終電車(1980年 フランス)

終電車 Blu-ray
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1942年9月、フランス・パリ。フランスは、この時から遡る事2年前に、パリを含む北部がドイツ軍に占領されていました。占領された北部は占領地区と呼ばれ、占領されていない南部は自由地区と呼ばれていました。当時、国民は、昼間は、食料を求めて何時間も行列に並び、夜になると、気温が低くなるため、劇場や映画館に入って、暖を取っていました。どの劇場も、どの映画館も、常に暖を取りに来た人々で満席となるため、予約を取るのは困難でした。そして、夜11時以降は、外出が禁止されるため、人々は、終電車に乗り遅れないよう、細心の注意を払っていました。

終電車〔フランソワ・トリュフォー監督傑作選6〕 [DVD]
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パリにある劇場の一つ、モンマルトル劇場は、支配人のルカ・シュタイナー(ハインツ・ベネント)が、自身がユダヤ人である事を理由に、国外へ逃亡していました。ルカは、「アメリカへ行ったのではないか」と、世間で噂されていましたが、実際には、南米大陸に行っていました。とにかく、ルカにとって、国外への逃亡は、苦渋の選択だった事だけは確かでした。ルカがいなくなってしまった後、劇場は、妻のマリオン(カトリーヌ・ドヌーヴ)が取り仕切っていました。マリオンは、ユダヤ人俳優の雇用の問題や上演演目の検閲という問題と向き合いながら、劇場を守り続けていました。

終電車 - ARRAY(0xd7e6918)
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パリの街で、若手俳優のベルナール・グランジェ(ジェラール・ドパルドゥー)が、自身より年上と思しき女性・アルレット(アンドレア・フェレオル)に、「聞きたい事がある」と、声を掛けています。この場所の近くに住んでいるというベルナールは、アルレットに、時間を尋ねている訳でもなく、道に迷っている訳でもありません。たまたま、ベルナールが電話を掛けていたら、アルレットが通り掛かり、瞳の美しさや顔の表情に惹かれてしまったというのです。ベルナールは、「誤解しないでほしい」と言って、アルレットから信頼を得ようとしていますが、ベルナールのしている事は、どこからどう見てもナンパです。アルレットは、懸命にベルナールを払いのけようとしますが、ベルナールは、実に4年ぶりとなるナンパを成功させたくて必死です。ベルナールは、せめてアルレットの名前と電話番号を聞き出せたらと思い、ここで初めて自身の名前を名乗ります。しかし、アルレットはここで騙される訳がなく、「電話番号を伝える」と言って、フランスの時報の番号を伝え、ベルナールがメモをとっている間に、姿を消したのでした。



一方、同じパリの別の場所では、幼い少年・ジャコが一人で街を歩いていました。ジャコは、ルカとマリオンとの間に生まれた子でした。ジャコは、通りかかったドイツ兵に髪を軽く触られたところで、普段、ジャコの世話をしている女性に声を掛けられます。ジャコがドイツ兵に髪を触られた事を話すと、女性は、「家で髪を洗わないとね」と言って、ジャコの手を握ります。ジャコは、その瞬間、いきなり女性の手を振りほどき、走り出そうとしますが、すぐに女性に捕まってしまうのでした。



ジャコが女性と一緒にその場を去った後、同じ場所に、ナンパに失敗してしまったベルナールが通り掛かります。ベルナールは、目の前にあるモンマルトル劇場に入るところでした。しかし、残念ながら、正面玄関から入る事ができませんでした。次に、ベルナールは、裏にある管理人室の出入口から劇場に入ろうとします。しかし、ここも閉まっていました。しかし、管理人室には、灯りが付いています。誰かが中にいるのは間違いありません。ベルナールは、管理人室のガラス窓を叩き、一人の女性に、「劇場の方と約束している」と、声を掛けます。女性は、中でベルナールの髪を洗っていました。そう、この女性は、ジャコと一緒にいた、あの女性でした。女性は、「裏の楽屋から入って。」とベルナールに伝え、ベルナールは、ようやく楽屋から劇場に入る事ができました。楽屋の出入口には、ベルナールが約束をしていた男性・レイモン(モリス・リッシュ)の姿がありました。レイモンは、ベルナールを事務所に案内してくれました。



