クリスマスのその夜に(2010年 ノルウェー・スウェーデン・ドイツ)


クリスマスのその夜に [DVD]
角川書店
2012-11-16

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コソボ共和国。かつて、セルビア共和国の一部だったこの国に住む少年・ゴランは、姉妹のアンカと一緒に、自宅のリビングでテレビを観ていました。テレビに映っていたのは、アメリカ・ニューヨークのクリスマスツリーの点灯の様子を伝えるニュース映像でした。同じ頃、キッチンでは、母親が食事の支度をしていました。その時、遠くから銃声が聞こえてきます。ゴランは、その瞬間、どこかへ行ってしまいます。母親は、アンカにゴランの居場所を尋ねますが、アンカは「知らない」と答えるだけ。母親は、アンカに留守番を頼み、一人でゴランを探しに出掛けます。



ゴランは、近くの古びた建物の中にいました。中には誰もおらず、机や椅子、壁紙などがボロボロになっていました。しばらくして、母親がゴランのいる建物を訪れます。それから間もなく、母親は無事にゴランを見つける事ができました。その後、ゴランは、巨大な樅ノ木を見つけ、重たそうに抱えながら、建物の外を歩いていました。しかし、その瞬間、建物の警備員が遠くからゴランの方に銃口を向けます…。



ノルウェーのとある小さな町。大雪が降っているクリスマスイヴの夜、どこまでも続く森を貫く道を、一人の男性(イゴル・ネセメル)が身重の妻(ニーナ・サンジャニ)と一緒にゆっくりと歩いています。その頃、33歳になる男性・パウル(トロン・ファウサ・アウルヴォーグ)は、友人で医師のクヌート(フリチョフ・ソーハイム)の元を訪れます。「今年は散々な年だった」と愚痴をこぼすパウル。クヌートは、「男の33歳はいろいろあるのさ」と優しく励まします。

実は、パウルは、ある事情で、妻・トネ(クリスティーネ・ルイ・シュレッテバッケン)から締め出されていました。いくらトネが相続した家とはいえ、自分がトネによって追い出され、そこへ、ホロアルと名乗るトネの職場の新人が勝手に転がり込んでくるのは、トネの夫としては、どうも納得がいきません。家族を養うために一時期は音楽教師を目指した事もあったパウルでしたが、トネが「変われ」と言ってくるという事は、大きな夢を叶えたい自分に嫌気がさしたとしか思えません。パウルは、クリスマスイヴを迎えたこの日までの7週間、息子のトルビョルンにも、娘のトゥーリッドにも、1度も会わせてもらえずにいました。クヌートは、「僕からもらったと言うな。医師免許を剥奪されてしまう。」と言って、薬の入った紙袋をこっそりとパウルに渡します。



同じ頃、町の玩具屋のショーウィンドーの中に展示されている鉄道模型をじっと眺める少年・トマス(モッテン・イルセン・リースネス)の元に、学校の上級生で、イスラム教徒の女子生徒・ビントゥ(サラ・ビントゥ・サコール)が声を掛けてきます。「ウチは、イスラム教だから、クリスマスのお祝いをしないの。」と事情を明かすビントゥに、トマスも「ウチもそうだ。サンタを信じていない。」と同じように事情を明かします。その後、トマスは、ビントゥのアパートに招待されます。トマスは、ビントゥの父親に歓迎され、そして、ビントゥと一緒に、アパートの外で、望遠鏡を使って、天体観測をして過ごすのでした。



同じ町にあるスポーツ用品店のショーウィンドーの前には、一人の年老いた男性・ヨルダン(ライダル・ソーレンセン)が立っていました。ヨルダンは、しばらくの間、サッカーボールやサッカーのユニフォームが展示されているショーウィンドーに見入っていました。しかし、その後、ヨルダンは、なんと、無賃乗車をし、すぐに乗務員に怪しまれ、電車から追い出されてしまいます。



クヌートと妻・エリサ(セシル・モスリ)は、毎年、クリスマスになると、エリサの母が暮らす家で過ごしていますが、クヌートが急患の診察で病院に呼び出される事が少なくありませんでした。今年のクリスマスイヴは、2人で一緒に自宅で過ごし、クリスマスに対する考え方について話していました。各々の考え方は実にバラバラでした。クヌートは、「クリスマスは偽善的でご免だ」とクリスマス自体を嫌い、エリサは、クリスマスイヴを教会で過ごす事を好んでいました。子どもを持つかどうかについても、エリサは積極的でしたが、クヌートは消極的でした。そんな時、クヌートは、急患の診察の依頼の電話が入ったため、自宅を後にし、車で病院へ向かいます。しかし、その途中、クヌートの運転する車に、いきなり男性が乗車し、クヌートは脅迫行為を受けます。クヌートは、どうにか男性を落ち着かせ、車の運転を再開します。



