ベニスに死す(1971年 イタリア・フランス)


ベニスに死す [WB COLLECTION][AmazonDVDコレクション] [DVD]
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
2018-01-17

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1911年、ドイツの有名な作曲家・指揮者のグスタフ・アッシェンバッハ(ダーク・ボガード)が、休暇を過ごすため、蒸気船に乗って、イタリア・ベニス(ヴェネチア)を訪れます。途中で、地元の船頭が漕ぐゴンドラに乗り換え、向かった先は、避暑地として知られるリド島に建つ1軒のホテルでした。


ベニスに死す (集英社文庫)
集英社
2011-08-19
トーマス マン

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その後、ホテルに到着し、チェックインを済ませたグスタフは、タキシードに身を包み、ホテルのラウンジを訪れます。オーケストラの生演奏が流れる中、椅子に腰掛けたグスタフは、しばらくの間、退屈しのぎに、ラウンジにあった新聞を広げます。やがて、新聞を読むのも退屈になってくると、今度は、新聞を広げたまま、周りの様子を観察し始めます。すると、グスタフの視界に、幼い3人の少女たちと一緒にいる、1人の美少年の姿が入ってきます。セーラー服を着ていたその美少年は、とにかく、若い大人の女性のように透き通った肌、まばゆいくらいに輝く長い金髪、つぶらな瞳の持ち主で、椅子に腰掛けて、じっと前を見つめています。彼の名は、タッジオ(ビョルン・アンドレセン)。ポーランド人であるタッジオは、母親(シルヴァーナ・マンガーノ)とその娘にあたる3人の少女たち、少女たちの家庭教師と一緒に、ベニスを訪れていました。グスタフは、時間が経つのも忘れて、タッジオの美しい容姿に見とれていました。その後、ホテルのレストランに入ったグスタフは、偶然、タッジオの姿を再び見つけ、いつまでもタッジオの姿を眺めるのでした。


シネマ・クラシック「ベニスに死す」~ルキーノ・ヴィスコンティ編
ポリドール
1997-07-25
オムニバス(クラシック)

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グスタフがホテルにチェックインして10日目、グスタフは、ホテルのレストランで食事をしていました。すると、そこへタッジオがやって来ます。タッジオは、グスタフの席から少し離れた席に座ると、グスタフのいる方を向いて、しばらくの間、グスタフを見つめます。その後、レストランを出たグスタフは、ホテルのすぐ近くにある砂浜を訪れます。そこでは、タッジオが水着姿で散策をしていました。グスタフは、またしてもタッジオの生まれ持った美しさに見入ってしまいます。



砂浜からホテルに戻ったグスタフは、3階にある自分の部屋へ戻るため、エレベーターに乗ります。タッジオも、偶然ですが、同じエレベーターに乗り、2階で降ります。エレベーターを降りた時、タッジオはグスタフの顔を見つめ、部屋へと向かいます。その後、3階でエレベーターを降り、部屋に戻ったグスタフは、何か恐怖に怯えているような顔をしていました。着ていた上着を思いっきり叩きつけ、椅子に腰掛けてもなかなか落ち着かず、なんと、クローゼットにあった荷物をまとめ始めます。一体、グスタフに何があったのでしょうか。



グスタフが恐怖に怯える理由は、生まれ持った性格にありました。かつて、親友・アルフリート(マーク・バーンズ)を相手に、芸術のあり方について激論を交わした際、アルフリートから、グスタフの音楽の才能のなさを正直に言われてしまったのです。アルフリートは、「恐怖を感じ取る感性がない」、「人間嫌いで、わざと人間と距離を取る」、「堅苦しいモラルを守り、何事においても完璧を求める」と、グスタフに向かって、怒った口調で欠点を次から次へと指摘し、「芸術はモラルを超えるものだ」と断言したのです。当時、グスタフにも、プロの音楽家としての意地があるので、アルフリートの意見をなかなか素直に認めようとはしませんでした。しかし、自分と同じ男性であるタッジオを強く意識するようになった今、アルフリートの言葉の数々が胸に突き刺さるのです。


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グスタフは、タッジオと距離を置くため、急遽、ホテルをチェックアウトし、ミュンヘンに戻る事にします。グスタフは、タッジオの事でまだ動揺しており、額からは、いつまで経っても汗が流れ続け、止まる気配がありません。しかし、チェックアウトを済ませた後に、ホテルのレストランで朝食を食べ、レストランを出る際に、タッジオとすれ違ってしまいます。タッジオはグスタフの顔を見て微笑み、グスタフは「短い出会いだった」と呟き、帰途につきます。グスタフは、これで許されぬ恋に終止符を打ったつもりでいました。



