緑の光線(1985年 フランス)


緑の光線 (エリック・ロメール コレクション) [DVD]
紀伊國屋書店
2007-05-26

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ある年の7月2日月曜日、フランス・パリにある会社のオフィスで秘書として働くデルフィーヌ(マリー・リヴィエール)は、勤務時間中に、一本の電話を受けます。電話の声の主は、デルフィーヌの友人・カロリーヌでした。しばらくの間、カロリーヌの声に耳を傾けていたデルフィーヌでしたが、時間が経つにつれて、次第に表情が硬くなっていきます。デルフィーヌは、2週間後にカロリーヌら3人の友人たちと一緒にギリシャでバカンスを過ごす予定になっていましたが、ある事情で中止になってしまったのです。

7月3日火曜日、デルフィーヌは、ただ愚痴を聞いてほしくて、とある小さな公園で友人のマニュエラと待ち合わせます。デルフィーヌの提案で、2人で同じ公園の日陰に移動すると、デルフィーヌは早速愚痴をこぼし始めます。前日に、会社にいる自分の元にカロリーヌから電話があり、ギリシャでのバカンスが中止になってしまったと。マニュエラは、「誰か他の人とどこかへ出掛けては?」とアドバイスするのですが、今のデルフィーヌには、バカンスに出掛ける気力がなく、バカンスに付き合ってくれる仲間もいません。マニュエラは、「2週間あれば、誰かは見つかるよ。」と励まします。デルフィーヌから、「誰なの?」と唐突に訪ねられると、具体的な人物の名前をすぐに挙げられませんでしたが、しばらくして、大きな別荘を所有するラウルの名前を挙げます。デルフィーヌは、ラウルの事を冗談だと受け止めます。そこで、マニュエラは、デルフィーヌに一人旅を勧めます。しかし、本人はいまいちやる気が起きません。そもそも、どこへ旅に出たらいいのかが分からないからです。マニュエラは、スペインに住む自身の祖母の家を勧めます。家は海に面した小さな村にあり、村は観光客で溢れていますが、祖母の家を訪ねたら、部屋を貸してくれるかもしれないのです。それでも、デルフィーヌは、ハンサムな男性との火遊びを好まない事から、やる気が起きませんでした。



7月4日水曜日、デルフィーヌは、パリに住む自身の祖父の家を訪れ、祖父やその家族と食事をします。タクシーの運転手から年金生活者となった祖父の今年の夏の予定は、どこへも行かず、家で家事をこなすのみ。祖父は、昔の思い出や近況を語ります。フォシル峠とスイスとの国境の間にあるジュラ地方へ行った時の事、自分のようにタクシーの運転手が2か月に及ぶ休暇を取るのは不可能だった事、60歳の時に生まれて初めて海を見た事、ある年から友人が所有する田舎の家に行くようになり、2か月の間、動物の世話をしたり、庭仕事をして過ごしている事など、話は尽きませんでした。



7月5日木曜日、デルフィーヌは、淡い緑色の服に身を包み、姉夫婦に会いに行きます。目的は、もちろん、今年の夏のバカンスの過ごし方について相談する事です。因みに、姉夫婦の今年の夏の予定は、アイルランドでのキャンプ。夏の暑さが苦手な幼い息子・アラリックのために涼しい場所でバカンスを過ごそうと考えたのです。デルフィーヌは、あくまで失敗しないバカンスの過ごし方を求めているため、姉夫婦を質問攻めにします。姉夫婦は、嫌な顔一つせずに次々と質問に答えていきます。そして、「一緒にアイルランドへ行こう」とデルフィーヌを誘います。しかし、デルフィーヌは、アイルランドで心からバカンスを楽しめないような気がして、首を横に振ってしまいます。その日の帰り、デルフィーヌは、道端に1枚のトランプカードが落ちているのを見つけます。そのカードは、スペードのクイーンでした。デルフィーヌは、カードを何となく手に取り、裏返して置いていきます。裏返されたカードは、緑色に塗られていました。


