ロスト・イン・マンハッタン 人生をもう一度(2014年 アメリカ)


ロスト・イン・マンハッタン 人生をもう一度 [DVD]
アメイジングD.C.
2015-11-04

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト



冬真っ只中のニューヨーク・クィーンズ。あるアパートの空き家に、3人の清掃業者の男性が入ってきます。この部屋は、どこも散らかり放題で、酷い有り様。3人は、片っ端からゴミを片付けていきます。しかし、誰も住んでいないはずの部屋に、1人のホームレスの男性の姿が。バスタブの中でぐっすりと眠っているこの男性の名は、ジョージ(リチャード・ギア)。ジョージは、清掃業者の1人に強い口調で起こされると、「ここは、女友達のシーラの部屋だ」と主張します。しかし、清掃業者の3人にとって、そんな事はどうでもいい事でした。あくまで、この部屋を片付けるためにやって来たのですから。シーラが帰ってくるのをひたすら待つジョージは、清掃業者にとって、迷惑なだけでした。ジョージは、「シーラは、絶対に戻ってくる。ここは、自分の家だ」と自分の意見を強調しますが、全く理解してもらえませんでした。こうして、ジョージは、とうとうこの部屋を後にするのですが、この時、自身の財布をいつの間にかなくしていた事が分かります。


なかなか捨てられない人のための 鬼速片づけ
アスコム
吉川永里子

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト



ジョージは、街にあるベンチに腰を下ろし、アパートの外で片付けの依頼主が清掃業者の1人と一緒に費用について話し合いをしているのを見つけるとそっと近づき、財布をなくした事、まだシーラの帰りを待っている事を伝えます。しかし、清掃業者はジョージの事をだいぶ鬱陶しがっていました。しかし、依頼主の方は、ジョージに同情し、金銭を渡してしまいます。ジョージは、遠慮なくこれを受け取り、アパートを後にするのでした。



ジョージは、早速、近くの雑貨店でウィスキーの入った瓶を購入し、ラッパ飲みをし始めます。そして、しばらくすると、シーラが戻ってくる事のないアパートに戻るのですが、ジョージは、シーラの部屋の番号を知らないため、片っ端から呼び鈴を押していき、アパートの住民を次々に怒らせてしまいます。しかし、呼び鈴の音に驚き、怒った住民の中で、1人だけ玄関の鍵を開けてくれた人がいたため、ジョージは、最終的にアパートの玄関を通過する事ができました。しかし、ジョージが向かった先は、シーラが暮らしていた部屋ではなく、アパートのゴミ置き場でした。ジョージ曰く、公衆電話でシーラに電話をかけた際に、シーラからゴミ置き場で待つよう、言われたとの事。ジョージは、偶然自分を見つけてくれた若い男性に、ゴミ置き場を出るよう、諭されるのでした。



翌朝、ジョージはアパートに留まっていました。片付けの依頼主と清掃業者がアパートを離れるのを見ると、誰も来ないのを確認した上で、足元に固めてあった幾つかのバッグの中身をあさります。そして、何か写真らしきものを見つけると、ジャケットのポケットにそれをしまいます。夜、ジョージは、街のベンチに腰掛けたり、横になったり、立ちあがったりと、どこか落ち着きがありません。さらに、夜が更けて、横になると、通りがかりの不良グループから靴を投げられてしまいます。しかし、ジョージはショックを受けるどころか、別の通りがかりの人たちに、物乞いをします。物乞いの結果、ジョージは、メトロカードを手に入れます。そして、メトロカードを使って、地下鉄に乗車します。その後、地下鉄を降車したジョージは、公衆電話で、ある相手に電話を掛けますが、残念ながら、電話は繋がりませんでした。ジョージは、しばらくの間、街を彷徨うしかありませんでした。



しばらくして、歩き疲れてしまったジョージは、ブロンドヘアの若い女性・マギー(ジェナ・マローン)がドレッドヘアの男性とキスをしながら歩いているのを見つけ、しばらくの間、後を追いかけます。マギーは「タクシーに乗る」というその男性と街角で別れた後、仕事に向かいます。マギーは、バーで、バーテンダーとして働いていました。夜、バーで真面目に仕事をこなすマギーを、ジョージは、外から微笑みながら見つめていました。ジョージは、バーの近くを歩いていた電話中の若い男性に声をかけ、プレゼントと称して、ジャケットにしまっていた写真をマギーに渡すよう、頼み込みます。男性は、二つ返事でそれを引き受け、すぐにマギーに写真を渡します。マギーは、写真を見た瞬間、顔が強張ります。男性は、「小さい頃の写真か?」とマギーに尋ねます。バーの外にいたジョージは、両者のやり取りを見て、満足そうな表情を浮かべたまでは良かったのですが、自分がバーの外で立っているのをマギーに気付いてもらえず、その悲しい気持ちを早く忘れるために、足早にその場を去っていきます。



