マネー・ピット(1986年 アメリカ)

マネー・ピット [DVD]
マネー・ピット [DVD]

ブラジル・リオデジャネイロで、ある年の差カップルの結婚式が行われています。新郎は、白髪のダンディーなアメリカ人弁護士ウォルター・フィールディングSr.(ダグラス・ワトソン)。新婦は、まだ少女の面影があるブラジル人・フロリンダ(ティッチー・アグバヤーニ)。真っ白なサンバの衣装に身を包んだ女性が神父の役割を担い、2人は誓いの言葉を述べます。そして、最後にキスを交わすと、大勢のダンサーが集まり、リズミカルな演奏に合わせて、サンバを踊り始めます。しかし、ウォルターSr.には、一つ残念な事がありました。アメリカ・ニューヨークでロックバンドをクライアントに持つ弁護士で、息子のウォルターJr.(トム・ハンクス)が参列してくれなかったのです。実は、ウォルターSr.は、ある事情で、お金を持ち逃げして、リオデジャネイロに渡りました。残されたウォルターJr.は、ウォルターSr.の後始末をする羽目になり、それ以来、父子は、折り合いが悪いのです。ウォルターJr.は、ニューヨークで派手な暮らしぶりを貫いてきたウォルターSr.を反面教師にして、月並みな男になる事をずっと目指してきました。

MONEY PIT
MONEY PIT

無事に結婚式を終えたウォルターSr.は、息子に絵葉書を送りました。絵葉書には、フロリンダとのツーショット写真を載せ、「ニューヨークに戻るつもりはない」とのメッセージを記しました。絵葉書を受け取った息子は、一流の弁護士として有名な自分の父が親子ほど年の離れた女性と生涯を共にする決意をしたのが、どうしてもだらしないように思えて仕方がありませんでした。彼の隣で絵葉書を見ていた、恋人でヴィオラ奏者のアンナ(シェリー・ロング)は、写真に写るフロリンダの顔を「美人よね」と言いながら見つめていましたが、彼は、フロリンダの事をとても良くは思えませんでした。



絵葉書が届いた日の翌日、ウォルターJr.は、アンナにプロポーズします。アンナは、ウォルターJr.を心から愛していました。しかし、アンナが望んでいるのは、あくまで事実婚でした。アンナは、一度離婚した経験があるため、婚姻届に縛られるのではなく、お互いにお互いを愛する気持ちさえあればいいと考えているのです。アンナは、ウォルターJr.との話し合いの末、結局、返事を保留する事にしました。ところが、アンナが返事を保留する決意をしたその瞬間、2人は、今まで聞いた事のない男性の声に気付きます。しかも、男性の数は1人ではありません。一体、何人の男性がこの建物に入ってきたのでしょうか?そして、何の目的で入ってきたのでしょうか?

そして、ついに、1人の男性が大勢の男性を引き連れて、ウォルターJr.とアンナがいる部屋の扉を開けます。大勢の男性が勝手に家財道具を置いていく中で、彼らを引き連れてきた男性はこう言いました。「名指揮者が戻ってくる。」名指揮者とは、アンナの元夫・マックス(アレクサンダー・ゴドノフ)の事。アンナが今から1年前に離婚した際、マックスは演奏旅行のためにヨーロッパへ旅立ち、アンナは、離婚から1年以内に新居を見つける約束で、マックスと暮らしたこのアパートに留まっていました。しかし、新たに、ウォルターJr.と交際するようになり、やがて、このアパートで同棲生活を送るようになりました。しかし、約束の1年が経過しても新居は見つからず、そんな中、マックスが帰国し、ウォルターJr.とアンナ、マックスの3人が、同じ屋根の下で生活しなければならなくなってしまいました。ウォルターJr.は、マックスが戻ってくる前に、自分たちがアパートを出ていく旨を男性に伝え、いったん、男性にアパートを出ていってもらいます。



しかし、ウォルターJr.には、すぐに新居を見つけられる自信がありませんでした。ニューヨークでは、お金持ちにとっても、そうでない人にとっても、住む場所を見つけるのは、とても大変な事。ウォルターJr.たちの場合は、後者です。しかし、ウォルターJr.には伝手がありました。ウォルターJr.の伝手とは、不動産屋で働く友人・ジャック(ジョシュ・モステル)の事。ウォルターJr.は、早速、ジャックに連絡を入れ、会う約束をします。一方、アンナは、所属するオーケストラの練習会場に向かっていました。ちょうど、集合時間ピッタリで練習会場に到着したアンナ。すると、そこへマックスがブロンドの長髪をなびかせて現れます。実は、マックスは、アンナが所属するオーケストラの指揮者。元夫婦が同じ場所にいるという状況に、当事者たちはもちろん、同じオーケストラのメンバーたちも、全く動揺する様子はありません。こうして、オーケストラの練習が静かに始まるのでした。



一方、ウォルターJr.は、指定されたビルの屋上でジャックと会っていました。ジャックは趣味のジョギングで汗を流していました。ジャックは、走りながらこう尋ねます。「金曜の夕方までに20万ドル作れるか?」ウォルターJr.は、「全財産はたけば、昼飯はおごれるかも。」と、答えます。すると、次の瞬間、ジャックが倒れ、救急搬送されてしまいます。幸い、ジャックは、救急車の中で横になると、症状が落ち着きました。実は、ジャックにとって、救急搬送は、この5か月間でなんと7回目。ジャックは、このパターンにすっかり慣れていました。ジャックは、横になったまま、一緒に救急車に乗ってくれたウォルターJr.を相手に商談を始めます。ジャックは、100万ドルもする家を20万ドルで売ろうと考えていました。ジャックが「20万ドル作れるか?」とウォルターJr.に尋ねたのは、こういう事だったのです。

その頃、アンナは、レストランでマックスと食事をしていました。離婚した事でアンナがすがすがしい気持ちになっているのに対して、マックスは離婚して1年が経ってもまだアンナに未練があり、復縁を望んでいました。しかし、今、アンナにはウォルターJr.がいます。しかし、アンナを諦めきれないマックスは、ウォルターJr.の事を「彼は音楽家じゃない」と、見下します。