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7月6日金曜日、デルフィーヌの元に、2年前まで付き合っていた元恋人のジャン・ピエールから電話が入ります。デルフィーヌは、前日に姉夫婦にバカンスの過ごし方について相談し、南仏にあるジャン・ピエールの別荘を貸してもらうよう頼むという結論に達していました。しかし、実際には、別荘を貸してもらう事はできませんでした。ジャン・ピエールは、しばらくの間、山で過ごす事から、山で一緒に過ごす事をデルフィーヌに提案します。デルフィーヌは、山でジャン・ピエールと一緒に過ごす事に関しては何の問題もないのですが、それ以前に、たった一人で山に向かう事に抵抗があり、どうしても提案を受け入れられませんでした。デルフィーヌは、何事においても、一人で行動するのが怖くてたまらないのです。



7月8日日曜日、この日、住宅街の歩道を歩いていたデルフィーヌは、電信柱に緑色の小さなポスターが貼られているのを見つけます。ポスターには、「自分自身や他人との触れ合いを取り戻そう」と書いてありました。デルフィーヌは、メッセージをざっと読み、その場を去ります。その後、デルフィーヌは、友人のベアトリス、フランソワーズらに会い、お茶を飲みながら色々と語り合います。ベアトリスは、一人旅に抵抗があるというデルフィーヌに団体旅行への参加を勧めます。ベアトリスは、デルフィーヌ自身が旅先で男性と出会う事を夢見ているのを分かっていましたし、デルフィーヌが生涯独身のままでいるのは、寂しくて辛いのではないかと考えていたのです。しかし、デルフィーヌは、団体旅行にも抵抗がありました。ベアトリスは、デルフィーヌには荒療治が必要と感じ、「(悩みを)解決したいなら、行動して!」と厳しい言葉をぶつけます。

しばらくして、デルフィーヌたちの話題は、トランプカードの事に。デルフィーヌは、3日前にスペードのクイーンが落ちているのを見ましたが、それ以前にも、トランプカードが道端に落ちているのを何度も見た事がありました。デルフィーヌは、迷信だろうと思いつつも、何度もトランプカードを見るのには、何らかの意味があるのではないだろうかと考えていました。以前、霊能力のある友人は、今年のデルフィーヌの色は緑色だと教えてくれました。それ以来、デルフィーヌは、緑色のポスターを見かけたり、裏側が緑色に塗られたスペードのクイーンを見たりしました。因みに、緑色のポスターや緑色のトランプカードを見た時、デルフィーヌが着ていたのは、淡い緑色の服でした。デルフィーヌたちの話は、盛り上がっていたかに思われました。

しかし、突然、デルフィーヌが人気のない場所に移って、泣き出してしまいます。フランソワーズが心配して、デルフィーヌに近付き、理由を尋ねてみると、デルフィーヌは、こう打ち明けます。2年前のジャン・ピエールとの破局を未だに引きずっていると。そこで、フランソワーズは、デルフィーヌに、一緒にシェルブールにある自身の実家へ行く事を提案します。



7月18日水曜日、デルフィーヌは、フランソワーズと一緒に、シェルブールを一望できる場所にいました。フランソワーズにシェルブールの名所を色々と教えてもらうデルフィーヌ。しばらくすると、デルフィーヌは、同じ場所に一人の若い男性が立っているのを見ます。フランソワーズは、心の中では新しい恋人との出会いを求めているデルフィーヌを気遣い、デルフィーヌに代わって、男性に声を掛けます。男性の名は、エドワール。エドワールは、シェルブールで暮らす船員で、翌日にアイルランドへ行く予定になっていました。3人は、初対面ながら、話が盛り上がります。しかし、デルフィーヌは、新たな失恋を恐れ、エドワールとの心の距離を縮める勇気が出ません…。



