ボブという名の猫 幸せのハイタッチ(2016年 イギリス)

ボブという名の猫 幸せのハイタッチ DVD
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2007年、イギリス・ロンドン。ジェームズ・ボーエン(ルーク・トレッダウェイ)は、かつて、両親の離婚を理由に、ヘロイン中毒に陥っていたホームレスのストリートミュージシャン。昼間は、街角でしゃがみ、アコースティックギターをかき鳴らしながら歌を歌い、夜になると、街のゴミ箱をあさり、食べられそうな食べ物を見つけると、それで飢えをしのいでいました。ある日の晩、ジェームズは、遊び仲間のバズ(ダレン・エヴァンス)に誘われて、鍵をかけ忘れた車の中で一晩を過ごします。翌朝、バズは、「おい!人の車で何をしている?」と厳しい口調で問いかけてくる男性の声で目を覚まします。声の主は、車の所有者でした。女性警察官が駐車違反の切符を切っているところに、この所有者がやって来て、切符を切られるのを止めようとしたのですが、結局できなかったのです。バズは、急いでジェームズを叩き起こそうとしますが、ジェームズはぐっすりと眠ったまま。バズは、起こすのを諦め、1人で逃走します。バズの姿が見えなくなった後、今度は、所有者がジェームズを叩き起こそうとしますが、それでもジェームズはびくともしませんでした。

ボブという名の猫 幸せのハイタッチ Blu-ray
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ジェームズが目覚めたのは、病院のベッドの上でした。あれから、ジェームズは病院に搬送されていたのです。ジェームズは、栄養不足なのは勿論の事、肝炎も発症していました。いつも手元にあるアコースティックギターが見当たらず、動揺するジェームズ。ジェームズを見舞ったソーシャルワーカーのヴァル(ジョアンヌ・フロガット)は、「第1声がそれ?」と呆れ返り、自身がアコースティックギターを預かっている事を伝えます。これまで、ヴァルは、何度も何度もジェームズの素行の悪さに苦しめられてきました。そのため、彼女には我慢の限界が近付いていました。しかし、ヴァルは、ジェームズを見捨てる訳にはいきません。今度、ジェームズが倒れてしまったら、命の危険に晒されてしまうからです。ヴァルは、退院後に自身に会いに来るよう、ジェームズに伝え、病室を出ます。

ボブという名の猫 幸せのハイタッチ
ボブという名の猫 幸せのハイタッチ

数日後、ジェームズは、無事に退院し、ヴァルの元を訪ねます。ヴァルは、ジェームズの周囲に誰か頼れる人がいるのかどうかが心配で、本人に確かめるのですが、残念ながら、そんな人は1人もいませんでした。ヴァルは、薬を処方してもらうようジェームズに伝え、アコースティックギターを返却します。その時、ヴァルは、ジェームズに、アコースティックギターの弾き語りを披露してほしいと要望し、ジェームズはそれに応えます。ヴァルは、ジェームズの顔を真っ直ぐ見つめ、弾き語りに聞き入るのでした。

ボブという名のストリート・キャット
ボブという名のストリート・キャット

ヴァルは、ジェームズの新たな住まいを探そうと、ホームレスの支援団体に掛け合います。支援団体には、ジェームズと同じように、待ったなしの状態で住まいを必要としている人が何人もいましたが、ヴァルは、何としてもジェームズのケースを最優先にしてほしいと考えていました。なぜなのかは、ヴァル自身もよく分かりません。ただ、ピンと来た事だけは確かでした。ジェームズにとって、今が立ち直る最後のチャンスのような気がしてならないのです。

猫の島 (Cat Heaven Island)
猫の島 (Cat Heaven Island)

ヴァルによる尽力の結果、ジェームズは、支援団体の紹介でアパートの一室に住む事になりました。ジェームズが早速アパートに向かうと、ヴァルが笑顔で出迎えてくれました。テーブルを見ると、チューリップが花瓶にさしてあります。水道の蛇口からは、お湯が出ます。また、ヴァルは、ジェームズのために、シリアルとミルクを買っていました。ジェームズは、真新しいソファに腰掛けると、リラックスした表情を浮かべます。ジェームズは、ヴァルに対して、感謝の気持ちでいっぱいでした。そして、更生プログラムに参加する事をヴァルに誓うのでした。