ある日、ウォルターJr.はアンナと一緒に、ジャックが紹介してくれた家を見学しに行きます。そこは、昔ながらの大きな屋敷で、大きな庭があり、夫・カルロス(ジョン・ヴァン・ドリーレン)に先立たれた老婦人・エステル(モーリン・ステイプルトン)が一人で暮らしていました。エステルは、ウォルターJr.たちを温かく出迎えます。エステルは、「(家自体だけでなく)家財道具も売っていい。」と言ってくれました。しかし、この家は、老夫婦が長い間暮らしてきただけあって、老朽化していました。階段は、エステルが修理を先延ばしにしているうちにもろくなり、昇り降りするのがとても怖いくらいになっていました。やがて、夜になり、エステルはウォルターJr.たちを愛車に乗せて、最寄りの駅まで送り届けてくれました。その時、エステルが、奇妙な発言をします。「夫は金曜に送還されるから。」カルロスは既に亡くなっているはずのに、なぜ帰ってくるのでしょうか?アンナは、エステルと一緒に2階の寝室にいた時に、真相を教えてもらっているようなのですが。



駅で列車を待つ間、ウォルターJr.は、今日訪ねた家を甚く気に入り、購入する決意をします。アンナも、「(購入費用の)半分を出す。」と、賛成してくれました。アンナは、マックスと離婚した際に手に入れたお金から購入費用を用意するといいます。では、ウォルターJr.の方は、どうするのでしょうか。ウォルターJr.には、ジャックとは別に伝手がありました。その伝手とは、ウォルターJr.が弁護士として関わっている、10代にしてスーパースターの青年・ベニーでした。ウォルターJr.は、ベニーが住む豪邸を訪ね、「200万ドルを貸してほしい」と頼みます。最初は頑なに拒むベニーでしたが、ウォルターJr.が脅すような口調であれこれ恩を着せると、ようやく首を縦に振ります。こうして、ウォルターJr.たちは、エステルがカルロスと暮らした家を購入する事ができたのです。



しかし、実際にウォルターJr.たちが住み始めてみると、問題が次々に発覚します。玄関の扉は明かず、呼び鈴を鳴らそうとすると火花が飛び散り、アンナが寝室のベッドに寝転ぶと、体が完全に沈んでしまうだけでなく、沈んだ体の上に、剥がれた天井の一部が落ちてきます。アンナがバスタブの蛇口をひねると、水ではなく、ドロリとした泥が出てきます。クローゼットに取り付けてあるバーは、指一本触れただけで、いとも簡単に落ちてしまいます。また、ウォルターJr.は、階段の修理もしなければなりません。釘を打つ事に不慣れなウォルターJr.は、トンカチで釘を打つと、斜め向きに刺さったり、自身の指を刺してしまったりと、見るからに危なっかしい様子。2人の新生活は、前途多難のようです。しかし、この段階で発覚した問題の数々は、ほんのまだ序の口でした…。



この映画のタイトルになっている「マネー・ピット」とは、「金食い虫」の事。ウォルターJr.とアンナが新生活を始めたこの大きな新居は、正真正銘の欠陥住宅で、住めば住むほど修理費用が上がっていく、まさに、金食い虫です。この後、この新居では、キッチンで電線がショートしたり、バスタブが置かれた2階の床が抜け落ちたり、修理中の階段が跡形もなく崩れ落ちたりと、悪夢の連続です。幾度も悪夢に巻き込まれるウォルターJr.役のトム・ハンクスは、体を張った熱演で観る者を笑わせてくれます。物語の後半になると、階段や足場などで家中を滑り落ち、庭の下り坂を豪快に滑り落ちていくという、迫力あり、笑いありのシーンが、彼を待っています。



そんな笑いどころ満載のこの映画で製作総指揮を務めたのは、「ジョーズ」(1975年)、「E.T.」(1982年)のスティーヴン・スピルバーグ。「スピルバーグって、コメディー映画を作った事があるの?」と、驚かれる方がいらっしゃるかと思います。私も、この事実を知った時は、大変驚きました。こんなに笑いに徹したスピルバーグ映画は、今まで全く観た事がありませんでした。思わぬ掘り出し物を見つけた気分です。監督を務めたのは、リチャード・ベンジャミン。1975年に、「サンシャイン・ボーイズ」で、第33回ゴールデングローブ賞助演男優賞を受賞した俳優です。



この映画は、ウォルターJr.とアンナの新居で起きる悪夢に目が行きがちですが、他にも、注目ポイントがあります。アンナの元夫・マックスの抱く未練は、どうなるのでしょうか。また、夫・カルロスを亡くしているはずのエステルに、なぜカルロスが帰ってくるという確信があるのでしょうか。これらの答えは、ぜひDVDで!

マネー・ピット [DVD]
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暗黒街のふたり(1973年 フランス・イタリア)

暗黒街のふたり HDリマスター版 [DVD]
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フランスには、ギロチンが2つ存在するといわれています。1つはパリにあるもの、もう1つはフランス国内の各地方を巡回するものです。フランスで保護司として働くカズヌーブ(ジャン・ギャバン)は、1946年から27年間、多くの不良少年を更生させてきました。そして、ずっと、法を信じて生きてきました。しかし、ある事件によって、法に裏切られてしまいました。まさか、こんな事が起こるなんて。

暗黒街のふたり ブルーレイ版 [Blu-ray]
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ある日、カズヌーブは、パリにある刑務所を訪れていました。10年前に銀行強盗の首謀者として逮捕され、ここで服役しているジーノ・ストラブリッジ(アラン・ドロン)の仮釈放を判事に求めるためでした。ジーノの刑期は、あと2年でした。しかし、判事や刑務所長は、「もう外に出す気かね。12年でも軽すぎる。」と反対します。ジーノは、非常に頭の切れる人物として知られ、判事たちは、ジーノがカズヌーブに取り入ったのではないかと心配しているのです。カズヌーブは、「恩赦の時期でもあり、ジーノを社会復帰させたい。」と、真っ向から反論します。カズヌーブは、社会を恨んでいるように思われているジーノにも、優しい一面があると分かっているのです。それに、既に職業訓練も受けており、妻・ソフィー(イラリア・オッキーニ)も、花屋を営む傍ら、毎週、面会に訪れ、家で夫の出所を待っています。しかし、どんなにカズヌーブが反論しても、判事たちの不安は払拭されません。カズヌーブは、27年間に及ぶ実績をアピールし、ジーノの社会復帰に責任を持つ事を宣言します。判事たちは、それでもまだ不安が残っていましたが、カズヌーブの言葉や実績を信じるしかありませんでした。