無賃乗車していた電車から追い出されたヨルダンは、しばらくの間、町中を彷徨います。そして、その途中、1台のキャンピングカーを見つけます。ヨルダンは、キャンピングカーの中を覘いた後、隣に停めてあった軽トラックに近付き、ドアに手を掛けます。すると、防犯用のサイレンのけたたましい音が鳴り響き、キャンピングカーの中から住民の女性・ヨハンヌ(イングン・ベアテ・オイエン)が出てきます。ヨハンヌは、今年だけで既にクリスマスツリーを8本も盗まれていたため、気が滅入っていました。サイレンが鳴った事に気付いた警備員が、キャンピングカーまで駆けつけ、ヨルダンを強盗犯だと判断して、警察に引き渡そうとします。しかし、ヨハンヌは、なぜかヨルダンが警察に引き渡される事をひどく嫌がります。警備員は、ヨハンヌの心情に考慮し、警察を呼ぶのを止め、その場を去っていくのでした。



男性から脅迫行為を受けたクヌートは、男性の指示通りに車を運転します。クヌートが辿り着いたのは、男性の隠れ家でした。実は、男性の妻が産気付いたため、クヌートに赤ん坊を取り上げてほしかったのです。クヌートは頼みを引き受けますが、最初に、なぜ救急車を呼ばないのかを男性に訪ねます。すると、陣痛に苦しんでいた妻は、それを聞いて、突然、顔を強張らせます。実は、この夫婦は、コソボ共和国からスウェーデンに住む男性の姉の家に向かう途中だったのですが、アクシデントが発生したため、ノルウェーに留まっていたのです。もし、セルビア人である夫と、アルバニア人である妻が、一緒にコソボに帰ったら、人種の違いを超えて恋に落ちたのを理由に、それぞれが家族に殺される可能性が高いのです。



一方、パウルは、こっそりと自宅に戻っていました。とても入れてもらえそうにない我が家の様子を、誰にもバレないようにそっと覘き込むパウル。トルビョルンとトゥーリッドは、リビングでテレビを観ていました。また、トネは、キッチンに立っていました。すると、トネの背後からホロアルが近付き、トネに何度も優しくキスをします。パウルの心中が穏やかでないのは、言うまでもありません。パウルは自宅の外にある小屋の中に入ります。そこには、トネとホロアルがトルビョルンやトゥーリッドに渡すクリスマスプレゼントがありました。パウルは、目の前にサンタクロースの衣装があるのを見つけ、勝手に着替えてしまいます。ふと遠くに目をやると、ヨルダンが訪れたキャンピングカーが見えました。



キャンピングカーの中では、ヨハンヌがヨルダンに声を掛けていました。実は、ヨハンヌとヨルダンは、かつて恋人同士でした。実は、2人は初対面ではなく、久々の再会だったのです。ヨルダンは、キャンピングカーのシャワーを使わせてもらうだけでなく、夕食までご馳走になります。しかし、そんな幸せも束の間、ヨルダンは、…。



クリステン(トマス・ノールストロム)と肉体関係にあるカリン(ニーナ・アンドレセン=ボールド)には、以前から強い結婚願望がありました。しかし、クリステンには、妻・リヴと子どもがいました。クリステンは、1年前から、リヴと別れて、カリンと結婚したいと考えていましたが、子どもの幸せを考えると、リヴと別れるのが怖くて、カリンとの結婚をついつい先延ばしにしていました。この優柔不断さが、後に何とも気まずい出来事の原因になってしまうとは、まだ誰も想像できませんでした。



自宅の小屋の中でサンタクロースの衣装に身を包んだパウルは、小屋を出て、自宅に入ろうとしていました。しかし、ホロアルが小屋まで近付いてくるのが見え、慌てて奥に引っ込んでしまいます。そして、ホロアルが中に入ってくると、パウルは背後から口を塞ぎ、押し倒します。そして、シャベルで頭を殴り、クリスマスプレゼントを持って、急いで小屋を出ていくのですが…。



この映画は、ノルウェーの人気作家レヴィ・ヘンリクセンの短編集を、ノルウェー出身のベント・ハーメル監督が映画化したものです。同監督の代表作には「キッチン・ストーリー」(2002年)、「ホルテンさんのはじめての冒険」(2007年)があり、どちらも、アカデミー賞外国語映画賞ノルウェー代表作品に選ばれています。



この映画を観て思ったのは、絶対に見逃してはいけない伏線が随所に散りばめられている事です。これからこの映画をご覧になりたい方のために、結末は申し上げませんが、伏線を幾つか挙げると、冒頭のシーンでゴランに銃口が向けられるところ、オープニングタイトルで男性が身重の妻と一緒に雪深い道を歩いているところ、ヨルダンがスポーツ用品店のショーウィンドーの前に立っているところ等があります。特に、冒頭のシーンやオープニングタイトルは、あまり深く考えずに観ると申しますか、なんとなくボーっとしながら観る方が少なくないかと思いますが、ボーっとしてはいけません。どの伏線もよく覚えておくと、物語の後半で思わず「ああ、あれはこういう事だったのか」と言ってしまいそうになりますよ。そして、ラストシーンでは綺麗なオーロラに癒されますよ。冒頭のシーンからラストシーンまで、しっかりと目に焼き付けるべき映画です。上映時間も、1時間29分と短いので、疲れる心配もありません。ぜひご覧いただけたらと思います。


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