告白小説、その結末(2017年 フランス・ベルギー・ポーランド)

告白小説、その結末 [DVD] - エマニュエル・セニエ, エヴァ・グリーン, ヴァンサン・ペレーズ
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フランス・パリにある大型書店で、小説家・デルフィーヌ(エマニュエル・セニエ)が発表した私小説の大ヒットを記念したサイン会が開かれています。デルフィーヌの目の前には、作品の世界に共感した大勢のファンが一列に並んでいます。この大行列は一向に途切れる気配がなく、デルフィーヌが、その場にいた書店の店員に頼んで、サイン会を途中で止めてもらわなければならないほどでした。店員が申し訳なさそうな顔でサイン会を止める事を宣言すると、デルフィーヌのサインを貰うのを心待ちにしていた大勢のファンは、次から次へと不満を口にします。一方、デルフィーヌは、すっかり疲れ果ててしまい、両手で頭を抱えて下を向いていました。

告白小説、その結末(字幕版) - エマニュエル・セニエ, エヴァ・グリーン, ヴァンサン・ペレーズ, ロマン・ポランスキー, オリヴィエ・アサイヤス, ロマン・ポランスキー
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そんな時、デルフィーヌの前に、一人の若い女性ファンが現れます。黒のレザージャケットと真紅の口紅が印象的なこの女性は、フランス語で「彼女」を意味する「エル」(エヴァ・グリーン)と、名乗り、「あなたの熱烈なファンに、あと1冊だけお願い。」と、サインを頼み込んできます。デルフィーヌは、エルの声に少し驚いて前を向きます。デルフィーヌは、また長い行列が出来てしまう事を恐れますが、エルは諦めません。「まだ、誰も見ていないわ。」デルフィーヌは、わずか力を振り絞るように「もう、無理。倒れそうなの。」と、サインを断りますが、エルは、「遠くから来たのに。」と、笑顔で近付いてきます。



デルフィーヌは、サインができなかった大勢のファンに取り囲まれながら、秘書のカリーナ(ジョゼ・ダヤン)と一緒に迎えの車に乗り込み、大型書店を後にします。この後、デルフィーヌは、疲労困憊でしたが、カリーナに「数分でいいから。」と、説得されて、有名書店や海外の出版社の関係者が大勢出席しているパーティーに顔を出す事にします。会場は、パリのとあるナイトクラブ。デルフィーヌは、ナイトクラブに到着してすぐにコートを脱ぐと、自身の目の前で、見覚えのある女性がタバコをふかしているのを見かけます。彼女は、大型書店でのサイン会の終了後に、粘り強くサインを頼んできたエルでした。デルフィーヌは、サインを断った事をエルに謝ると、「私には辛い作品で」と、理由を説明します。どうやら、多くのファンを共感させたデルフィーヌの私小説の執筆は、自身にとってとても苦しい作業だったようです。エルは、デルフィーヌのサイン会での対応に怒るどころか、デルフィーヌの私小説を改めて称賛します。なぜなら、それは、自身のために書かれたような気がしてならなかったからです。デルフィーヌは、私小説の単行本が手元にある事をエルに確かめると、表紙の裏にサインをします。



エルは、デルフィーヌが私小説を執筆する前に、どのように取材を行っていたのかが気になって、根掘り葉掘り尋ね、さらに、デルフィーヌの取材メモも見せてもらいます。エルは、突然、世間から注目を浴びるようになり、孤独を感じるようになったデルフィーヌの心中を思いやります。デルフィーヌは、自分の心中を見抜いたエルに驚きますが、その後は、とても初対面とは思えないくらいに会話が弾みます。また、エルは、会話が弾むだけでなく、聞き上手でもありました。デルフィーヌは、すっかりエルの人柄の虜になりました。



その日の夜、デルフィーヌは、アメリカのテレビ番組の司会者で、フランスに一時帰国している夫のフランソワ(ヴァンサン・ペレーズ)の誘いで、田舎の別荘へ気晴らしをしに行きます。別荘へ向かう道中、デルフィーヌが話す内容は、エルの事ばかりでした。翌朝、別荘の近くに住むレイモン(ドミニク・ピノン)が、シードルを2本持参して、2人を訪ねてきます。レイモンは、デルフィーヌの私小説の単行本も持参していました。レイモンがデルフィーヌにサインを求めると、デルフィーヌは快くサインに応じました。数年前、レイモンの妻は、デルフィーヌの母親と同様に、精神科に入院しました。レイモン、そして、妻自身の苦労は、計り知れないものがありました。デルフィーヌの母親は自ら命を絶ちましたが、レイモンの妻は幸いな事に無事に退院して、元気を取り戻しました。レイモンは、デルフィーヌがサインをし終えると、単行本を受け取り、帰っていきます。この頃、デルフィーヌは、次の小説のアイデアがなかなか浮かばず、苦しみの中にいました。既に準備には取り掛かっていましたが、準備を始めてから既に2年が経過していました。



別荘からパリのアパルトマンに戻ったデルフィーヌは、留守中に届いた1通のファンレターに目を通します。しかし、その内容は、非常に辛辣でした。「実話を小説だというつもり?人物の名前を変えただけで、人生を取り戻せると思っているの?手遅れよ。母親を売った代償は大きいわ。家族の不幸は、さぞ高く売れたでしょうね。分け前が欲しいわ。」デルフィーヌは、あまりの悔しさに、ファンレターをゴミ箱に捨てます。実は、デルフィーヌの私小説は、母親の自殺という残酷な体験を基に、執筆したものでした。デルフィーヌは、あくまでこの体験を小説にして乗り越えたかっただけに過ぎないのですが、読者の中には、このファンレターのように、歪んだ正義感を振りかざしてくる人がいたのも、事実だったのです。そんな時、エルから電話がかかってきます。デルフィーヌは、エルに電話番号を教えた覚えがありませんでしたが、エル曰く、社交辞令で教えてもらったといいます。エルは、デルフィーヌをお茶に誘おうと考えていました。デルフィーヌは、迷わず誘いに乗り、エルの待つカフェに向かいます。