ベルナールは、途中、劇場の理事で、金銭の管理もしているメルラン(マルセル・ベルベール)とすれ違い、事務所に到着します。ベルナールは、案内された事務所の中で、マリオンが来るまで、しばらく待つ事になりました。ベルナールが客席の模型や劇場に出演した俳優の写真に夢中になっていると、マリオンがメルランと一緒に入ってきます。マリオンとメルランは、劇場に出演しているユダヤ人俳優・ローゼンの身分証や労働許可証の事で、口論になりかけていました。これまで、マリオンたちは、自分たちのコネを使ったり、偽物の身分証を発行したりして、ローゼンと契約をする事ができました。しかし、事情が変わり、これからはそういう訳にはいきません。メルランは、どうにかローゼンとの契約を延長できる方法を模索しますが、マリオンは、断腸の思いで、契約の打ち切りを決断します。メルランは、これ以上、自分の意見を押し通す事ができませんでした。このやりとりの一部始終を遠くから見つめていたベルナールは、ユダヤ人差別に抗議するため、モンマルトル劇場を去ろうとします。しかし、かねてからベルナールの評判の高さを知っていたマリオンは、その場で一方的にベルナールと契約を結んでしまいます。契約するにあたり、ベルナールは、契約書にサインをします。そこには、祖父母も両親もユダヤ人ではない旨が書かれてありました。



ベルナールは、早速、劇場の舞台で、女優・ナディヌ(サビーヌ・オードパン)らと一緒に、戯曲「消えた女」の稽古に臨みます。「消えた女」は、もともと、ルカが翻訳したノルウェーの戯曲で、ルカが自ら演出する予定でしたが、ルカがいなくなってしまったため、俳優のジャン=ルー(ジャン・ポワレ)が代わりを務める事になっていました。出演者たちが台本を片手に稽古を進めていると、そこへ、美術と衣装を担当する女性が入ってきます。女性は、街でベルナールにナンパされたアルレットでした。アルレットは、ベルナールの顔を見ると、ナンパされた時の記憶が一気に蘇り、怒りに満ちた表情を見せます。一方、ベルナールは、全く罪悪感が見られませんでした。



ところ変わって、パリ市内のホテル。マリオンは、このホテルの一室でルカと一緒に暮らしていましたが、ルカがいなくなった後も、引き続き一人で暮らしていました。この日、マリオンは、正面玄関から入ってすぐのところで、ベテラン脚本家・バランタンと再会します。バランタンは、マリオンに、「フロントに原稿を預けてあるので、読んで感想を聞かせてほしい。」と伝え、その場を去っていきます。マリオンは、早速、フロントで原稿を受け取りますが、フロント係の男性に別室に案内されます。ルカがパリにいない事をまだ知らない人たちから、ルカ宛に手紙が何通か届いていたのです。マリオンは、夫に代わって、手紙を受け取ります。その後、マリオンは、部屋に入ると、マリオンの下で働くメイドから、昼間に記者が写真撮影に来た事を聞かされます。メイドは、マリオンが不在である事を伝えましたが、記者は「スターの自宅」という特集に使える写真を撮るため、その場で一方的に写真撮影を始めようとしました。しかし、メイドが、マリオンから許可を受けた後で撮影をするよう伝えると、撮影を一切行わずに去っていきました。マリオンは、メイドの機転に感謝します。



翌日、ナディヌが「消えた女」の稽古に1時間も遅刻します。劇場の外で、「ナディヌに何かあったのではないか。」と心配していたレイモンは、ドイツ兵の運転する車で堂々と劇場に入ってきたナディヌの姿を見て、怒りを露わにします。客席でナディヌを待っていたジャン=ルーやマリオンも、レイモンと同じ感情を抱いていました。ナディヌは、ジャン=ルーから遅刻した理由を問われ、自身の置かれた状況を説明します。ナディヌは、朝はラジオの仕事、昼になると録音の仕事、日が暮れると、今度は国立劇場の仕事をしていました。さらに、木曜になると、子ども向けの演劇教室で子どもたちに演技を教えていました。どれも、仕事に繋がるコネを作るためでした。ナディヌは、解雇を覚悟しますが、幸いな事に解雇を免れます。