赦すことと罰すること―恩赦のフランス法制史―
赦すことと罰すること―恩赦のフランス法制史―

1週間後、ジーノは、カズヌーブの尽力で仮釈放されます。ジーノが刑務所の門を出ると、ソフィーが待っていました。ソフィーはジーノに駆け寄り、力いっぱい抱きしめ、キスをします。さらに、カズヌーブも車で迎えに来てくれていました。カズヌーブは、2人を車に乗せ、自宅に送り届けます。その背後には、ジーノの過去を知るマルセル(ビクトル・ラヌー)、ジャノらが車で後を付けていました。

保護観察とは何か: 実務の視点からとらえる
保護観察とは何か: 実務の視点からとらえる

ある日、マルセルは、ジーノに会うため、ソフィーが営む花屋を1人で訪れます。しかし、ソフィーは、ジーノに同じ過ちを繰り返してほしくなくて、マルセルを追い払おうとします。しかし、ジーノが建物の2階から降りてきて、マルセルに会います。そして、ジーノが外に出ると、マルセルの他に、ジャノ、そして、以前からジーノを尊敬していたという青年(ジェラール・ドパルドゥー)が待っていました。ジーノと一緒に銀行に押し入るのが夢だった青年は、早速、ジーノと手を組むべく、話を持ち掛けますが、ジーノは、毅然とした態度でこれを断ります。すると、青年は、ジーノをわざと刺激して、過去の考えを取り戻してもらう作戦に出ます。これには、さすがのマルセルも嫌悪感を抱き、青年を引き止めて、ジーノに謝るのでした。



そんな中、刑務所で、ある囚人が独房で首をつって亡くなっているのが見つかります。この囚人は、カズヌーブに仮釈放を求めていました。カズヌーブは、刑務所長と面会し、仮釈放すべきかどうかを話し合っていたところでした。彼の死を知った仲間たちは、刑務官たちを攻撃しようとします。刑務官たちは、銃を発砲して、事態の収拾に努めようとしますが、その場にいたカズヌーブに止められてしまいます。しかし、カズヌーブの制止もむなしく、囚人たちが暴徒化。彼らは、枕に火を付け、雄叫びを上げながら、刑務官たちに向かって投げ付けます。火は一気に燃え広がり、けが人が続出する騒ぎとなりました。



その日の夜、カズヌーブは、仕事が長引いてしまったため、遅い時間に帰宅します。家には、カズヌーブの妻、息子・フレデリック(ベルナール・ジロドー)、娘・イブリンの他に、ジーノとソフィーも来ていました。もともと、ここで夕食会が予定されていたのですが、カズヌーブの帰りが遅かったため、全員が先に夕食を食べていたのです。ジーノは、この日、刑務所で起きた事件について語り始めます。既に、新聞を通して、事件の一部始終を知っていたためです。カズヌーブは、定年まであと少しでしたが、この事件を機に、刑務所を辞める事を決意します。



その後、ジーノは、これ以上パリに住み続ける訳にはいかないと考え、パリから約45キロ離れた町・モーにある新聞の印刷工場で就職します。ある日、ジーノは、地元のレストランで、ソフィー、カズヌーブと一緒に食事をします。カズヌーブは、刑務所を辞める決意をしていましたが、フランスの南部にある町・モンペリエに転勤する事になりました。今度の勤務先は、刑務所ではないといいます。ジーノは、カズヌーブの決断を残念がりますが、「これからは、週末にモンペリエまで会いに行く。」と、カズヌーブに約束します。



次の週末、ジーノはソフィーと一緒に、車で、湖畔へピクニックに出掛けます。その帰り道、ジーノは、車を運転中に、事故に巻き込まれそうになります。ジーノの運転する車が、とてつもないスピードを出す対向車とぶつかりそうになったのです。ジーノはどうにか衝突を避ける事ができましたが、自身の運転する車がものすごい勢いで横転してしまいます。ジーノは横転した時の衝撃で重傷を負い、ソフィーは命を落としてしまいました。ジーノは、搬送先の病院の公衆電話からカズヌーブに電話を掛け、涙ながらに事故を報告します。数日後、ジーノは、ソフィーの葬儀を無事に済ませましたが、ソフィーの実家が事故の件でジーノを相手に裁判を起こしていたため、ここ数日、気持ちが落ち込んでいました。カズヌーブは、ジーノに、モンペリエへの移住を勧めます。カズヌーブは、最近、ぜひ自身の仕事をジーノに手伝ってもらいたいと考えていたのです。



ジーノは、モーの印刷工場を辞め、モンペリエに移住します。ジーノは、モンペリエでも印刷の仕事に就き、日曜日になると、家でレコードを大音量で聴いたり、イブリンの誘いでサイクリングに出掛けたりしていました。カズヌーブは、「ジーノはすっかり立ち直った。」と、安心していました。やがて、ジーノに、ルシー(ミムジー・ファーマー)という新しい恋人ができ、ジーノは同棲を考えるようになりました。しかし、ジーノは、自身の過去をいつ、どのようにルシーに話すべきか、悩んでいました。



そんなある日、ジーノは、毎月、給与明細を警察署に提示して、何も企んでいない事を証明しなければならなかったため、モンペリエの警察署を訪れていました。窓口の警察官が手続きを進めていると、ジーノは、かつて、自身を逮捕したゴワトロー刑事(ミシェル・ブーケ)と、偶然、再会します。あれから、ゴワトロー刑事は、警部に昇格していました。ジーノは、警察署に来た目的を正直に話し、給与明細も見せます。しかし、ゴワトロー警部は、仮釈放後、全く罪を犯していないジーノを、刑事ならでの長年の勘だけで、「何か悪い事を企んでいる。」と、勝手に思い込みます。そして、再び逮捕にむけて、動き出すのです…。



