アナザー・カントリー(1984年 イギリス)


アナザー・カントリー HDニューマスター版 [DVD]
Happinet(SB)(D)
2010-01-29

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1983年、ソビエト(現・ロシア)・モスクワ。「バラック G2」と呼ばれる建物に、1台の黒い車が入っていきます。この車の後部座席に座るアメリカの女性ジャーナリスト・スコフィールド(ベッツィー・ブラントリー)は、ここで暮らす男性、ガイ・ベネット(ルパート・エヴェレット)にインタビューを行う予定になっていました。スコフィールドは、車を降りると、ガイの身の回りの世話をしている男性の出迎えを受け、ガイの自宅の中へと案内してもらいます。そして、しばらくの間、ガイを待っていると、ガイが車椅子に乗って姿を現します。お互いに挨拶を済ませると、すぐに、インタビューが始まります。実は、ガイは、生まれも育ちもソビエトではありません。ガイは、イギリス人で、しかも、特権階級の家庭で生まれ育った人物なのです。ガイ曰く、名声を求め、わざわざイギリスからソビエトに亡命した元スパイなのだとか。なぜ、ガイは、イギリスの非常に恵まれた環境を捨てて、ソビエトに渡ったのでしょうか。


英国パブリック・スクールへようこそ!
新紀元社
石井 理恵子

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時は遡り、1930年代のイギリス。当時、ガイは、「パブリック・スクール」と呼ばれる、全寮制の男子校に在籍していました。最終学年への進級を間近に控えていたガイは、学校の生徒が運営する自治会のエリートメンバー「ゴッド」に選ばれる事になっていました。ガイが「ゴッド」に選ばれると、礼服を着る際に、色の付いたチョッキを着る事が許されます。そして、将来、外交官、パリ駐在大使と、エリートコースを歩む事が約束されていました。ガイには、トミー・ジャド(コリン・ファース)という、同じ学校に在籍する親友がいました。ジャドは、ソビエトの革命家・レーニンを心から敬う共産主義者でした。ジャドは、エリートコースを歩む事を夢見るガイを冷ややかな目で見ていましたが、2人の友情は見事に保たれていました。



ある夏の日、校内では、ある追悼式典が行われていました。それは、第一次世界大戦の際、出征し、戦死した卒業生たちを追悼する式典でした。会場には、多くの兵士たちが並び、生徒たちや聖歌隊の子どもたちが歌を歌っていました。式典に出席していたガイは、自身とは別の寮で暮らす生徒、ジェームス・ハーコート(ケイリー・エルウェイズ)の顔の美しさが何となく気になっていました。一方、この大切な式典をサボる2人の生徒がいました。2人は、誰もいない、体育館の更衣室で性行為に夢中になっていました。しかし、その最中に、寮の舎監がそれを目撃してしまい、生徒たちは、舎監に見られてしまったショックで、舎監は、見てはいけないものを見たショックで、それぞれ動揺してしまいます。



また、この日は、親元を離れて暮らす生徒たちにとって、待ちに待った面会日でした。生徒たちは、卓球をして遊んだり、本を開いて勉強したりして過ごし、中には、はしゃいだり、テーブルの上に飛び乗ったりと、幼い子どもたちのように、暴れ回っている者もいました。そんな中、舎監に目撃されてしまった生徒の一人が、代表のメンジース(フレデリック・アレクサンダー)に呼び出されます。生徒が足を運んだのは、誰も来ていない教会でした。教会を静かに歩く生徒の姿を、ガイは、双眼鏡を使い、自室の窓から興味津々の様子で見つめていました。



しかし、あの出来事の件は、いつの間にか、校長の耳に入り、生徒は自ら命を絶ってしまいます。メンジースをはじめとする寮の代表たちは、彼の死を2度とあってはならない事だと認識はしていましたが、どの寮にも、大なり小なり、スキャンダルが存在しているものだと諦めていました。彼らにできる事は、校内で祈祷会を開いて、同性愛の否定を誓う事しかありませんでした。