その日の晩、入浴中だったジェームズは、何かの物音に気付きます。ジェームズは、いったんバスタブから出て、物音のする方向へゆっくりと進みます。そして、意を決して部屋のスイッチを入れると、そこには、1匹の茶虎猫がいました。どうやら部屋の窓から侵入したらしく、床に置いたままのシリアルをもぐもぐと食べていました。ジェームズは、茶虎猫を抱き上げ、キッチンのシンクの上に乗せます。そして、平たい皿に注がれたミルクを差し出すと、茶虎猫は黙々と美味しそうに飲みます。やがて、茶虎猫がミルクを飲み干すと、ジェームズは「家族が心配しているだろうから」と、茶虎猫を窓の外に出そうとします。しかし、茶虎猫は、ジェームズの方を振り返り、全く歩き出そうとしません。ジェームズは、茶虎猫を窓の外に出すのを諦め、一晩だけ面倒を見る事にします。



翌日、ジェームズは、茶虎猫を胸元に抱いて、飼い主を探しに出掛けます。しかし、茶虎猫と飼い主との再会は、そう簡単にできるものではありませんでした。ジェームズは、取りあえず、自分で自分の家に帰ってもらう事に決め、アパートの外で茶虎猫を離します。その後、ジェームズは、いつものように、地下鉄の駅の前でアコースティックギターの弾き語りをします。弾き語りをしている間、少しずつではありますが、チップを貰うジェームズ。しかし、そこへ普段からホームレスを毛嫌いする駅長が現れ、「安全上の理由だ」と言って、ジェームズを駅から追い出してしまいます。



ジェームズが駅から追い出されると、視線の先に、長い間疎遠だった父・ジャック(アンソニー・ヘッド)の姿がありました。長いブランクを経ての偶然の再会に、思わず喜ぶジェームズ。しかし、ジャックは、馬の縫いぐるみを抱えていて、何か気まずそうです。ジェームズは、ジャックから近況を尋ねられると、最近、更生プログラムを受けている事を報告します。しかし、ジャックは、ジェームズの努力を認めず、「またか」と、相変わらずの不甲斐なさを嘆きます。しかし、ジェームズは「今度は住む家もあるんだ」と言って、ジャックを安心させようとします。すると、そこへ、ジャックの再婚相手・ヒラリー(ベス・ゴダード)が近付いてきます。ジェームズは、ジャックたちと一緒にクリスマスを祝いたくて、毎年恒例のボーエン家のクリスマスパーティーに参加する旨を伝えます。しかし、ヒラリーは、ジャックと自身との間に生まれた2人の娘たちをジェームズに会わせるのをひどく嫌がり、「もう、行きましょう」とジャックの腕を引っ張ります。ジャックは慌てて紙幣をジェームズに渡し、「新年には呼べるかもしれない」と言い残して、去っていきます。



ジャックの態度に失望したジェームズは、アパートに戻ります。ジェームズが部屋の扉を開けようとすると、猫の鳴き声が聞こえてきます。鳴いていたのは、今朝別れたばかりの茶虎猫でした。茶虎猫は、どこかで喧嘩をしたのか、足に怪我を負っていました。ジェームズは、改めて茶虎猫の飼い主を探します。すると、探し始めてすぐに、アパートの別の部屋に住む若い女性・ベティ(ルタ・ゲドミンタス)が玄関先にいるのを見つけ、飼い主なのかどうかを尋ねます。ベティの返事はノーでしたが、ベティは、動物アレルギーがあるにも関わらず、茶虎猫の足の怪我を気に掛け、ジェームズと茶虎猫を部屋に招き入れてくれました。そして、患部が化膿しているのを見つけて、抗生物質が必要な事、獣医に診てもらう必要がある事を告げ、茶虎猫の居場所がジェームズの部屋である事も見事に見抜きます。さらに、ベティは、ジェームズに、無料の動物病院「動物福祉病院」を紹介し、茶虎猫を受診させる際にベティの紹介である事を言ってもらうよう、伝えます。