この映画では、フランスを代表する2人の俳優、アラン・ドロンとジャン・ギャバンが、「地下室のメロディー」(1963年)、「シシリアン」(1969年)に続く3度目の共演を果たしています。因みに、1976年にギャバンが亡くなったため、2人が共演したのは、この時が最後でした。監督及び脚本は、小説家、脚本家、映画監督と、多彩な顔を持つ、パリ生まれ、コルシカ島育ちのジョゼ・ジョバンニです。ジョバンニは、若かりし頃に、犯罪組織と関係し、フランスのファシズム政党・フランス人民党に所属していました。誘拐事件や窃盗事件、さらには、少なくとも3件の強盗殺人事件にも関与し、1度は死刑を宣告されるのですが、大統領恩赦により刑を免れ、出所したそうです。ジョバンニが、極めて珍しい人生経験をふんだんに活かして、この映画を作り上げた事がよく分かるエピソードです。



物語の前半は、ほぼ穏やかに時間が流れますが、後半になって、ゴワトロー警部が登場する事で、逃げ出したくなるような緊張感が突然生まれます。かつての犯罪者・ジーノに対する、ゴワトロー警部の思い込みの激しさがとにかく怖いです。「凶悪犯の性格は、一生治らない。凶悪犯全員に、それが当てはまる。」というゴワトロー警部の持論は、あくまで長年の経験で学んだ傾向に過ぎず、必ずしも全員に当てはまるとは限りません。傾向だけで物事を判断するゴワトロー警部は、危険人物です。ゴワトロー警部は、ジーノに近しい人物に次々と聞き込みを進め、ジーノを尾行するようになり、さらに、ジーノを刺激するためにルシーと肉体関係を結ぶ事を思い付き、いよいよ逮捕に踏み切るかに思われましたが…。続きは、DVDで。ドロン演じるジーノの孤独感、ギャバン演じるカズヌーブの正義感、そして、観る者に強烈な印象を与える、賛否両論真っ二つに分かれるであろうラストシーンを、ぜひご覧いただきたいと思います。

暗黒街のふたり HDリマスター版 [DVD]
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バチカンで逢いましょう(2012年 ドイツ)

バチカンで逢いましょう [DVD]
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カナダ・オンタリオ州。夫・ロイズルに先立たれたマルガレーテ(マリアンネ・ゼーゲブレヒト)は、ドイツ・バイエルン州から移り住んで以来、40年もの長い年月をロイズルと共に過ごしてきた家を離れる事になりました。娘のマリー(アネット・フィラー)が、「ママには、一人暮らしは無理。」と心配し、ロイズルとマルガレーテの思い出がたくさん詰まったこの大切な家を、あくまで親切のつもりで売り、自分たち一家が住むカナダ・ユーコン準州ホワイトホースの家に、マルガレーテを呼び寄せる事にしたのです。マルガレーテは、オンタリオ州で過ごす最後の日となったこの日、一人で山に登り、ロイズルに別れを告げました。マルガレーテは、マリー一家の家への引っ越しが終わったら、マリーたちと一緒にイタリア・ローマを旅行する事になっていました。その最大の目的は、マルガレーテが、バチカンでローマ法王・ベネディクト16世(トーマス・カイラウ)に謁見する事でした。マルガレーテがローマ法王に謁見すれば、マルガレーテは、長年背負ってきた心の重荷から解放されるのです。

翌日、マリーが、夫のジョー(ポール・バーレット)、2人の息子たち、そして、運送会社のドライバーと一緒に、マルガレーテを迎えにやって来ました。慈善団体に寄付する事になっていた荷物が次々にトラックに運び込まれていく間、マルガレーテは、庭で最後の水やりをし、マリーの息子たちは、トラックの幌の上に乗って遊び、マリーに叱られていました。やがて、荷物の運び出しが完了し、一行はいよいよホワイトホースへ向けて出発します。

しかし、一行がホワイトホースへ向かう途中、マリーの口から、あるとんでもない提案が飛び出します。なんと、マルガレーテが、老人ホームとは違うハイテク機能満載の「シニアの家」への入居をマリーから勧められたのです。もともと、マリー一家が住んでいる家はとても狭く、マリーは、新たに家族を受け入れる余裕がありませんでした。しかし、「ママに安全に暮らしてほしい」一心で、最初から強引に「シニアの家」に連れて行くと、きっと抵抗されてしまいます。そのため、マリーは、マルガレーテを刺激する事なく、マルガレーテに「シニアの家」に移ってもらえるよう、家の売却、「シニアの家」の手付金の支払い、引越しと、マリーなりに根回しをしてきたのです。マリーは、キャンセル待ちが多いこの施設に運良く入居できるチャンスが巡ってきた事、死亡者がまだ一人も出ていない部屋で過ごせる事、すでに手付金を支払っているので、すぐにでも入居できる事を、マルガレーテに喜んでほしいと思っていました。ジョーも、「新しい人生を楽しめますよ。」とマリーの援護射撃をします。マルガレーテは、マリー一家との同居が決まった時、マリーから「最初のうちは、一緒に暮らせるわ。」と聞かされていましたが、なぜ、マリーが「最初のうちは」と強調していたのか、この日になって、その理由がようやく分かったのです。

