モン・パリ(1973年 フランス・イタリア)

モン・パリ [DVD]
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フランス・パリ・モンパルナス。自動車教習所に通う一人の年老いた女性・ジャンヴィエが、路上教習に臨んでいます。助手席には、イタリア人の教官・マルコ(マルチェロ・マストロヤンニ)が座っています。ジャンヴィエは、マルコの丁寧な指導に心の中では感謝しつつも、頭の中は不安でいっぱいの様子。一方、マルコも、ジャンヴィエの運転能力がなかなか向上しない事を心配し、「このままでは、次の段階について教えてあげられない。」と、本人の前で本音を口にしてしまいます。マルコの同僚のスーマン(クロード・メルキ)は、そんな彼を心配し、食事に誘います。

ミシェル・ルグラン=ジャック・ドゥミ作品集 - ミシェル・ルグラン
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授業終了後、スーマンとマルコは、身支度を済ませて、自動車教習所の事務所を出ようとします。すると、その時、マルコ宛ての電話が入ります。電話を掛けてきたのは、美容師として働くフランス人の婚約者・イレーヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)でした。イレーヌは、マルコと自身との間に生まれ、8歳になった息子・ルカ(バンジャマン・ルグラン)と映画を観に行く約束をしたため、わざわざ報告の電話を入れたのです。イレーヌは、手短に報告を済ませるとすぐに電話を切り、仕事に戻っていきました。



スーマンとマルコが食事に訪れたのは、近くの馴染みのバーでした。バーには、他の遊び仲間が何人かたむろしていました。すると、そこへ別の遊び仲間が、人気シャンソン歌手・ミレーユ・マチュー(※本人が演じました。)の無料招待券を4枚持って現れます。マルコは、頭痛のため、マチューどころではなかったのですが、相手の押しの強さには勝てず、4枚中3枚を受け取ります。マルコは、イレーヌがルカと2人で映画を観に行く予定を自ら取り消し、家族3人でマチューのコンサートを観に行く事に決めたのです。



マルコ、イレーヌ、ルカの家族3人が暮らすアパルトマンには、まだマルコも、イレーヌも、帰ってきておらず、ルカが暇を持て余していました。ルカの隣では、家政婦が夕食を作っていました。しばらくして、夕食ができ上がり、ちょうど同じタイミングで、マルコが帰宅します。家政婦は、マルコと入れ替わるように帰宅します。そして、家政婦が帰宅の途に就いてすぐに、イレーヌの親友・ジヌーが、若き薬剤師の恋人・ジャン=フランソワと一緒に、アパルトマンを訪ねてきます。2人のすぐ後ろには、仕事を終えて帰宅したイレーヌの姿もありました。ジヌーは、イレーヌにお気に入りのアイシャドーを自慢したり、自ら開発した美容パックをイレーヌに手渡したりすると、ジャン=フランソワと一緒に、風のように去っていきました。マルコたち家族3人は、夕食を早く食べて、マチューのコンサートの会場であるモンパルナス劇場に向かうのでした。



しかし、マルコの頭痛は、昼間から全然治っていませんでした。マルコは、コンサートの真っ最中に、「気分が悪い」とイレーヌに訴え、客席を離れてしまいます。幸い、すぐに客席に戻る事ができたマルコでしたが、イレーヌに「夕食で(胃が)もたれている」と、自らの推測を小声で伝え、先にアパルトマンへ戻ろうとします。しかし、イレーヌは、体調が優れないマルコを一人ぼっちにしてはいけないと考え、家族3人で帰宅する事に決めます。イレーヌは、まだまだマチューの歌を聴いていたかったルカを説得。ルカは、しぶしぶ立ち上がってくれました。こうして、3人は、一緒に帰宅する事ができたのでした。



数日後、マルコは、女性医師・ドゥラヴィーヌ(ミシュリーヌ・プレール)の診察を受けます。マルコが頭痛と眩暈を訴えると、ドゥラヴィーヌは、早速、聴診器を当てます。その結果、心音は正常でした。その後、血圧も測ってみましたが、何も問題ありませんでした。喉の奥に何かできているかどうかも調べてもらったのですが、これといったものは見つかりませんでした。ただ、ドゥラヴィーヌは、マルコの腹部の張りが気になっていました。最初は、太り過ぎなのではと考え、腹部の感触を手で確かめます。しかし、…。「すごく変だわ。」もし、マルコが太り過ぎであれば、腹部をある程度の力で押せば、少しはへこむはずなのですが、ビクともしません。また、マルコに深く深呼吸もしてもらいましたが、息を吸っても、吐いても、腹部の張りは全然変わりませんでした。