ベティは、別れ際に茶虎猫の事を突然、「ボブ」と呼びます。茶虎猫に突然名前が付いたのをジェームズが不思議がると、ベティは、「そう呼ばれたいんだって」と、至ってシンプルな理由を口にします。ジェームズは、「僕の猫じゃないんだけど」と困惑しますが、ベティは、世の中の皆がお互いに助け合って生きる事の大切さを説いて、部屋の奥の方へ引っ込んでしまいます。ジェームズは、ただただベティにお礼を述べます。こうして、茶虎猫は「ボブ」と名付けられ、ジェームズにとってかけがえのない家族として生きていく日々が始まったのでした…。



この映画は、実話を基にしています。2012年にジェームズ・ボーエン本人が執筆し、世界的な大ベストセラーとなったノンフィクション「ボブという名のストリート・キャット」が、原作です。全世界での売上数は、なんと、1000万部を超えたそうです。ジェームズは、路上ライブから卒業し、自宅も購入しました。さらに、自身の人生経験を活かして、ホームレスや動物のための慈善活動に従事するようになりました。因みに、ジェームズは、この映画にカメオ出演をしています。あくまでカメオ出演なので、姿を見つけるのは容易ではありませんが、気になる方は、ぜひトライしてみてはいかがでしょうか。そういえば、出演といえば、ボブ役を演じた茶虎猫は、なんと、ボブ自身!映画の撮影が行われていた当時は、推定11歳だったそうです。毛並みの美しさと丸っこい体型が観る者をうっとりさせます。人間顔負けのハイタッチをする姿もカッコイイですよ。



監督は、「007/トゥモロー・ネバー・ダイ」(1997年)、「シックス・デイ」(2000年)のロジャー・スポティスウッド。また、製作総指揮として、「英国王のスピーチ」(2010年)のティム・スミス、「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」(2011年)のダミアン・ジョーンズが名を連ねています。



この映画を観て思ったのは、ごく普通の人々の弱者への視線の冷たさがとにかくひどい事。日本では考えられない事なのですが、落ちぶれた人間は、真っ当な生き方をする人間から徹底的に無視されるのです。人間が落ちぶれる理由は本人にあるのかもしれませんが、だからといって、無視したり、後ずさりしたり、逃げたり、手加減なしで批判するのは、日本人の私から見て、やり過ぎな印象があります。この映画の場合、ジェームズは、父親・ジャックからも、母親からも、何度もジェームズに裏切られてきたというソーシャルワーカー・ヴァルからも、疎まれています。ジェームズは、自身の事を正直に語ろうとすると、彼のこれまでの歩みが歩みなだけに、全く話を聞いてくれません。彼らは、ジェームズに改善の見込みがほぼないと分かったつもりになっているのです。落ちぶれた人間に対する批判は、何でもありという訳ではありません。また、この映画は、ジェームズがボブと出会うシーンをはじめ、ボブを見つめるジェームズの視界と、ジェームズを見つめるボブの視界が交互に出てくるカメラワークが大きな特徴となっています。ジェームズとボブ、それぞれの目の高さから見る日常の景色の違いがとてもリアルで、とても楽しいですよ。



この後、ジェームズの家族となったボブは、ずっとジェームズについて回ります。ロンドンの街ですれ違う人々は、ジェームズの肩に乗るボブを一目見て、「かわいい」の大連発。ジェームズがアコースティックギターをかき鳴らす時も、ボブはずっとジェームズと一緒。ジェームズの前に座ったり、ジェームズの肩の上に乗ったりするボブのかわいらしさの虜になった人々が次第に増えていきます。ボブは、もう本当にかわいいですよ。普段は犬派である私が言うんですから、間違いありません!



早くもハッピーエンドのような盛り上がりを見せるこの映画。しかし、世の中はそんなに甘くありません。ジェームズの身に悲劇が起こったり、次々と災難が降りかかったりします。その度に、ジェームズは、立ち直りかけた心を落ち潰されそうになります。ジェームズは、苦難の数々をどう乗り越えるのでしょうか。ボブは、そんなジェームズをどう支えていくのでしょうか。そして、路上ライブでのジェームズとボブを見守るファンの中に、幸運の女神と呼ぶべき女性が。彼女の名は、メアリー(キャロライン・グッドオール)。ジェームズとボブに幸せをもたらしたのは勿論の事、この映画の誕生にも大きく関わる事になります。一体どういう事なのでしょうか?

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