バチカンで逢いましょう [Blu-ray]
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その後、一行は、ホワイトホースにあるマリー一家の家に到着しました。マルガレーテは、与えられた自室でキリスト教の祭壇を作り、リビングルームへ向かいます。そこには、マリー一家の他に、息子のラインホルトが、恋人のシャンタルと一緒に来ていました。マルガレーテは、ラインホルトの恋人が、いつの間にか、ブレンダからシャンタルに変わっていた事に驚きの声を上げます。マリーは、その場の空気を察し、「そんな事を言ってはいけない」と、遠くから慌ててマルガレーテにサインを出します。しかし、時既に遅し。シャンタルは、ラインホルトが、自身と出会う前に別の女性と交際していた事実を知り、ラインホルトに詰め寄ります。しかし、2人はすぐに軌道修正します。ラインホルトは、既にシャンタルにプロポーズし、承諾をもらっている事をマルガレーテに打ち明けると、マルガレーテは、素直に祝福します。しかし、当の本人たちは、マルガレーテからの祝福よりもキスの方に夢中になっていました。

それにしても、なぜ、ラインホルトがシャンタルと一緒にこの場所に来ていたのでしょうか?実は、随分急な話ではありますが、2人は、間もなくここで、結婚式を挙げる事になっていました。マリーは、申し訳なさそうな表情で、マルガレーテに説明をし始めます。実は、マリーは、皆の予定が合わなくなって、ローマへの旅行を取り止めていたのです。ジョーは仕事で忙しく、2人の息子たちは旅行を理由に学校を休む訳にはいかず、それに、マルガレーテの誕生日にローマで予定していたラインホルトたちの結婚式も、旅行を取り止めてしまったがために、今からこの家で挙げなければなりません。マルガレーテは、かねてからの夢を奪われ、ショックを受けます。マリーは、マルガレーテの誕生日に渡す事にしていたプレゼントを一足早く渡して、マルガレーテの機嫌を取ろうとします。それは、ローマ法王からの祝福のメッセージが書かれた手紙でした。しかし、それは、マリーが便利なインターネットのサービス「バチカン・ドットコム」で手早く手に入れたもので、とても真心のこもったものではありませんでした。マルガレーテは、法王に直接会いたいと願いますが、マリーは、「それは、また今度の機会に」と、会話を一方的に打ち切るのでした。

バチカンで逢いましょう(字幕版)
バチカンで逢いましょう(字幕版)

翌朝、マリーたちの家に、マルガレーテの姿はありませんでした。「ローマへ行くわ。1週間で戻る。」マルガレーテは、置手紙を残し、たった1人でローマへ旅立ってしまったのです。最初に置手紙に気付いたのは、ジョーでした。ジョーは、すぐにマリーにその旨を知らせます。マリーは、慌てて、マルガレーテの部屋へ向かいますが、やはり姿はありませんでした。マルガレーテの飛行機のチケットは、マリーの2人の息子のうちの1人が、購入していました。支払いは、マリーのクレジットカードで済ませたといいます。息子たちは、なぜマリーが動揺しているのかが理解できません。マリーが家を購入した際、マルガレーテに金銭的な援助をしてもらっていたのを、息子たちはよく覚えているからです。それに、彼らは、「おばあちゃんは一人の立派な大人だから、一人で遠くへ旅行に行けるよ。」と、マルガレーテを信頼している様子。マリーは、「おばあちゃんは、大人じゃない。お年寄りなの。何にも分からないのよ。鳥の巣から出された、か弱いヒナみたいなものなのよ。」と、自身の母親を極端にお年寄り扱いします。ジョーや息子たちは、マリーが実の母親をヒナのようなか弱い生き物に例えるさまに、クスクスと笑います。マリーは、「笑い事じゃないわ。」と、憤るのでした。

一方、マルガレーテは、空港のトイレにいました。飛行機への搭乗を間近に控え、心臓の鼓動がいつもよりずっと大きくなっていました。マルガレーテは、心臓のあたりに右手を当て、気分を落ち着かせていました。そして、次第に気分が落ち着いてくると、いよいよ飛行機に搭乗し、一路、ローマへ向かいます。その頃、マリーは、携帯電話で電話を掛けながら車を運転していました。電話の相手は、マリーの娘・マルティナ(ミリアム・シュタイン)。マルティナは、ローマの厳格なカトリックの家庭で、子守として働いていました。しかし、マルティナはなかなか電話に出ません。なぜなら、恋人・シルヴィオ(ラズ・デガン)と2人きりでシャワーを浴びていたからです。そんな事など知る由もないマリーは、大至急、自身に連絡するよう伝言を残します。マルガレーテが迷子になったのではないか、或いは、お金を取られたのではないかと心配しているので、マルティナに無事を知らせてほしいのです。一方、マルガレーテは、無事にローマに到着し、市内をタクシーで移動していました。その表情は、とても晴れやかでした。マルガレーテは、タクシーの車内で法王の写真を見つけると、運転手に一言断ってから、写真を好きなだけもらいます。



こうして、マルガレーテは、これから滞在先となるマルティナのアパートに到着します。マルガレーテは、傾斜が急な階段をひたすら登り、マルティナの部屋の前にやって来ます。マルガレーテは、早速、ドアベルを鳴らします。しかし、玄関の扉を開けたのは、シルヴィオでした。シルヴィオは、マルガレーテに自分たちの邪魔をされたくなくて、一方的にドアを閉めます。ドアが閉まった後、マルティナはドアの外に誰がいるのかが知りたくて、ドアについている小さな窓をそっと覗き込みます。そこにいたのは、厳格なカトリック教徒であるマルガレーテでした。マルティナは、突然、頭の中が真っ白になります。今、マルティナの部屋の壁には、シルヴィオの趣味で、裸の女性のイラストがびっしりと描かれてあって、床も随分散らかっています。とても、マルガレーテに見せられない状態です。マルティナは、マルガレーテをがっかりさせないようにするため、ドアの外でマルガレーテに会います。そして、「お腹、空いていない?近くのレストランなんかどう?」とマルガレーテを食事に誘います。しかし、10時間もの長旅で疲れてしまったマルガレーテには、近くのレストランへ行く気力が残っていません。マルガレーテは、どうしても部屋の中で休ませてほしくて、強引にマルティナの部屋の中に入ります。そして、脇目も振らずに、奥の方にあるベッドルームへ向かい、ベッドの上に倒れ込んで、眠りにつくのでした。

