日の名残り(1993年 アメリカ・イギリス)

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1958年、イギリス・オックスフォードシャー。広大な面積を誇る屋敷「ダーリントン・ホール」で働く老執事・スティーブンス(アンソニー・ホプキンス)の元に、かつてメイド頭を務め、結婚を機に退職したサリー・ケントン(エマ・トンプソン)から一通の手紙が届きます。サリーは、結婚して、名字をケントンからベンに改めていました。サリーからの手紙は、ダーリントン卿(ジェームズ・フォックス)の訃報を知らせるものでした。手紙によると、故人が生前に暮らした「ダーリントン・ホール」は、後を継いだ伯爵によって売却されてしまいました。サリーは、売却された後に、新聞でこの事実を知りました。しかし、「ダーリントン・ホール」は、なかなか買い手が付きませんでした。そこで、伯爵は、建物を取り壊し、バラバラにした石材を売るだけでなく、故人が所有していた絵画も、次々にオークションに出品します。伯爵による努力の結果、「ダーリントン・ホール」は、アメリカの富豪・ルイス(クリストファー・リーヴ)が購入しました。ルイスは、アメリカで下院議員を務めていた1936年に、「ダーリントン・ホール」で開かれた会議に出席し、今は政界を引退しています。スティーブンスは、ルイスが主になった後も、「ダーリントン・ホール」に留まるつもりでした。

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手紙の中で、サリーは、メイド頭として働いていた時代を回顧していました。サリーは、仕事中、スティーブンスから次元の高い要求をされてばかりいて、さんざん苦労させられていました。しかし、「今思えば、とても幸せな時間だった。」と、スティーブンスに感謝していました。また、サリーは、手紙の中で自身の近況についても記していました。サリーは、7年前にスティーブンスに手紙を出した後、夫・トム(ティム・ピゴット・スミス)と再び折り合いが悪くなり、別居し始め、もはや破局は時間の問題となっていました。今、サリーは、クリーブダンに建つ下宿で1人で暮らしています。サリーは、1年前に娘・キャサリンが結婚し、それ以来、生き甲斐を失っていました。

日の名残り (字幕版)
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スティーブンスは、今も、日々、人一倍厳しい姿勢で仕事に臨んでいますが、「ダーリントン・ホール」で働く使用人の数は、昔と比べてかなり減っていました。大きな屋敷の中で大勢の使用人が働く時代は、もう終わったのでしょうか。いいえ、そんな事はありません。実際に、仕事の量は、今も昔もほとんど変わりません。それにも関わらず、使用人の数はかなり減り、使用人一人一人が昔よりも忙しくなってしまい、人手不足が大きな課題となっているのです。そんな時に新たに主となったルイスは、アメリカから一人で引っ越してきたのですが、将来的には、アメリカに残っている家族も一緒に暮らすつもりでいました。

日の名残り (ハヤカワepi文庫)
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ある日、スティーブンスは、ルイスの朝食の用意をしていた時に、最近、ルイスから「休暇を取り、郊外を旅しては」と提案された事をふと思い出します。スティーブンスは、来週、ロンドンに出掛けるというルイスが、愛車であるドイツ車の使用許可を出した事から、景色のいい西部を旅する事にします。西部の海の近くまで行くと、サリーが暮らしている町・クリーブダンがあります。最近、「ダーリントン・ホール」で人手不足に悩まされているスティーブンスは、サリーに再び「ダーリントン・ホール」で働いてほしいと考えていました。

The Remains of the Day
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約1週間後、スティーブンスは、ルイスの愛車を借り、クリーブダンに向けて出発しました。まだロンドンに出発する前だったルイスは、自身の愛車に乗って、「ダーリントン・ホール」を離れていくスティーブンスを、後ろからカメラで撮影していました。スティーブンスがサリーの暮らす下宿に着くのは、10月3日4時ごろの予定。もし、それまでの間に、サリーがスティーブンスと連絡を取りたい場合は、スティーブンスが旅の途中で立ち寄る事になっているコリンボーンの郵便局へ電報を送る事になっています。



スティーブンスがサリーと出会ったのは、1936年。ダーリントン卿が近くに住む人々を招く最後の日となったキツネ狩りの日の事でした。ダーリントン卿は、狩りがあまり好きではありませんでしたが、友人たちに頼まれて、キツネ狩りを催したのです。サリーは、自転車に乗って、予告もなく、突然、「ダーリントン・ホール」にやって来ました。サリーは、最初、スティーブンスとの面接に臨みました。サリーが持参した推薦状は、スティーブンスの目から見て申し分のないものでしたが、スティーブンスはサリーの年齢が若かった事が心に引っ掛かりました。なぜなら、わずか1か月前に、メイド頭を務めていた女性が副執事と駆け落ちをするトラブルがあったからです。しかも、このような類のトラブルは、1度きりではありませんでした。「ダーリントン・ホール」では、以前から、恋愛に関するトラブルを起こすメイド頭がとても多いのです。そのため、スティーブンスは、恋愛相手を求めるためだけに職場を渡り歩く人間を嫌っていました。サリーは、「使用人が同時に辞めては困りますもの。」と、スティーブンスの考え方に理解を示しました。また、副執事の後任は、スティーブンスの父・ウィリアム(ピーター・ヴォーン)に決まりました。ウィリアムは、54年の長きにわたって給仕を続けてきましたが、75歳となった今、「副執事で構わない。」と、息子と同じ屋敷で働く事を望んだのです。



