わたしを離さないで(2010年 イギリス アメリカ)


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1952年、医学界に画期的な進歩が訪れます。不治の病と言われた疾患の治療が可能となり、1967年には、人類の平均寿命が100歳を超えたのです。1994年、ある病院の手術室に、一人の若い男性が入っていきます。その様子を、一人の女性が手術室の外から静かに見守っています。女性の名は、キャシー・H(キャリー・マリガン)、28歳。介護人と呼ばれる職業に就いて、9年になります。その仕事ぶりは実に見事で、仕事中に取り乱した事は一度もありません。しかし、キャシーは、あくまで生身の人間。時には、疲れ果ててしまう事もあります。そのせいか、最近、キャシーは、かつてコテージやヘールシャムで過ごした日々を思い出す事がしばしばありました。キャシー、キャシーの幼馴染・トミー(アンドリュー・ガーフィールド)とルース(キーラ・ナイトレイ)の身に起きた事を。


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1978年、寄宿学校「ヘールシャム・ハウス」では、大勢の生徒たちが、毎日、生物学、美術、体育等の教科を学ぶだけでなく、飲食店での注文の仕方といった社会的な訓練も受けていました。ある日、生物学を教えている、この学校の校長・エミリー(シャーロット・ランプリング)は、講堂に集まった生徒全員の前で、煙草の吸い殻が花壇に落ちていた事を報告すると、このように念を押します。「よそのどの学校にもまして、この学校の生徒は煙草を吸う事は絶対にあってはなりません。」「ヘールシャムの生徒は、特別なのです。元気でいる事、体を健康に保つ事が、何よりも重要なのです。」


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そんなある日、ルーシー(サリー・ホーキンス)が、新たに教員として「ヘールシャム・ハウス」にやって来ます。「ヘールシャム・ハウス」が新たに教員を迎えるのは、久々の事でした。ルーシーは、この学校にやって来て早々に、ある奇妙な校則の存在を知ります。何と、生徒たちは、何があっても、学校の外に出てはならないのです。生徒たちが野球をして遊んでいた時に、学校の外まで飛んだ打球を誰も取りに行かなかったのを不思議に思ったルーシーが、近くにいた4年生の生徒・キャシー(イゾベル・ミークル=スモール)、ルース(エラ・パーネル)たちに理由を尋ねると、「学校の外に出てはならないという校則がある。」と返事が返ってきたのです。以前に、ある男子生徒が同じ学校の生徒と喧嘩をして、学校の外に飛び出した事があり、男子生徒は2日後に学校に戻ってきたのですが、その時に、男子生徒は、何と、既に亡くなっていた状態で、手と足を切り落とされ、木に縛られたのです。喧嘩の相手も、学校の外に飛び出し、慌てて学校に戻ろうとしたのですが、何日経っても入れてもらえず、餓死してしまいました。キャシーたち曰く、生徒が命を落とすと、必ず、エミリーをはじめとする教員たちが、戒めの意味で、生徒全員に話の一部始終を報告するとの事。ルーシーにとって、それらは何とも信じ難い事実でした。


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普段、生徒たちは、学校の外に出てはならないのですが、場合によっては、例外が認められていました。その際は、必ず、各生徒が、左の手首に巻かれたブレスレットを専用の機械にかざし、それから外に出なければなりませんでした。さらに、生徒たちは、定期的に健康診断を受けなければなりませんでした。学校には医師と看護師が常駐しており、臓器に異常がないか、怪我を負っていないか、厳しくチェックされるのです。ある日、キャシーは、看護師から頬にアザができている事を指摘されますが、医師は、アザが極めて小さかったため、異常なしと判断します。



ある日、キャシーは、ルーシーの部屋を訪ねます。ルーシーがトミー(チャーリー・ロウ)と話をしているのを見かけたため、話の内容を教えてもらおうとしたのです。ルーシーは、「気分を落ち着かせようとした。」と説明します。トミーは、運動や絵が不得意なのが人に知られるのが嫌で、つい興奮して、イライラしてしまうのを心配して、「不得意なものがあるのは、決して悪い事ではない。」と、トミーの気分を落ち着かせようとしたのです。キャシーは、ランチの時間に食堂へ行き、トミーと一緒にランチを食べます。トミーは、イライラしてしまった事をキャシーに謝り、キャシーは、素直にそれを受け入れるのでした。



そんなある日、ある女性が「ヘールシャム・ハウス」を訪れます。この学校の支援者であるマダム・マリー=クロード(ナタリー・リシャール)です。マダム・マリー=クロードは、生徒たちが美術の授業で描いた絵を鑑賞し、気に入ったものを持ち帰ろうと考えていました。エミリーは、マダム・マリー=クロードに精一杯のおもてなしをするよう生徒たちに伝え、さらに、翌日の放課後に販売会を行う事を発表します。販売会とは、生徒たちが、普段貯めている「交換コイン」と呼ばれる、「ヘールシャム・ハウス」独自のコインを使って、買い物をする行事です。生徒たちは、発表を聞き、大歓声を挙げます。さらに、翌朝、販売される品物が届くと、「待ってました」とばかりに、再び大歓声を挙げます。しかし、いざ販売会が始まると、キャシーは浮かない顔をしていました。トミーがキャシーの姿を見つけ、理由を聞くと、キャシーは、「混雑が収まるまで待ちたい」と答えます。トミーは、販売会で買ったジュディ・ブリッジウォーターのカセットテープを手渡すと、キャシーは感謝し、自室に持ち帰って、ブリッジウォーターの歌う甘く切ないバラードに静かに耳を傾けるのでした。