その日の夜、マルガレーテは、冷蔵庫の中のものを物色していました。マルガレーテは、「空よりは、マシね。」と、1本の小さなペットボトルを持ち出します。この時、部屋では、電話のベルが鳴っていましたが、マルガレーテは電話に出ませんでした。また、マルティナは、仕事で外出中でした。実は、マルティナは、既に子守の仕事を辞めていました。仕事先のあまりの厳格な空気に耐えられなくなったのです。今、マルティナは、1軒の小さなライブバーでバーテンダーとして働いています。そのライブバーのステージに立つロックバンドのボーカルが、シルヴィオだったのです。その頃、マルガレーテは、部屋の中を探検していました。部屋中の壁という壁が白い布で覆われていたのが何となく気になったマルガレーテは、そのうちの1枚をそっとめくります。そこには、カトリック教徒が決して目にしてはいけないものが描かれていました。マルガレーテは、探検が終わると、今度は、部屋の掃除を始めます。掃除機の電源を入れ、無心に部屋の埃を取り除きます。そして、壁中に、法王の写真を貼っていくのでした。その後、マルガレーテは、マルティナの帰りを何時間も待ちました。しかし、マルティナは、いつまで経っても帰って来ません。マルティナは、結局、翌朝の6時に帰って来ました。マルティナの隣には、シルヴィオもいました。マルティナの事をずっと心配していたマルガレーテは、「一体、どこに行っていたの?」と、ただただ、その不安な気持ちをぶつけるのでした。



その後、マルガレーテは、マルティナと一緒に、近くのカフェで朝食を摂ります。マルティナは、ここで初めて、子守からバーテンダーに転身した事、バーテンダーに転身した後にシルヴィオと出会い、シルヴィオの部屋で同棲を始めた事を打ち明けます。そう、マルガレーテが滞在しているのは、シルヴィオとマルティナが同棲生活を送っている部屋なのです。マルガレーテは、シルヴィオはいつもベッドで寝ているのに、なぜ、マルティナはクローゼットの片隅で寝ているのかが分からず、マルティナの事を「かわいそうだ」と嘆きます。そうこうしているうちに、マルガレーテがバチカンへ向かう時間が訪れます。「会いに行くの、法皇さまに。これでやっと、ロイズルと仲直りができる。」マルガレーテは、胸をワクワクさせながら、カフェを後にします。

マルガレーテは、バチカンへ行くバスに乗り込みます。車内には、同じくバチカンに向かう途中の修道女が数多く乗っていました。マルガレーテは、修道女たちとの会話を心から楽しみました。そうこうしているうちに、バスは目的地に辿り着きます。マルガレーテがローマ法王庁の建物の中に入ると、自身と同じように法王からの祝福を望む人々の行列が長く続いていました。マルガレーテも列に並び、静かに順番を待ちました。そして、自身の順番がもう少しで来るという時になって、白杖をついていた視覚障がい者の男性・ロレンツォ(ジャンカルロ・ジャンニーニ)が、列の途中にある階段でつまづいてしまいます。マルガレーテは、ロレンツォの元に駆け寄り、なんと、自分の順番をロレンツォに譲ります。マルガレーテのすぐ後ろでずっと並んでいた若い父親は、まさかの展開に驚き、マルガレーテの順番が先なのか、それとも、ロレンツォの順番が先なのかがよく分からず、マルガレーテに怒りをぶつけます。マルガレーテは、そんな若い父親に、「恥を知りなさい。」と一喝し、最後列に並び直すのでした。

ところが、マルガレーテは、法王に会う事ができませんでした。カナダでマリーから贈られた法王からの手紙は、あくまで集団で謁見するためのもので、マルガレーテが長い列に並んでいたのは、政治家、教会の指導者、そして、いわゆるスーパースターと呼ばれる人たちに限られている個別謁見だったのです。しかし、だからと言って、マルガレーテががっかりする事はありません。毎週日曜日には法王が窓辺に立ちますし、毎週水曜日には一般向けの謁見もあります。マルガレーテは、次の水曜日に出直す事にしました。



バチカンを出て、ローマに戻ってきたマルガレーテは、ローマ法王庁で教えてもらったバイエルン料理の専門店「リセロッタ」で空腹を満たす事にします。道中、マルガレーテのすぐ横を、1台のベスパがかなりのスピードで通り過ぎていきます。そして、ベスパを運転していた男性は、その先に止めてあった乗用車の運転手とちょっとした言い合いになります。マルガレーテは、ベスパに乗っていた男性の顔に見覚えがありました。男性は、ローマ法王庁で順番を譲った、あのロレンツォでした。マルガレーテは、ロレンツォに声を掛けようとします。しかし、ロレンツォに近付いた瞬間、ロレンツォは前を向いて、どこかへ行ってしまいました。



やがて、マルガレーテは、「リセロッタ」に到着します。しかし、そこは、客が一人もおらず、バイエルン料理の知識に乏しい店主・ディノ(ジョバンニ・エスポジート)しかいません。しかも、注文した料理は、どれも焦げていて、とても食べられたものではありません。マルガレーテは、居ても立っても居られず、自ら厨房に入り、自ら注文した料理を自らの手で作り始めます。最初は、あまりの勝手な行動に怒り心頭だったディノでしたが、マルガレーテがローマに来て以来、ずっと馬鹿にされっ放しである事を聞かされた上に、「(焦げた料理を出して)私を毒殺するつもりなの?」と脅されると、何も言えなくなってしまいます。こうして、マルガレーテは、慣れた手つきで料理を作っていくのでした。その後、食事を終え、「リセロッタ」を出たマルガレーテは、ロレンツォが乗っていたベスパを偶然見つけ、タイヤの前輪を足で蹴ります。ロレンツォは、すぐそばでベスパの方を向いて立ち、その様子をしっかりと目に焼き付けていました。そう、実は、ロレンツォは健常者。視覚に障がいがあるというのは、真っ赤な嘘だったのです。