ところが、グスタフが船から汽車に乗り換えようとした時に、思わぬ手違いが発覚します。荷物が、ミュンヘンではなく、イタリアの北部にあるコモ湖に行ってしまったというのです。実は、グスタフは、ホテルのレストランで朝食を摂っている途中で、「もうすぐ船が出発する」とホテルのスタッフに急かされたが故に、先に荷物を運び出すよう頼み、駅で汽車の切符を買った時には、「あと4分で出発する。乗り遅れたら、明日まで待たなければならない」と駅員に言われたが故に、大急ぎでプラットホームに向かっていました。こんなにも大急ぎでミュンヘンに向かっていたのに、グスタフはいきなり足を引っ張られてしまったのです。



手違いを知らせに来た駅員は、「先に汽車に乗車してください、荷物は3日後にミュンヘンに着くよう、手配しますから」とグスタフに約束するのですが、グスタフは怒り心頭の表情で、「荷物が手元に戻るまで、ベニスを離れない」と言い出し、汽車の切符を払い戻して、ホテルのあるリド島へ戻ってしまいます。リド島へ向かう船に乗った時のグスタフの表情は、怒りがすっかり収まり、穏やかになっていました。タッジオの事を一切忘れたくて、一刻も早くミュンヘンに戻りたかったのが、まるで嘘のようです。



再びホテルにチェックインし、新しく手配された部屋に入ったグスタフは、砂浜が見える窓を開けて、水着姿で散策するタッジオを嬉しそうに眺め、そして、もっとタッジオに近付きたくて、砂浜に向かいます。砂浜に着くと、タッジオが子どもたちと遊んでいて、全身砂だらけになっていました。グスタフは、そんなタッジオの姿が間近で見られるだけで幸せでした。グスタフは、タッジオを愛する気持ちがますます高まっていき、やがて、「他の誰にも微笑まないでほしい」と独占欲が湧いたり、「愛している」と独り言を言ったりするまでになるのです。



しかし、この頃、ベニスでは、アジア型コレラの蔓延が時間の問題となっていました。グスタフは、町で人々が消毒薬を撒くのを何度も目にしては、その理由を尋ねたのですが、誰もが口をつぐみます。それには、ベニスならではの事情がありました。ベニスは観光業だけで成り立っている町。もし、ベニスでアジア型コレラが蔓延しようとしているという事実が広く知られたら、観光客の数が大幅に減り、ベニスにとって大きな打撃となってしまいます。地元の警察は、「事実を隠す事で、観光客の数を保てたら」と考え、住民たちに対し、釘を打っていたのです。



グスタフにその事実を教えてくれたのは、グスタフが外貨の両替のために訪れた、地元の銀行の支店長でした。最初は、グスタフに対し、表向きの理由を話す支店長でしたが、グスタフがどうしても本当の理由を知りたがっているのを察すると、グスタフを別室に案内して、真実を打ち明けたのです。支店長は、アジア型コレラが蔓延する前にベニスを離れるよう、勧めます。それは、グスタフにとって、タッジオとの恋の終わりを意味していました…。



「ベニスに死す」は、ルキノ・ヴィスコンティ監督がメガホンを取った「ドイツ三部作」の第2作目にあたり、トーマス・マンが発表した同名タイトルの小説が映画化されたものです。「ドイツ三部作」は、物語の舞台がドイツ、主人公の国籍がドイツ或いはオーストリアである事が特徴ですが、「ベニスに死す」だけは、あらすじにあったように、物語の舞台がイタリアとなっています。因みに、第1作目は、1930年代のドイツを舞台に、製鉄一族の衰退を描いた「地獄に堕ちた勇者ども」(1969年)、第3作目は、19世紀のバイエルン王国(現・ドイツ)の国王・ルートヴィヒⅡ世の即位から死までを描いた「ルートヴィヒ」(1972年)です。



「ベニスに死す」の見どころは、何と言っても、物語の軸となる、グスタフとタッジオの2人です。ダーク・ボガード演じるグスタフは、生真面目で、誰にも言えないような事がこれまで絶対にできなかった性格であるのと、現代とは全く違い、LGBTである事を非常に公表し辛い時代を行きたのとで、タッジオに対する恋愛感情をたった1人で抱え込まなければならない苦しみを熱演していました。また、ビョルン・アンドレセン演じるタッジオは、少女漫画の世界から飛び出してきたような、あまりの美しさに思わず驚いてしまいました。それ故に、グスタフの顔を見て、無言で微笑むシーンには、男女問わず、惚れてしまうのではないかという不気味さを覚えました。2人は、無言で見つめ合うだけで、言葉を交わす事はほとんどありませんが、20世紀初頭に生きた者として、できる限りの事をやり切ったのだと思いますし、双方の感情の大きさも凄く伝わってきました。



銀行で支店長からベニスを離れるよう勧められるグスタフですが、この後、やはり、タッジオの事を諦められず、ある思い切った行動に出ます。私が観た感想は、「執念深い」とも言えるし、「何もここまでやらなくても」とも言えると思います。一体、グスタフはどうなってしまうのでしょうか?


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