サイレント・ボイス 愛を虹にのせて(1987年 アメリカ)

※今回は、2019年5月12日に、BSの映画チャンネル・スターチャンネル1で放送されたものを鑑賞した上で、ご紹介しています。この映画のDVDやBlu-rayの販売情報を調べましたが、どちらも見つける事ができませんでした。何卒ご了承くださいますよう、お願い致します。


アメリカ・モンタナ州のとある片田舎に建つ家の庭で、12歳の野球少年・チャック(ジョシュア・ゼルキー)が、妹・キャロリンを相手に、キャッチボールをしています。キャロリンが、チャックの投げたボールを受けられず、走ってボールを取りに行くと、チャックは「もういいよ。」と声をかけ、キャッチボールを止めます。そして、キャロリンに、庭の木にぶら下がっている大きなタイヤを揺らすよう頼むと、真ん中の穴をめがけてボールを投げます。ボールは見事に穴を通過して、木の幹に当たります。チャックは、それが終わると、今度は、自身の野球仲間やキャロリンと一緒に、ある場所へ自転車で向かいます。一方、ある小さな飛行場では、戦闘機が着陸します。操縦席からパイロットのラッセル(ウィリアム・ピーターセン)が降りてくると、妻のパメラ(フランセス・コンロイ)が出迎えます。パメラは、ラッセルに「まだ、間に合うわ。」と言い、2人である場所へ向かいます。



チャックたち、そして、ラッセルとパメラが向かった先は、少年野球の試合が行われている野球場でした。ラッセルとパメラは、客席から試合を見守ります。2人が見つめるマウンドに立っていたのは、2人の息子であるチャックでした。チャックは、この試合にピッチャーとして出場するために、自転車で野球場にやってきたのです。両親やチームの期待に応えて、しっかりと打者を抑えたチャックは、チームメイトたちから祝福を受け、元気よくベンチに戻っていきます。ラッセルも、チャックに近付き、頑張りを褒めたたえます。



金曜日、チャックは家族、少年野球チームの仲間と一緒に、広い野原に来ていました。目的は、チャックが、自分で作った手作りロケットを仲間と一緒に発射させるためでした。チャックらが手作りロケットの発射の準備をしていると、一台の車が止まり、中から、ラッセルの知人で、アメリカ軍の予算の仕事に携わる国会議員のジョニー(デニス・リップスコーム)が降りてきます。ジョニーは、ラッセルやパメラとの再会を喜び、ラッセルやパメラも、ジョニーと久し振りに再会して、とても嬉しそうです。そして、いよいよ手作りロケット発射の時。手作りロケットは、カウントダウンの終わりと同時に勢いよく上昇し、パラシュートも無事に開きます。手作りロケットの発射は、こうして大成功に終わったのでした。



ジョニーは、チャックらの労を労うため、近くにある地下サイロを見せます。チャックらが最初に目にしたのは、「ミニットマンⅢ」と呼ばれるミサイルの発射装置でした。「ミニットマンⅢ」は、40トンもあるコンクリートのふたが閉まっており、中には、「バード」と呼ばれる長さ20メートルのミサイルが入っています。弾頭20メガトンの「バード」を発射する時は、固形燃料を用いて、32秒で吹き飛ばすのですが、その射程距離は11,000キロもあり、チャックは、ジョニーの説明を受けるだけで、その威力にショックを受けます。続いて、チャックらは、地下15メートルの場所にあるコントロール室のそばまで案内されます。この部屋にある制御装置を使うと、わずか20分でミサイルをソ連まで飛ばす事ができるといいます。しかし、ここは、巨大な命令系統の最終段階。大統領による命令でミサイルが発射されるのですが、実際には、そんな機会は滅多にありません。説明が終わると、一同は、コントロール室の傍を離れ、エレベーターに向かいます。



しかし、チャックだけは、じっと立ったままでいました。ジョニーは、チャックの異変に気付き、声をかけます。「パパの乗ってる戦闘機も、ミサイルを積んでる。核を積む時も、あるかもしれない。」チャックは、ミサイルや核兵器の恐ろしさをこの日、生まれて初めて知ったのです。ジョニーは、チャックの不安を和らげようとしますが、チャックは「(ジョニーから納得のいく説明が得られるまで)コントロール室の傍から離れたくない。」と言い出します。ジョニーは、12歳であるチャックが理解できるよう、かみ砕いて説明しますが、チャックには、単なる大人の言い訳にしか聞こえませんでした。