その後、ロレンツォは、「リセロッタ」の勝手口から厨房に入り、ディノに「何か食わせてくれ」と頼むと、ディノが持っていた、料理の残りが乗った皿をやや強引に奪い、それを食べ始めます。マルガレーテがディノの料理のまずさに耐え切れずに作ったものとは知らずに。ロレンツォは、ディノにこう尋ねます。「それで、店はいつ売るんだ?」ディノは、この店を売る気は全くありませんでした。幼い頃からずっと、ドイツ生まれの母親・リセロッタからこの店を継ぐよう言われ続け、大人になってから実際に継いだので、リセロッタの店に対する思いの深さを考えると、そんな気にはなれないのです。しかし、ロレンツォは、早くディノが店を売ってくれなければ、自身はおしまいだといいます。一体、ロレンツォは、何をどう困っているのでしょうか…。



この映画でメガホンを取ったのは、トミー・ヴィガント監督。代表作に、「飛ぶ教室」(2003年)があります。有名な少年合唱団を持つドイツのとある学校の寄宿舎を舞台に、過去に幾つもの寄宿舎で脱走を繰り返してきた少年が、優しい先生や寄宿生たちに恵まれるものの、やがて寄宿生と通学生との間に起こる抗争に巻き込まれていく映画です。



この映画の主人公・マルガレーテを演じたのは、マリアンネ・ゼーゲブレヒト。「バグダッド・カフェ」(1987年)で、アメリカ西部の砂漠を夫と共に訪れるドイツ人旅行者・ヤスミンを演じました。今回、ゼーゲブレヒトが演じたのは、「1に法皇さま、2に法皇さま、3に法皇さま。」といった感じの、敬虔なカトリック教徒。生真面目のさらに上を行くように見える女性ですが、物語の後半では、次第にお茶目な行動を取るシーンが増え、チャーミングの度合いが増したり、本性が見えるようになったりします。



この後、マルガレーテは、ひょんなことから、ジャンカルロ・ジャンニーニ演じるロレンツォと不思議な間柄になります。そのきっかけとなるシーンでの、ジャンニーニの台詞回しは、絶品です。このシーンの時点で、観る者は、ロレンツォが詐欺師だと分かってはいるのですが、あまりにも弁が立つさまに、「お見事!」と言うしかありません。スーツの見事な着こなしやマルガレーテへの紳士的な接し方は、ちょいワル親父の正統派と呼べるものがありますが、それ以上に、台詞回しがとにかく凄かったです。さらに、「皆の予定が合わないから」と、ローマへ行く旅行を中止した張本人であるマリーも、いよいよ、ローマに乗り込みます。しかも、このシーンで、マリーが旅行を中止にした本当の理由が明らかになります。ヒントは、このシーンのジョーの台詞ですよ。そして、そして、マルガレーテがローマ法王、しかも、ベネディクト16世との謁見を望む本当の理由も、物語の終盤で明らかになります。なぜ、他の誰でもない、ベネディクト16世でなければならないのでしょうか。答えは、ぜひDVDで。

バチカンで逢いましょう [DVD]
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マネーモンスター(2016年 アメリカ)

マネーモンスター [AmazonDVDコレクション]
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リー・ゲイツ(ジョージ・クルーニー)は、アメリカ・ニューヨークのテレビ局・FNNで生放送されている大人気の財テク番組「マネーモンスター」で司会を務める人物で、視聴者から「ウォール街の魔術師」と呼ばれていました。ある日、リーは、番組の生放送が始まる10分前になって、ディレクターのパティ・フェン(ジュリア・ロバーツ)から、ゲスト出演する予定だったアイビス・キャピタルのCEOウォルト・キャンビー(ドミニク・ウェスト)が、ある事情で出演できなくなってしまった事を聞かされます。キャンビーの代役として出演が決まったのは、同じ会社の広報担当役員ダイアン・レスター(カトリーナ・バルフ)で、ダイアンは中継で出演する事になりました。

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こうして、いつものように、「マネーモンスター」の生放送が始まります。なぜか、予め用意された台本には従わず、アドリブで話し続けるリー。その間、調整室でリーを見守っていたパティは、大きくて重たそうな段ボール箱を2箱抱えた青年カイル・バドウェル(ジャック・オコンネル)が、スタジオの後方で、リーの姿を覘き込んでいるのを見つけます。最初は、仕込みかと思っていたパティでしたが、実は、全然違いました。カイルは、突然、スタジオに侵入し、段ボール箱を置いて、「動くな!」と言い、銃を天井に向けて発砲したのです。

マネーモンスター (吹替版)
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パティは、カイルが銃を発砲してすぐに画面を切り、放送を中止しました。カイルはすぐにそれに気付き、パティに画面を元に戻すよう、要求します。パティは要求を拒みますが、彼女の判断は、かえってカイルを刺激してしまい、カイルはリーの首根っこを掴んで、「(リーを)撃ち殺す」と、パティを脅します。どうやら、カイルは、公共の電波を使って、社会にアピールしたい事があるようです。カイルは1人でカウントダウンを始め、カウントダウンが終わったタイミングで、リーを撃ち殺そうとします。しかし、もう少しでカウントダウンが終わるところで、パティは、画面を元に戻し、警備員を呼びます。こうして、リーは、命拾いをする事ができたのでした。

マネーモンスター (字幕版)
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カイルの一連の行動は、いつの間にか、全米で生放送されるようになります。リーは、カイルの命令で、2箱の段ボール箱のうち、1箱を開封します。そこには、爆弾付きのベストが1着入っており、リーは、すぐにこのベストを着用させられます。一方、パティは、カメラ、音響を除くスタッフ全員、そして、調整室にいる人たちのうち、スタッフ以外の人たちをスタジオの外に出させます。リーは、危険極まりないベストを着用させられた事で、パニック発作を起こしますが、動揺が激しいあまり、自身に置かれた状況を正しく理解できず、自身は心臓発作だと強く思い込んでいました。パティは、調整室からマイクを通して、リーを落ち着かせようとします。その頃、ニューヨーク市警は、FNNから通報を受け、何台ものパトカーを現場に向かわせていました。