こうして、サリーとウィリアムが「ダーリントン・ホール」で働く日々が始まりました。サリーは一つ一つの仕事を真面目にこなしていましたが、スティーブンスの物の考え方を理解するのに苦労していました。例えば、調度品の置き方はまだ序の口で、サリーが庭で花を摘み、花瓶に生けてスティーブンスの部屋に運んだ時は、「気が散ってしまう。」と断られてしまいました。また、サリーがウィリアムの事を「ウィリアム」と呼んだ時には、スティーブンスがサリーの事を「恋人ができたのでは?」と怪しみ、ウィリアムの呼び方を「スティーブンスさん」、若しくは、「年長のスティーブンスさん」に変えるよう求めたのです。サリーは、その都度、スティーブンスに理由を尋ねましたが、サリーが納得できるような返事は帰ってきませんでした。



一方、ウィリアムは、「ダーリントン・ホール」で働き始めて早々、体調を崩します。呼吸が荒く、汗が止まらないのです。ウィリアムは、体調が優れない中、階段での掃き掃除や、決められた調度品の用意を、ゆっくりとしたペースで進めます。しかし、塵取りや箒を階段に置きっ放しにしたり、決められた調度品ではなく、間違えて中国人形を用意してしまったりと、仕事を正確に行う事ができません。サリーは、そんなウィリアムの様子を何度も目撃し、スティーブンスにウィリアムの仕事の内容を見直すよう求めます。しかし、スティーブンスは、サリーが生意気な口を利いているようにしか思えず、相手にしようとしませんでした。



そんなある日、ウィリアムが、食器類を抱えたまま、庭で倒れてしまいます。食器類を落とす音に気付いたダーリントン卿は、来客と一緒にウィリアムに駆け寄り、クッションをウィリアムの後頭部の下に置き、毛布を掛けます。スティーブンスもすぐに駆けつけて、ダーリントン卿に謝罪し、医師を呼びに行きます。幸い、ウィリアムは一命を取り止めましたが、ダーリントン卿は、近々「ダーリントン・ホール」で開く予定の重要な会議でウィリアムが失態を演じるのではないかと心配し、スティーブンスに仕事の量を減らす事を提案します。会議には、フランスから大物政治家のデュポン(マイケル・ロンズデール)が、アメリカからはルイスが出席する予定になっており、いつも以上に失敗が許されないのです。スティーブンスは、何も反論する事なく、提案を受け入れ、会議当日の給仕を若い使用人のヒューに任せる事にします。しかし、この判断は、ウィリアムのプライドを傷付ける事になってしまうのです…。



この映画は、1993年に第66回アカデミー賞で、作品賞、監督賞、主演男優賞(スティーブンス役のアンソニー・ホプキンス)、主演女優賞(サリー役のエマ・トンプソン)、美術賞、衣装デザイン賞、作曲賞、脚本賞にノミネートされました。原作は、2010年に映画化された小説「わたしを離さないで」で知られるノーベル文学賞作家のカズオ・イシグロが発表した同名タイトルの小説です。もともとテレビドラマ用の脚本だったものが、イシグロの手によって小説化されたものです。メガホンを取ったのは、ジェームズ・アイボリー監督。「眺めのいい部屋」(1986年)、「ハワーズ・エンド」(1992年)が有名です。



エマ・トンプソン演じるサリーは、父・ウィリアムと同じように執事となり、長い間キャリアを積んできたスティーブンスに対して、全く物怖じせずに自分の意見を言う姿が、実に気持ち良かったです。さばさばした感じの役柄がとてもよく似合う女優だと思いました。また、アンソニー・ホプキンス演じるスティーブンスは、貴族たちが政治談議をしているシーンで控えめな態度を貫く姿が実に美しく、見事に執事になり切っているなあと感じました。しかし、物語の後半で、そんなスティーブンスの基本姿勢を崩そうと容赦なく追い詰める若き新聞記者が現れます。演じるのは、ヒュー・グラント。眼鏡をかけている設定のせいか、グラントだと気付く事ができず、本人には申し訳なかったです。しかし、ホプキンス演じるスティーブンスを容赦なく追い詰めていく様子はとても見応えがありました。



最初は、自身の長年の経験を信頼し過ぎているスティーブンスに全くもって相手にしてもらえないサリー。しかし、この後、ウィリアムの身に起こる出来事がきっかけで、両者はお互いに心から信頼し合う間柄に変わっていきます。その過程はとても胸が熱くなりますよ。そして、長い年月が経ち、スティーブンスは、いよいよサリーと再会します。サリーは、スティーブンスの望み通り、「ダーリントン・ホール」に戻ってくれるのでしょうか。そして、そして、再会の時間はあっという間に過ぎていき、お別れの時がやって来ます。スティーブンス、そして、サリーは、別れ際にお互いの事をどう思うのでしょうか。

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