男と女(1966年 フランス)





フランス・ノルマンディー地方の町・ドーヴィル。真冬のある日、曇り空の海岸で、映画のスクリプト・ガール(※映画の撮影の進行を記録する仕事。)として働くアンヌ(アヌーク・エーメ)が、幼い娘・フランソワーズ(スアド・アミドゥ)に、童話「赤ずきん」の話を聞かせています。しかし、フランソワーズは「怖いお話だから」と言って、「赤ずきん」の話を聞くのを嫌がっています。「じゃあ、何がいいの?」とアンヌが聞くと、フランソワーズは、「『青ひげ』がいい」と答えます。アンヌは、フランソワーズの望み通り、「青ひげ」の話を始めます。





一方、同じ海岸の一角では、サングラス姿の若い男性、ジャン・ルイ・デュロック(ジャン・ルイ・トランティニャン)が、葉巻をくわえたまま、立っていました。ジャン・ルイは、真っ赤なオープンカーの助手席に座り、雑誌を広げながら、運転手に、ゴルフ場まで運転するよう頼むのですが、そう言った矢先に、気が変わり、「ゴーカート場に行こう」、「いや、港にしようか」、「いや、やっぱりゴルフ場だ」、「いやいや、やっぱりゴーカートだ」と、計画が二転三転します。そんな気まぐれに付き合わされていた運転手は、驚くべき事に、ジャン・ルイの幼い息子・アントワーヌ(アントワーヌ・ジレ)でした。ジャン・ルイは、アントワーヌの小さな両手に自分の両手を添えて、楽しそうに運転を手助けするのでした。


男と女 オリジナル・サウンドトラック 2016リマスター・エディション
日本コロムビア
2016-09-07
フランシス・レイ/ピエール・バルー他

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その後、「青ひげ」の話を終えたアンヌは、フランソワーズと一緒に、海岸の近くの市場を散策していました。フランソワーズは、「チョコレートが欲しい?」と尋ねるアンヌに、「ケーキが欲しい」とケーキをねだります。アンヌが何度同じ質問をしても、フランソワーズの答えが変わる事はありませんでした。一方、オープンカーに乗ったジャン・ルイとアントワーヌは、結局、砂浜でドライブを楽しんでいました。アントワーヌは、ただただ運転が楽しくて、ずっと声を上げて笑っていました。



アンヌは、フランソワーズをドーヴィルにある寄宿舎まで送り届けます。それから間もなくして、ジャン・ルイも、アントワーヌを同じ寄宿舎まで送り届けます。アントワーヌと別れたジャン・ルイは、その場で、ある女性を助手席に乗せ、寄宿舎を離れます。その女性は、アンヌでした。2人は、大雨が降る中、カーラジオから流れるシャンソンに耳を傾けながら、色々な事を語り合います。アントワーヌも、フランソワーズも、勉強があまり好きではない事、独身にしか見えないジャン・ルイにも妻・ヴァレリー(ヴァレリー・ラグランジュ)がいる事、アンヌにもスタントマンをしている夫・ピエール(ピエール・バルー)がいる事など、2人共、大雨の事を忘れるくらい、話に夢中になります。



その後、2人は、パリ18区のラマルク通りに着きます。ここは、アンヌが一人で住んでいるアパルトマン(※集合住宅の事。)がある所です。別れ際、ジャン・ルイは、次の週末にドーヴィルでアンヌとピエールに会いたいと思い、会う約束を持ちかけます。しかし、アンヌは、そんな約束をする事ができませんでした。なぜなら、ピエールが、既にこの世を去っていたからです。ピエールは、戦争映画の撮影中、爆弾から至近距離の所で演技をしていた時に爆弾が爆発し、命を落としてしまったのです。ジャン・ルイは、次の土曜日の昼に電話をして、会えるかどうかを尋ねる事にします。ジャン・ルイは、アンヌに電話番号を教えてもらい、オープンカーの運転席の近くにあった1枚の紙にそれを書き留めるのでした。



次の土曜日、ジャン・ルイはサーキット場に来ていました。レーシングスーツに身を包み、自身が運転する真っ白なレーシングカーの調整を見守るジャン・ルイ。そして、調整が終わると、ヘルメットを被り、レーシングカーに乗り込みます。実は、ジャン・ルイは、プロのカーレーサーで、8日後に、世界各国からトップクラスのレーサーが集結する第35回モンテカルロ・ラリーを控えていました。優勝候補は、フィンランドのチームでしたが、ジャン・ルイは、それを覆すべく、日々、仲間たちと一緒に研究に励んでいました。その後、ジャン・ルイは、忙しい合間を縫って、教えてもらったあの電話番号に電話をします。電話をした結果、ジャン・ルイは、翌日にアンヌに会えることになりました。





翌日、ジャン・ルイは、パリ・ラマルク通りにあるアンヌのアパルトマンを訪ねます。出入口の前にオープンカーを止めて、しばらく待っていると、アンヌが姿を現します。ジャン・ルイは、アンヌを助手席にエスコートし、各々の子どもが待つ寄宿舎へ向かいます。この日も、パリは大雨でした。カーラジオからはカップルの交通死亡事故のニュースが聞こえてきて、2人は気分が落ち込みますが、すぐに気分を切り替えて、ジャン・ルイの仕事の話をし始めます。その後、いつもより遅い時間に寄宿舎に到着した2人は、各々の子どもを迎えに行きます。