数日後、チャックは、野球の試合に出場するため、野球場に来ていました。チャックがベンチからマウンドを眺めていると、ラッセルが励ましにやってきます。ラッセルを見つめるチャックの目は、ジョニーからあの話を聞かされたばかりという事もあって、冷めていました。「老後(ラッセルが年を取ってからも)も仲良くしようね。」チャックは、一言だけ言って、マウンドに向かいます。しかし、チャックは、どうしても気力が湧いてきません。核兵器がこの世の中に存在しているかと思うと、悲し過ぎて、野球をやる気になれないのです。チャックの気力のなさに気付いたチームの監督は、なぜ、核兵器があるせいで、野球をやりたくなくなるのかが全く分かりません。ラッセルは、チャックと監督のやり取りを心配して近付き、チームメイトたちも心配になって集まってきます。監督は、ピッチャーをジェロームに交代しようとします。しかし、チームのエースであるチャックが投げないと、この試合で勝つ事ができないのをよく分かっているチームメイトたちは、「自分たちが恥をかくくらいなら、試合放棄をした方がいい。」と言い出し、監督はこれを受け入れます。チャックは、監督からも、チームメイトたちからも、信用を失い、さらに、その後、ラッセルを怒らせてしまいますが、自身としては、自力ではどうにもできない悲しみを、分かってほしかっただけなのです。



チャックの前代未聞の行動は、地元の新聞に掲載されます。その記事は、チャックの勇気ある行動を紹介している訳ではなく、あくまで風変わりな子どもの一人として紹介するもので、チャックの考えに共感する人は、少なくともチャックの身の回りにはなかなかいませんでした。しかし、中には、新聞社の意図とは逆に、チャックの行動を好意的に解釈する人もいました。プロバスケットボール選手のアメイジング(アレックス・イングリッシュ)です。この時、まだアメイジングの想いを知らなかったチャックは、下校中にスクールバスの車内で、同級生たちから「地球の終わりか?」と、からかわれていました。チャックが自宅に到着すると、上背があるアフリカ系アメリカ人の男性が庭でバスケットボールをしていました。その男性は、アメイジングでした。アメイジングは、あの新聞記事を読んで、居ても立っても居られず、忙しい合間を縫って、チャックに会いに来たのです。アメイジングは、どうしても野球をやりたいという気持ちになれないチャックに、バスケットボールのドリブルやシュートのコツを丁寧に教えます。チャックは、アメイジングのおかげで、少しだけ笑顔を取り戻す事ができました。



さらに、アメイジングは、ラッセルやパメラにも会い、清々しい笑顔である事を宣言します。なんと、チャックのように、自分もバスケットボールを一切止め、チャックの反核運動に協力するというのです。アメイジングは、もし、「核の全廃」が実現したら、また、バスケットボールをやりたいといいます。最近、ただでさえ、チャックの行動に戸惑っているラッセルは、チャックと行動を共にする仲間が突然、自身の目の前に現れ、さらに戸惑ってしまいます…。



この映画でメガホンを取ったのは、マイク・ニューウェル監督。代表作に、「フォー・ウェディング」(1994年)、「モナリザ・スマイル」(2004年)、「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」(2005年)があります。



一人の野球少年の穏やかな日々から始まったこの映画。しかし、少年が両親の知人からミサイルや核兵器について教わったのがきっかけで、突然、おとぎ話に豹変します。少年は、ミサイルや核兵器の恐ろしさのあまり、野球をやる気力を完全に失い、反核運動に力を注いでいきます。間もなく、彼に共感する仲間も現れ、彼らの行動は、順風満帆かに思われました。しかし、ある新聞記事をきっかけに、少年は、全米中から注目される事になり、少年の家族はひっきりなしに鳴る電話に出続けたり、玄関先までやってくる反核運動反対派の大人たちからの抗議行動に立ち向かったりする事で、次第に心が疲弊していきます。さらに、少年の仲間を襲う突然の悲劇がきっかけで、少年は、「格の全廃」を訴える手段として、自身の口を使って言葉を話す事を放棄し、筆談、または、自身の代わりに父親に話をしてもらう事で言葉を伝えるようになります。少年の沈黙の抗議は、一部の人間の怒りを買いますが、やがて、その努力が実る時が訪れます。具体的に何がどうなるのかは詳しく言えませんが、話が上手くでき過ぎている事だけは確かです。



途中から物語の展開がいかにもおとぎ話らしくなり、登場人物の行動や言動が極端にしか感じられなくなりますが、まだまだ反核運動に対して無理解な人が少なくなかったであろう1980年代のアメリカで、反核運動をテーマにした映画が作られたのは、日本人の一人として、とても嬉しかったです。また、「ローマの休日」(1953年)で知られるグレゴリー・ペックが物語の後半に出演しているのも、興味深かったです。DVDも、Blu-rayも、販売されていないのが非常に残念です。大事な販売情報をお伝えできず、本当に申し訳ございませんでした。





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