その後、ジョージは、マンハッタンにある病院の救急病棟のベンチに腰掛けて、眠っていましたが、そこを通りかかった女性看護師に声を掛けられ、目を覚まします。自身の体調やこの病院に来た経緯を丁寧に尋ねてくる女性看護師に対し、ジョージは、「大丈夫」とだけ言い、立ち上がります。ジョージは、一旦、病院を後にしますが、すぐに戻り、声を掛けてくれた女性看護師の姿を見つけ、近付いていきます。女性看護師は、ジョージを、「ホームレスなのではないか」と察し、聖バーツ教会で朝の炊き出しが行われている事を教えます。ジョージは、炊き出しへの参加に興味がありませんでしたが、しばらくの間、女性看護師と一緒に雑談を楽しんでいました。その後、ジョージは、帰る家がない事を明かし、女性看護師の自宅へ転がり込む事を思い付くのですが、すぐに下心を見破られてしまいます。



翌朝、ジョージは、マギーが働いているバーを再び訪れます。バーの前には、勤務時間を終え、同僚たちと別れるマギーの姿が見えましたが、どうしても声を掛けられません。ジョージは、着ていたジャケットを近くの質店で売り、手に入れたばかりのお金で缶ビールを買ってしまいます。



ジョージは、買ったばかりの缶ビールを早速飲み干し、教会へ行きます。教会に寄付された衣類の中に、十分に寒さを凌げそうなジャケットがあればと思ったのです。その後、教会で新しくジャケットを手に入れ、早速袖を通したジョージは、再び、あの女性看護師に会いに、病院の救急病棟を訪ねます。しかし、ジョージは、女性看護師の同僚にあたる男性看護師に、病院から出て行くよう言われてしまいます。特に用事がない人を、病院に入れる訳にはいかないからです。男性看護師の隣には、あの女性看護師の姿がありました。女性看護師は、「(ジョージは)診察が必要なのかもしれない」と、男性看護師に話し掛けますが、男性看護師は毅然とした態度を取るのみでした。



その後、ジョージが向かったのは、ホームレスの保護施設でした。病院で男性看護師がこの施設の事を教えてくれたのです。入口の前では大勢のホームレスが列を成し、至る所で彼らの怒号が飛び交っていました。ジョージは、女性職員からこの施設に来た経緯を尋ねられます。ジョージは、「クィーンズのシーラのアパートで暮らしていた」、「自分には行く当てがないにもかかわらず、シーラは『さよなら』も言わずに出て行った」と答えます。そして、「ご家族は?」と尋ねられた時、ジョージは突然、顔が強張ります。ジョージは、「もし、家族がいる事を伝えたら、今度は、この施設からも追い出されるのではないか」という恐怖で頭がいっぱいになります。



実は、ジョージは、一度だけ結婚した事がありました。しかし、離婚後、元妻が乳がんで亡くなり、元妻が親権を持っていた一人娘とは長い間連絡を取っていませんでした。なぜなら、離婚の原因がジョージにあるからです。妻や娘と過ごすかけがえのない時間を常に後回しにして、自由奔放に生活をしてきたジョージを、娘は今でも父親として認めたくないのです。だから、ジョージは、娘のいる場所のすぐ近くまで来る事はできても、直接話し掛けられないのです。そうです、ジョージの娘は、あのマギーなのです…。



この映画は、ジョージ役のリチャード・ギアが制作の10年前から構想を温め、自らプロデュースする形で制作されました。彼の並々ならぬ役作りには、アメリカの貧困層問題に対する思い入れの強さが感じられます。当時、撮影中に、待ち行く人が彼を本物のホームレスと間違え、施しをした様子がニュースになった程です。だからといって、多くのハリウッド映画ファンが持つ俳優リチャード・ギアのハンサムな男性のイメージが全く封印されている訳ではありません。病院の救急病棟やホームレスの保護施設など、劇中で彼が行く先々で、色々な人々が「ハンサムなのに、なぜこのような生活を?」と尋ねていますし、病院の救急病棟で女性看護師と出会うシーンでは、「僕は、出会った女性を皆、大切にしている。」と女性のハートを刺激する台詞を発しているので、従来のイメージを上手に活かして、新境地を開いたのだなあと感じました。そんな彼の熱意が評価され、この映画は、2014年に、トロント国際映画祭国際批評家連盟賞を受賞しました。



最後に、この映画のラストシーンに少し触れたいと思います。ラストシーンに、ジョージの娘・マギーの基本的な物の考え方をよく表している台詞があります。ジョージに置かれた状況は、色々な事があって、良くなるどころか、いよいよ崖っぷちまで追い詰められ、マギーに助けを求めるのですが、マギーは、腕組みをしたまま、ジョージを睨んだり、横を向いたりしながら、このように言葉を発します。「普通の家庭なら、両親が子どもの面倒を見る。」子どもには両親が揃っていて当たり前ともとれる言葉で、ジョージに対する怨恨以上に、視野が狭いまま大人になってしまった残念さが感じられ、父と娘との間の溝の深さが、物凄く伝わってきました。このブログをお読みいただいている方の中には、私とは正反対の考えをお持ちの方がいらっしゃるのではないかと考えていますが、人間は、視野が広くなれば、「世の中には、色々な生活の形があるのだ」と考えられるようになります。マギーにそんな気持ちが育まれていないせいで、ジョージも、マギーも、それぞれ苦労しているのかと思うと、2人共、時間の過ごし方が本当に勿体ないです。そんな事を私に考えさせた映画でした。


ロスト・イン・マンハッタン 人生をもう一度 [DVD]
アメイジングD.C.
2015-11-04

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト



ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント


この記事へのトラックバック