得力がありました。一方、セバスチャン役のルイス・ホフマンは、正義感があり、ラスムスン軍曹の威圧感に全く屈しない姿勢を演じている姿に、度胸の強さを感じました。



この映画を観る前、私は、「ヒトラーの忘れもの」という邦題から、最近よくある、ヒトラーの政治手法を批判して、ポピュリズムに意を唱えるタイプの映画を勝手にイメージしていました。しかし、実際に観てみると、ナチス・ドイツ軍の少年兵たちが、デンマークに国という単位で括られ、様々なデンマーク人から、様々な方法で仕返しをされていました。ヒトラーのしてきた事を考えたら、デンマーク人たちが少年兵たちをひどく憎むのは無理もありません。しかし、実際に仕返しをやり遂げて、人は幸せになるものなのでしょうか。冷静になって考えたら、分かるはずなのですが…。でも、この時代では、仕方のない事だったのでしょうか。とにかく、恨みと赦しについて、色々と考えさせられる映画でした。

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