マルコは、ドゥラヴィーヌの様子を見て、さすがに不安になり、「本当の事を言ってほしい」と、ドゥラヴィーヌに迫ります。すると、ドゥラヴィーヌは、ぽつりと一言だけ言いました。「奇妙なの。」マルコは、自身の症状をもっと詳しく知りたくて、まるで覚悟を決めたかのような表情で、「真実を言ってほしいんです。」と、再びドゥラヴィーヌに迫ります。すると、ドゥラヴィーヌは、こう告げます。「膨らんでいるの。妊婦みたいに。妊娠4か月ね。」マルコは、なんと、男性でありながら、妊娠しているのです。ドゥラヴィーヌは、マルコに、婦人科の権威と呼ばれる医師・ジェラール(レイモン・ジェローム)を紹介し、診察を受けるよう伝えるのでした…。



ドゥラヴィーヌは、マルコの事を妊娠4か月だと推測していますが、4か月にしては腹部があまりにも膨らみ過ぎています。当時は、たとえ、このように推測が適当であっても、「面白いっ!」と言って、許してくれた人が少なくなかったのかもしれないですね。重箱の隅をつつきたくなる人は、現代と比べたら、まだまだ少なかったのではないだろうかと勝手に思っています。



ところで、「モン・パリ」の意味ですが、これは、モンパルナス劇場のコンサートのシーンで、ミレーユ・マチューがステージ上で歌っていた歌のタイトルです。マチューがアップテンポで朗々と歌っている姿は、本当に見ていて気持ちがいいですよ。



監督・脚本は、「シェルブールの雨傘」(1964年)、「ロシュフォールの恋人たち」(1966年)のジャック・ドゥミ。また、音楽を手掛けたのは、「シェルブールの雨傘」や「ロシュフォールの恋人たち」でドゥミとタッグを組んできた、ミシェル・ルグラン。因みに、ルカを演じたバンジャマン・ルグランは、次男にあたります。



今回、この映画を観て、まず驚いたのは、オープニングタイトルでした。「コメディー映画なのに、こんなにクールな仕上がりでいいのか?」と、衝撃を受けました。キャストたちのカラー映像と、1969年のアポロ11号の月面着陸の様子を映したモノクロ映像とを交互に織り交ぜる事で、この映画のキーワード「男性の妊娠」が、月面着陸並みに珍しいのだという事を表現しているのです。また、映像だけではなく、テーマ曲もクールな仕上がりでした。全体的にアップテンポで、短調でクールに聴かせるメロディー、伸びやか且つ情熱のこもった歌声がとても耳に心地良かったです。



勿論、キャストの演技も、楽しませていただきました。マルチェロ・マストロヤンニ演じるマルコは、まさかのマタニティーライフを過ごす姿が面白かったのは勿論なのですが、それ以上に恐妻家ぶりが印象に残りました。カトリーヌ・ドヌーヴ演じるイレーヌが号泣するのを止めるのに苦労したり、逆に叱られる時にオロオロしたりと、イレーヌの人としての欠点を、自身の恐妻家ぶりで見事に表現していました。また、カトリーヌ・ドヌーヴは、小さなアパルトマンで質素に暮らす美容師の役ではありますが、大富豪をイメージさせるような大きな毛皮のコートを着こなす姿に少々違和感を覚えました。彼女が主役級の女優なのはよく分かりますが、だからといって、あそこまで無理して華のあるファッションに拘る必要が果たしてあったのでしょうか?



さて、イレーヌはただでさえ心配性なのですが、この後、号泣せずにはいられないくらい、マルコの命がどうなってしまうのか、不安でたまらなくなります。と言うのも、近所に住んでいた人で、頭痛が原因で命を落とした人がおり、イレーヌは当時の事をとても鮮明に覚えているからです。「ちゃんと、本当の事を言って。」イレーヌは、涙ながらにマルコに訴えます。マルコの口から前代未聞の事実が飛び出したのは、ジェラールの診察を受ける当日でした。「ずっと、黙っているつもりだったの?」と言って、情緒不安定ながらマルコに付き添うイレーヌは、マルコの口からまさかの事実を告げられ、…。

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