次の土曜日、ガイは、母親のイモージェン(アンナ・マッセイ)と一緒に、パーティーに出席します。道中、母子は、自ら命を絶った生徒の話題を口にしていました。ガイも、イモージェンも、生徒の死を残念に思いつつも、同性愛の存在を否定していました。その後、2人は会場に到着し、ガイは、イモージェンの再婚相手で、イギリス軍の大佐・アーサー(ジェフリー・ウィッカム)と対面します。アーサーは、「全寮制の学校を中退して、社会勉強をすべきだ」と、ガイに冗談を言います。ガイは憤りを覚え、「人を殺すとか?」と言い返し、イモージェンに声を掛けて、一緒にその場を去ります。イモージェンは、アーサーに失礼な態度を取ったガイをたしなめますが、ガイはイモージェンに向かって、「(学校での)10年間の努力が水の泡となってしまう」と怒りをぶつけるのでした。



同じ日の夜、ガイは、クラウンホテルのレストランで、ジェームスと食事をします。実は、数日前に、ガイがジェームスにこっそりとメモを渡す形で、ジェームスを食事に誘っていたのです。食事中、ガイは、今は亡き父親の話をし始めます。父親は、ガイが14歳の時に、突然、心臓病で亡くなりました。ガイは、父親の最期の様子を淡々と語ります。ガイが当時の様子を淡々と振り返られるのには、理由がありました。父親の下品な振る舞いが嫌いだったからです。そして、1人になってしまった母親は、初婚の時と同じく、下品な振る舞いの男性を選んで、再婚してしまったのです。



その後、寮に戻ったガイは、寝室のベッドに横になりますが、なかなか眠れませんでした。真夜中になっても、まだまだ眠れそうにありません。ガイは、今まで味わった事のない、幸せな感情に支配されていたのです。ガイは、真夜中にもかかわらず、勉強中だったジャドの部屋を訪ねます。ガイは、酔いが回っていたせいか、突然、ジャドの事を「トミー」と呼び、「純愛にめぐり逢えた」と告白します。ガイをそういう気持ちにさせた相手は、他でもない、ジェームスでした。実は、ガイは、表向きは同性愛を否定していますが、本当はそうではなかったのです。ガイも、自ら命を絶った、あの生徒と同様に、同性愛が周囲に知られるのを酷く恐れていたのです。



ある日、メンジースは、ガイが卑猥な言葉で男性への恋心を口にしているところを目撃し、たしなめます。自ら命を絶った生徒の件で、デヴェニッシュ(ルパート・ウェインライト)が親の命令で退学し、軍国主義者として有名なファウラー(トリスタン・オリヴァー)が寮長に就任し、さらに、ガイも責任ある立場に近付いていたからです。ガイは、いつの間にか、寮の中での出世争いに巻き込まれていたのです。ジャドもまた、同じ争いに巻き込まれそうになりますが、そんなくだらない争い事には、これっぽっちも興味がありませんでした。そこで、メンジースは、何としてもジャドを幹事にすべく、ガイにジャドを説得するよう頼みます。ガイには、ジャドを説得する自信がなかったのですが、「言う事を聞かないと、お前は代表になれないぞ」とメンジースから脅されてしまいます。しかし、ガイは、脅しに屈しまいと、あの手この手でメンジースに刃向かおうと決めます。寮自体の閉鎖的な環境に、嫌気がさしてしまったのです…。



この映画は、実際にイギリス全土を騒がせたスパイ事件の中心人物であるガイ・バージェスをモデルにした、1981年初演の舞台劇を映画化したものです。1984年に、第37回カンヌ国際映画祭で芸術貢献賞を受賞しています。バージェスは、スパイ集団「ケンブリッジ・ファイヴ」のメンバーで、1951年にソビエトに亡命しています。因みに、この映画の原作にあたる舞台劇には、ガイを演じたルパート・エヴェレットやジャドを演じたコリン・ファースが出演しており、2人は、舞台劇に続いて、映画にも出演しました。ファースが映画に出演したのは、この時が初めてだったそうです。



また、ガイやジャドが在籍するパブリック・スクールにもモデルが存在します。これまで、イギリスの数多くの王族や貴族が在籍した「イートン校」です。劇中に登場するパブリック・スクールは、「イートン校」に負けないくらいの気品が漂っています。しかし、それと同時に、生徒の出世争い、同性愛の無理解、上級生の威圧感など、現代とは全く正反対の悪しき文化が厳しく守られていたのが印象に残りました。パブリック・スクールの生徒を演じた俳優たちの美貌が印象に残る方もいらっしゃるかもしれませんが、私は、それよりも、これらの悪しき文化の方が印象に残り、「これらを反面教師にして、生きていかなければならない」と、改めて感じました。


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