「緑の光線」は、1986年に、第43回ベネチア国際映画祭で、最高賞にあたる金獅子賞を受賞しました。監督・脚本は、エリック・ロメール。ロメールは、1920年に、フランス・コレーズ県チュールで生まれました。高校の教員、フリージャーナリストを経て、1950年に映画批評誌「ラ・ガゼット・デュ・シネマ」を創刊。1951年から映画批評誌「カイエ・デュ・シネマ」で執筆活動を行い、1959年に長編映画「獅子座」で監督デビューを果たしました。ロメールは、キャストやスタッフに女性を数多く起用して、映画を製作するのが特徴です。「緑の光線」も例に漏れず、女性のスタッフが、撮影、録音、製作管理担当と、3人起用されており、男性のスタッフはロメールのみでした。ロメールは、「緑の光線」の他に、「O公爵夫人」(1976年)、「飛行士の妻」(1980年)、「木と市長と文化会館 または七つの偶然」(1993年)、「グレースと公爵」(2001年)などを世に送り出し、2010年に89歳で亡くなりました。

今回、あらすじを読んでいただいて、お気付きかと思いますが、この映画で、キャスティングが明らかになっている登場人物は、1人しかいません。主人公・デルフィーヌ役のマリー・リヴィエールのみです。今回、私は、他の登場人物のキャスティングが一体どうなっているのか、たっぷりと時間をかけて調べましたが、全く分かりませんでした。大変申し訳ございません。しかし、これには、れっきとした理由がありました。エリック・ロメールが、デルフィーヌ役のキャスティングと映画全体の大まかなあらすじを決めて撮影を始めたため、デルフィーヌ役以外のキャスティングの詳しい記録がないのです。因みに、台詞については、撮影現場において即興的に作られていたそうです。ロメールの仕事のやり方がいかに独自性が強いものなのかが、本当によく伝わってくるエピソードです。



マリー・リヴィエール演じる主人公・デルフィーヌは、失恋のショックを2年間も引きずっています。さすがに、自分を励ましてくれる友人たちや姉夫婦の気持ちを少しは考え、立ち直ってほしいものなのですが…。さらに、デルフィーヌは、エドワールと出会った後、シェルブールにあるフランソワーズの実家で夕食をごちそうになるシーンがあるのですが、ビーガンであるデルフィーヌは、フランソワーズの家族が腕によりをかけて作ったポークソテーを目の前にして、人間に食べられてしまう動物たちの気持ちを延々と代弁します。私自身はビーガンではありませんが、ビーガンの人たちの動物に対する考え方を尊重する事は常識だと考えています。絶対に端から否定してはいけないですし、できる限り尊重すべきだと思います。しかし、デルフィーヌには、ポークソテーを作った本人を追い詰める資格はありません。本人が傷付かないようにというか、お互いに傷付かないような行動の取り方を考えるべきです。例えば、ポークソテーをもっと食べたい人に自分の分を譲るとか、夕食をごちそうになる前に自分がビーガンである事を正確に伝えて、動物性の食品を避けるよう配慮してもらうなどという発想は、デルフィーヌにはなかったのでしょうか。ポークソテーが目の前に出てからあれこれ御託を並べるのは、いかがなものでしょうか。また、デルフィーヌは、シェルブールの子どもたちが自生していた花を摘んでリースを編んで持ってきたのを見て、「自然を破壊したのね。」と正直に意見をぶつけてしまいます。さらに、デルフィーヌは、ヨットに乗る事やブランコに乗る事について、「どちらも酔ってしまうから苦手だ」と告白しています。とにかく、誰に対しても配慮の足りなさが否めない大人です。



この後、デルフィーヌは、自分の殻を破る事ができず、フランソワーズと一緒にパリへ帰ってしまいます。シェルブールの人たちは、「自分たちに不満があったのだろうか。」と残念がります。しかし、デルフィーヌは、フランソワーズが仕事の都合で先にパリへ帰ると知り、「そうなると、私は一人きりになるのと同じだ。寂しくなる。」と考え、フランソワーズについて行く事にしただけだったのです。パリへ戻ったデルフィーヌは、相変わらず過去に翻弄される日々を送りますが、ある日、スコットランドを舞台にしたジュール・ヴェルヌの小説の存在を知ります。その小説のタイトルが、「緑の光線」です。「緑の光線」は、デルフィーヌにどう影響を与えてくれるのでしょうか。この映画のラスト13分間に、その答えが隠されていますよ!


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