デルフィーヌがカフェに到着すると、エルは既にカフェのカウンター席で待っていました。デルフィーヌは、エルと初めて会った時に、自身の半生について話したため、今度は、エルの半生について尋ねようとします。しかし、エルは、なぜか「面白くないわ。」と、言って、話したがらず、その代わりに、自身も執筆活動をしている事を打ち明けます。実は、エルは、女優や女性政治家など、他人の人生を本人に代わって書く、ゴーストライターだったのです。今、エルが取り掛かっているのは、テレビの司会者の本で、夏にイビサ島にある別荘を訪れて、取材を行っていました。エルは、これから、30時間に及んだその取材を本にまとめるつもりでいました。デルフィーヌは、「自分自身の事を本にしないの?」とエルに尋ねますが、子どもを授からないまま夫が他界して以来、一人暮らしをしているエルには、そんな気はありませんでした。



デルフィーヌは、エルの半生を知るのを諦め、再び、自身の半生について話し始めます。デルフィーヌは、お互いの自由を尊重するために、フランソワと別居しているのですが、エルは、デルフィーヌとフランソワが非難の的である事が周知の事実になっているのを、サラリと話します。以前に、フランソワは、自身のテレビ番組にデルフィーヌをゲストとして出演させた事があり、それを批判する人が後を絶たないのです。デルフィーヌは、批判する側の気持ちをまるで理解できず、「6区にある出版社へ打ち合わせをしに行く。」と、言って、カフェを離れようとしますが、エルも、「私もそうよ。」と、言って、デルフィーヌについて来ます。



出版社へ向かう途中、エルは、地下鉄の車内で、デルフィーヌに家族について質問をぶつけます。デルフィーヌには、既に自立している子どもが2人いますが、デルフィーヌは、子どもたちに「見捨てられた」と、思っていました。息子・ポールは、ベルギーにある美術学校に通い、娘は、航空会社のパイロットを目指しています。やがて、地下鉄の車両が出版社の最寄りの駅に着くと、デルフィーヌだけが降ります。車内に残ったエルは、微笑みながらデルフィーヌを見つめていました。地下鉄を降りた後、デルフィーヌは、自身の鞄から小物がいくつも落ちていく音に気付き、一つずつ拾います。しかし、デルフィーヌには、鞄を開けっ放しにしておいた覚えは全くありませんでした。さらに、デルフィーヌは、ある重大な事実に気付きます。鞄の中に入れていたはずの大切な取材用のノートが、いつの間にかなくなっていたのです…。



やばいですねえ…。デルフィーヌが、エルに見事にマインド・コントロールされて、自身のプライベートについて何から何まで話していますねえ。上記のあらすじは、この映画の上映開始からわずか15分間の出来事なのですが、上映開始からわずか15分の時点で、早くも、悲惨な結末がデルフィーヌを待ち受けているような気がしてしまい、この後の展開を観るのが怖くなりました。



この映画の原作は、フランスで最も注目されている作家デルフィーヌ・ド・ヴィガンの小説「デルフィーヌの友情」です。フランスの最も権威ある文学賞の一つであるルノドー賞や、フランスの高校生によって選出される文学賞であるゴンクール賞を受賞したこの小説を、「戦場のピアニスト」(2002年)、「ゴーストライター」(2010年)、「毛皮のヴィーナス」(2013年)のロマン・ポランスキー監督が映画化しました。



デルフィーヌを演じたのは、ポランスキー監督の妻のエマニュエル・セニエ。これまで、「エディット・ピアフ~愛の賛歌~」(2007年)、「潜水服は蝶の夢を見る」(2007年)、「毛皮のヴィーナス」(2013年)等に出演しています。「告白小説、その結末」で、セニエは、かなり悪質にマインド・コントロールされている事に気付かず、エルの表面的な優しさをただただ信じてしまう女性を見事に表現し、観る者をハラハラさせました。



また、エルを演じたのは、エヴァ・グリーン。これまで、「007/カジノ・ロワイヤル」(2006年)、「ライラの冒険 黄金の羅針盤」(2007年)、「ダーク・シャドウ」(2012年)等に出演しています。グリーンは、至ってピュアな心の持ち主であるデルフィーヌを巧みに優しく追い詰め、観る者をじわじわと凍り付かせました。しかし、物語の後半になると、グリーン演じるエルは、鋭い牙をむき始めます。



この後も、デルフィーヌは、エルに対して、まだまだ隙を見せ続けます。デルフィーヌは、エルに新作の原稿を読んでもらい、エルの誕生日になると、スカーフをプレゼントして、エルとの友情を深め、エルにボイスレコーダーを貸し、さらに、自身のいわれのない事実によってインターネットが炎上した時には、エルにパソコンのパスワードまで教えて、デルフィーヌは、ますますエルの策略から逃れにくくなります。夫のフランソワは、早い段階でエルが危険人物である事を見抜き、デルフィーヌを心配しますが、デルフィーヌは、エルを信頼し切っています。この映画を観る者としては、フランソワと同様、デルフィーヌを一刻も早く助けてあげたくなるのですが、当然それは不可能なので、歯がゆい気持ちで展開を見守るしかありません。ところが、ところが、この後、思わぬ展開が待ち受けているなんて!さて、この映画は、どんな結末を迎えるのでしょうか!!

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