カイルは、スタッフがほとんどいなくなったスタジオのドアに鍵をかけ、ようやくメッセージを発信します。「『マネーモンスター』は、俺から全てを奪った。知らん顔だ。誰も問いたださない。政府は何もしない。」と。さらに、カイルは、もう1つの段ボール箱に、リーが着用させられているのと同じベストが入っている事を明らかにします。これを着用するのは、アイビス・キャピタルだと言います。つまり、アイビス・キャピタルのCEOであるキャンビーが着なければならないのです。カイルは、今から4週間前に、「マネーモンスター」で、リーがおススメの銘柄としてアイビス・キャピタルの名を挙げた時、その安全性を自信たっぷりに語っているのを観て、リーの言う事をすっかり信じて株を投資したところ、アイビス・キャピタルの株が大幅に下落してしまい、なんと、自身の全財産である6万ドルも損をしてしまったのです。カイルは、パティに4週間前の番組の映像を探すよう、要求します。



一方、ニューヨーク市警の警察官たちが、FNNに到着します。それから間もなくして、緊急出動部隊も到着します。現場でニューヨーク市警の警察官たちを束ねるパウエル(ジャンカルロ・エスポジート)は、FNNの警備員に社屋の詳細な図面を用意するよう、協力を求めます。同じ頃、パティは、カイルが望んでいた映像を見つけます。パティも、スタジオに残っているリーも、まさか、あの放送の4週間後にこのような事件に巻き込まれるとは夢にも思わなかったため、今更ながら、少々大げさな演出を実行してしまった事を後悔するのでした。リーは、カイルに、「5分後に、(失ってしまった)6万ドルを用意する。」と、約束します。しかし、カイルは、自身が奪われたお金がそのまま戻ってくれば良い訳ではありません。カイルは、なんと、5分後に8億ドルを用意するよう、命じます。自身を含めた、被害者全員分の被害額を提示したのです。しかし、わずか5分で、そんな巨額のお金を用意する事はできません。リーは、ニューヨーク市警から交渉人が来るまでの間、どうにか時間を稼ぐしかありませんでした。



やがて、FNNに、ニューヨーク市警の交渉人・ネルソン(クリス・バウアー)が到着します。ネルソンは、リーとカイルがいるスタジオに声が聞こえるよう、手配をしてもらい、早速、交渉を始めます。しかし、カイルは、「警察に用はない。」と、再び発砲。パティは、反射的に音声を切ってしまいます。カイルが話したい相手は、あくまでキャンビーとリーの2人。しかし、キャンビーは出演を取り止めています。パティは、もう1度ダイアンに中継先から出演してもらうよう、スタッフに指示し、自身はアイビス・キャピタルに関する情報を集めます。



その頃、「マネーモンスター」への出演を取り止めたキャンビーは、実は、行方不明になっていました。アイビス・キャピタルは、キャンビーが出張先のスイスから帰りの飛行機に搭乗したところまでは把握していました。しかし、その後の足取りは、どの社員も全く知りませんでした。もともと、キャンビーが飛行機で移動している間は、社員たちは、本人と連絡が取れないようになっていました。この時、キャンビーが搭乗した飛行機は、とっくに、ニューヨークに着陸しているはずなのですが、なぜか、ずっと、飛行中のままになっていました。



最初、全米で報じられていたこの事件は、やがて、韓国・ソウル、アイスランド・レイキャビク、南アフリカ・ヨハネスブルクと、世界中で報じられるようにになります。そんな中、ニューヨーク市警の幹部たちは、FNNの外で作戦を練っていました。彼らは、時間をかけて話し合った結果、FNNの関係者全員を外に脱出させた上で、カイルを射殺する事を決めます。その頃、アイビス・キャピタルのCFO(最高財務責任者)・グッドロー(デニス・ボウトシカリス)は、スマートフォンで、ある人物と話をしていました。その相手とは、行方不明になっているはずのキャンビーでした…。



この映画でメガホンを取ったのは、「羊たちの沈黙」(1991年)や「フライトプラン」(2005年)で知られる女優ジョディ・フォスター。ストーリー展開の複雑さは、男性監督の作品に全く引けを取らないので、この映画の監督を女性が務めたと知った時は、本当に驚きました。これだけ複雑なストーリーを作り出せるのは、フォスターの女優としての長いキャリアや、彼女自身の頭の回転の速さ(※フォスターは、イェール大学を優秀な成績で卒業しています。)等、様々な要素があっての事ではないでしょうか。フォスターの監督作品は、この映画の他に、「リトルマン・テイト」(1991年)、「ホーム・フォー・ザ・ホリデイ」(1995年)、「それでも、愛してる」(2011年)があります。



リー役は、「フィクサー」(2007年)、「マイレージ、マイライフ」(2009年)のジョージ・クルーニー。「マネーモンスター」の生放送中に、株を賢く増やす術を伝授するために、プロダンサーを従えてダンスをしたり、モニターに風刺的なイラストを積極的に映したりする姿は、リーが経済界での成功者である事をこれ見よがしにアピールしている印象が非常に強く、「株で大損をする人たちの怒りを買ってしまっても、仕方がない。」という説得力が十分にありました。パティ役は、「プリティ・ウーマン」(1990年)、「ノッティングヒルの恋人」(1999年)のジュリア・ロバーツ。リーを励まし続ける時の抑えた演技や、事件が早く解決しない焦りから来る瞬間的な怒りを見せる演技がとても印象に残りました。また、カイル役のジャック・オコンネルの鬼気迫る演技は、この映画が作り出す緊張感のほぼ100%を占めていました。相手が何を言ったら、激怒したり、銃を発砲したりするのかが、全く予想が付かないところに、無意識に震えがくるような怖さが感じられました。



カイルが、高圧的な物言い、いとも簡単に響かせる銃声で、スタジオという密室を支配する様子は、世界中で報じられますが、事件の解決の糸口は、なかなか見つかりません。リーは、あまりの物々しい雰囲気に、自分たちの様子がおそらく全米や海外で報じられているのではないかと考え、カイルの要望を叶えるべく、世界中の多くの視聴者を巻き込む、ある作戦を思い付きます。果たして、リーの賭けは、吉と出るか、それとも、凶と出るのか。答えが気になる方は、ぜひ、DVDで。

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