その日の夜。マリオンは、ランプを持って、たった一人で劇場の地下へ向かいます。そして、一枚の扉を開けると、そこには、一人の男性の姿がありました。その男性は、なんと、南米大陸にいるはずのルカでした。実は、ルカは、既に国外へ逃亡したのではなく、劇場の地下に潜んで、本当に国外へ逃亡できるチャンスを窺っていたのです。ところが、ある日、ルカがパリにいる事実が外に漏れてしまいます。「消えた女」の脚本の検閲をした批評家のダクシア(ジャン・ルイ・リシャール)が、わざわざ劇場を訪れ、マリオンにそう伝えたのです。これまで、マリオンが徹底的に秘密を守ってきたはずが、なぜ、こんな事になってしまったのでしょうか…。



メガホンを取ったのは、「大人は判ってくれない」(1959年)、「突然炎のごとく」(1961年)等で有名なフランソワ・トリュフォー監督。「終電車」は、トリュフォー監督最大のヒット作です。1980年に、第53回アカデミー賞で、外国語映画賞にノミネートされただけでなく、翌年の第6回セザール賞(※フランス映画界で、最も権威のある賞。)で、作品賞、監督賞、脚本賞、撮影賞、録音賞、編集賞、美術賞、音楽賞、男優賞(ベルナール役のジェラール・ドパルドゥー)、女優賞(マリオン役のカトリーヌ・ドヌーヴ)と、なんと、10冠を達成しました。



この映画を観て、印象に残ったのは、オープニングタイトルです。真っ赤に染まった画面が、とても鮮やかなんです。オープニングテーマ曲に使われているのは、1942年にリュシエンヌ・ドリールが発表したシャンソンの名曲「サンジャンの私の恋人」。哀愁漂うアコーディオンの音色と、恋い焦がれる男性に身も心も愛されたい女性の情熱を表現した歌詞が、真っ赤な画面にとてもよく合い、大人の女性たちの心を鷲掴みにします。この曲を聴くと、女性は、恋愛関係において、受け身である事に喜びを感じるのだという事を、再認識させられます。また、マリオンを演じたカトリーヌ・ドヌーヴのオーラも、印象に残りました。たとえ、パリがドイツ軍の占領下にあっても、舞台の上で生きる人間としてのプライドを無くさない女性を見事に演じ切っていました。毅然とした立ち姿や、ファッション、髪形から、物凄くオーラを感じました。



さて、ルカがパリに留まっている事が外に漏れてしまい、突然、命の危険に晒されるルカとマリオン。これによって、ベルナールは、影が薄くなってしまったように感じられますが、実は、そんな事はありません。ベルナールがモンマルトル劇場にやってきた一番の目的は、「消えた女」への出演ではなく、ある理由で、マリオンに近付くためだったのです。ベルナールは、目的を達成するために、必ず劇場の外で様子を見守る仲間のクリスチャン(ジャン・ピエール・クライン)の力を借りて、マリオンの人物像を調べていきます。マリオンに近付く理由とは、一体何なのでしょうか?また、ナディヌやアルレットも、誰にも言えない、ある秘密を抱えていました。ある日、マリオンは、この秘密を思わず目撃してしまいます。この時のマリオンの心境とは?さらに、「消えた女」の稽古中にナディヌの鞄が盗まれる事件が発生し、劇場の人たちはマリオンに警察へ通報する事を勧めます。しかし、マリオンは、ルカの事を考えると、警察の介入を受け入れる訳にはいきません。これらのような紆余曲折を経て、いよいよ、「消えた女」が開幕します。後半も、見どころ満載の映画です。ぜひ、最後まで楽しんでいただけたらと思います。

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