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ある雨の日、ルーシーが教室の黒板の前に立ち、神妙な面持ちで、ある重大な事実を生徒たちに打ち明けます。実は、「ヘールシャム・ハウス」で生活する生徒たちは皆、臓器提供者になるためだけに生まれてきたのです。どの生徒も、成人になり、老いる前に、数回に分けて臓器を提供し、3~4回目の頃には、提供できる臓器を全て提供し終えて、死を迎えるしかないのです。ルーシーは、「ヘールシャム・ハウス」に来る前にこの事実を聞かされていましたが、道徳的に許されないという憤りで、涙を流してしまいます。一方、生徒たちは、自分たちが生まれた理由を初めて知ったものの、この理由の何がどう悲しいのかを、上手く理解できませんでした。ルーシーは、この日を最後に、「ヘールシャム・ハウス」を去ります。エミリーは、今後、自身と教員のジェラルディンが4年生の授業を受け持つ事を発表した上で、生徒たちにこう宣言します。「自分たちの目的は進歩的で、反対勢力が存在するのは事実です。しかし、私は決して(反対勢力に)屈しません。」エミリーには、「臓器提供を行うための人間を数多く育成して、助からない命を全て助けてみせる」という、強い想いがありました。



1985年、18歳になったキャシー(キャリー・マリガン)、トミー(アンドリュー・ガーフィールド)、ルース(キーラ・ナイトレイ)は、「ヘールシャム・ハウス」を巣立ち、農村のコテージに移ります。キャシーは、トミーに片想いをしていましたが、残念ながら実る事はなく、トミーはルースと恋人同士になっていました。「ヘールシャム・ハウス」の生徒たちは、18歳になったら、「ヘールシャム・ハウス」から、決められた施設に移らなければなりません。そして、各生徒にとって臓器提供に適した年齢になるのをひたすら待つのです。しかし、生徒たちは、必ずしも、適した年齢になってすぐに臓器提供者にならなければならない訳ではなく、移植を受ける事を希望する入院患者を世話する介護人になる事を希望すれば、臓器提供の猶予が許されていました。施設に移った生徒たちには、外出や日帰り旅行ができる自由が与えられていました。施設には、「ホワイト・マンション」、「オーク・ヒル」、「モーニング・デイル」といった他校の出身者もいました。キャシーたちより1年以上早くコテージに移っていた、他校出身のカップルのロドニー(ドーナル・グリーソン)とクリシー(アンドレア・ライズブロー)は、間もなく、「終了センター」と呼ばれる、臓器を提供する前の最終段階を過ごす施設に移ろうとしていました。



ある日、キャシーは、ルースから、ある情報を聞かされます。ロドニーとクリシーが、ノーフォークにある旅行会社で、ルースの実の母親らしき女性が働いているのを見かけたというのです。「(女性は)自分に顔がよく似ているそうだから、一度、自分の目で事実を確かめに行きたい。」というルースに、キャシーはついて行く事にします。数日後、ロドニーの運転する車に、クリシー、キャシー、ルース、トミーが乗り、一路ノーフォークへ向かいます。ノーフォークに着いた一行は、食堂で食事を摂ります。その時、キャシー、ルース、トミーの3人は、ロドニーとクリシーから、「ヘールシャム・ハウス」独自のルールがあるらしいという情報を聞かされます。その内容は、臓器提供者同士のカップルは、何か愛し合っている証拠を示す事ができたら、臓器提供が猶予され、猶予期間中はずっと一緒に暮らせるというもので、ロドニーとクリシーは、3人なら、詳しい申請方法を知っているのではと思い、尋ねます。しかし、3人には初耳でした。ロドニーとクリシーは、まさかの展開で、絶望感に襲われます。しかし、この情報が、後に3人の運命を決定づける大きな要因になるとは、誰にも分かりませんでした…。



「わたしを離さないで」の原作は、日系イギリス人作家のカズオ・イシグロが2005年に発表した同名タイトルの長編小説です。イシグロは、1989年にイギリスで最高の文学賞と言われるブッカー賞を、2017年にはノーベル文学賞を受賞しており、輝かしい受賞歴を誇っています。「わたしを離さないで」は、このように映画化されただけでなく、日本で、舞台化、ドラマ化もされています。因みに、このタイトルは、キャシーが幼い頃に「ヘールシャム・ハウス」の自室で聴いたジュディ・ブリッジウォーターのカセットテープに収められている曲の歌詞の一部に由来しています。



キャシーを演じたキャリー・マリガンは、冒頭で見せる、酸いも甘いも噛み分けた、落ち着いた大人の表情が印象的です。一方、キーラ・ナイトレイが演じたルースは、物語の後半で、事あるごとに怒りを露わにする姿が印象的です。ルースのどの怒りにも、若者ならではの理由があり、彼女の気持ちに共感してしまう若者は少なくないと思いますし、また、大人も何となく懐かしい気持ちにさせられるのではないでしょうか。また、アンドリュー・ガーフィールドが演じたトミーは、主に人間関係で悩みを抱えますが、その姿は、運動や絵に対する苦手意識が酷かった少年時代とは違い、トミー自身を美しくさせているように感じられました。医学における倫理がテーマの映画で、ストーリーを難しく感じる方が少なくないと思いますが、「ヘールシャム・ハウス」の仕組みを覚えると、エミリーの行き過ぎた正義感や、キャシーたちのごく限られた時間だけ許された自由等について考えさせられる、味わい深い映画である事が分かります。複雑なストーリーが苦手な人であればあるほど、ぜひ一度観ていただきたい映画です。


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