寄宿舎を出た4人は、レストランに立ち寄ります。食事中、ジャン・ルイの仕事の話やアントワーヌの将来の夢の話などで、一行は大いに盛り上がります。ジャン・ルイは、隣に座っていたアンヌの背中にそっと左手を置いていました。食事が終わった後、4人は、海岸へ行き、1艘の船に乗せてもらいます。船に乗せてもらっている間、4人はまるで本物の家族のように仲睦まじい様子でした。その後、4人は、しばらく砂浜を散策し、帰宅の途に就きます。



ジャン・ルイが運転している間、アンヌは、ハンドルから離れていたジャン・ルイの右手に、自分の左手をそっと重ねていました。アンヌは、ヴァレリーがどんな人なのかが気になり、ジャン・ルイに尋ねます。しかし、その瞬間、ジャン・ルイは、突然、表情が硬くなります。実は、ジャン・ルイは、以前に、ル・マン24時間耐久レースに出場した事がありました。その際、ジャン・ルイは、事故で意識不明の重体になり、搬送先の病院で3時間にわたる大手術を受け、奇跡的に助かりました。しかし、事故の一報を聞いて、病院に駆けつけたヴァレリーは、激しく動揺し、自ら命を絶ってしまったのです。



やがて、ジャン・ルイは、モンテカルロ・ラリーの開幕日を迎えます。ジャン・ルイは、出発地点のフランス・ランスを出て、ひたすらゴール地点のモナコ・モンテカルロを目指します。一方、アンヌは、毎日、仕事をこなしながら、ジャン・ルイの無事を祈っていました。その後、ジャン・ルイは、無事にゴールします。惜しくも優勝は逃してしまいましたが、レース中に事故に遭わなかったのは、何よりも良かった事でした。テレビのニュースでジャン・ルイのゴールを知ったアンヌは、モンテカルロにいるジャン・ルイに電報を送ります。電報には、「ブラボー、愛してます。」と綴られていました。ジャン・ルイは、美人なアンヌが愛の言葉を使って電報を送るという大胆な行動を取った事に衝撃を受け、居ても立っても居られなくなり、…。



フランス映画史上最高のラブストーリーと言っても過言ではないこの映画でメガホンを取ったのは、当時、29歳の新人監督だったクロード・ルルーシュ監督。自ら資金を調達して、制作したそうです。モノクロ映像と、カラー映像の両方が用いられているのですが、どちらもあまりにも美しく仕上がっており、低予算で制作された事がとても信じられません。1966年に第19回カンヌ国際映画祭でパルムドールを、1967年には第39回アカデミー賞で外国語映画賞と脚本賞を、それぞれ受賞しています。また、この映画の劇場公開から20年後の1986年には、同じ監督、キャストで、アンヌとジャン・ルイの20年後の再会を描いた続編「男と女Ⅱ」が制作されています。



そして、「男と女」といえば、音楽について触れない訳にはいきません。この映画の音楽を手掛けたのは、フランシス・レイ。どの曲も、大人のムードが物凄く漂い、何度でも聴きたくなるようなものばかりです。中でも、ニコール・クロワジールとピエール役のピエール・バルーによるデュエットで歌われている主題歌は、あまりにも有名です。物語の最初の方で、ジャン・ルイがアントワーヌに車の運転をさせるシーンが終わった後に、「♪ダ~バ~ダ、シャバダバダ、シャバダバダ」というスキャットが初めて流れるのですが、それを聴いた瞬間、「わあ、あの歌だあ!」と、思わず感激してしまいました。



そして、そして、「男と女」といえば、主役の2人にも触れなければなりません。DVDのジャケットをご覧いただいたように、アンヌ役のアヌーク・エーメも、ジャン・ルイ役のジャン・ルイ・トランティニャンも、ため息の出るような美しさです。それ故に、アンヌが電話で電報を依頼するシーンで、何の迷いもなく、愛の言葉を口にした瞬間には、もうドキドキしました。その後、ジャン・ルイがアンヌからの電報に心を奪われた瞬間の表情や、その後のジャン・ルイの台詞の一つ一つにも、ドキドキしました。私は、興味を持ったどの方にも楽しんでいただけたらと思うのですが、年齢をある程度重ねて初めて理解できる心情が随所に散りばめられているので、特に、30代以上の大人の方に楽しんでいただきたいと思っています。ぜひ一度チェックを!





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この記事へのコメント

アールグレイ
2019年02月15日 06:17
映画館で観ました。アヌーク・エーメの大人度に、ビックリしました。これがフランス映画なのか!と思いました。音楽もとても印象に残りました。一緒に観た友達は、ジャンルイ・トランティニヤンのファンになりました。私も好きです。2,3度観ていますが、ご紹介文を読ませていただき、もう1度観たいと思いました。青春時代の宝物です。
2019年02月15日 12:21
劇場公開当時のアヌーク・エーメやジャン・ルイ・トランティニャンの人気の高さは、本当に凄かったんですね。

ぜひ、もう1度ご覧になって、この映画の空気を楽しんでいただけたらと思います。

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