ブエノスアイレス(1997年 香港)


ブエノスアイレス [DVD]
KADOKAWA / 角川書店
2014-11-28

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アルゼンチン・ブエノスアイレス。ある事情で、生まれ育った香港を離れ、この地にやって来たファイ(トニー・レオン)は、1軒のタンゴ・バーで、台湾からの観光客を相手に、ドアマンとして働いていました。同性愛者であるファイには、同じ香港出身の交際相手・ウィン(レスリー・チャン)がいました。ファイは、ウィンから復縁を迫られていました。しかも、復縁を迫られるのは、これが初めてではありませんでした。何度も喧嘩別れをしては、ウィンの方から「やり直そう」と復縁を持ちかけられ、ファイはそれに応じていたのです。しかし、数え切れないほど使われてきたこの言葉には、効力がほとんどありませんでした。ファイは、同じ事の繰り返しに疲れ、心機一転、香港を離れて、ブエノスアイレスに渡ったのです。しかし、ファイを諦められないウィンは、ブエノスアイレスまで追いかけ、ファイは、香港に戻りたい気持ちでいっぱいになります。





ある日、ファイは、香港に帰る前の思い出作りにと、ウィンを誘い、車でイグアスの滝へ向かいます。しかし、2人は、途中で道に迷ってしまいます。さらに、追い打ちをかけるように、車も故障してしまい、ウィンは、「バスでイグアスの滝へ行くべきだった」と後悔しますが、ファイは、「30時間もバスに揺られるよりかは良い」と考え、車の修理を試みます。ファイは、ウィンに車から降りてもらい、後ろから車を思いっきり押すよう頼みます。ウィンがファイに言われた通りに車を押すと、車は無事に動き始めるのでした。



ブエノスアイレスでも、ファイは、ウィンとよく喧嘩をしていました。理由は、ウィンがファイの稼いだお金をついつい使ってしまう事にありました。そのため、ファイは、いつまで経っても、香港へ帰るための旅費を十分に貯められなかったのです。それでも、残念な事に、ウィンの浪費癖が治る気配は全くありませんでした。ウィンは、金銭的には満たされているように見えますが、実は、金銭とは別の事で、不満を持っていました。ファイに会える機会が少なく、孤独な気持ちになっていたのです。それ故に、ウィンは、ファイに電話をかけ、自身の滞在先のホテルの部屋に来てもらっていたのです。しかし、ウィンの期待とは裏腹に、ファイは、ウィンの孤独を満たすどころか、勝手にお金を使われている現実に憤りを覚えるのでした。



ある日、ウィンが、突然、ファイの元を訪ねてきます。ウィンは、頭から血を流し、両手にも怪我をし、今にも泣きそうな顔をしていました。ファイは、ウィンを病院へ連れて行きます。治療が終わり、待合室の椅子に腰掛けるウィンに、ファイは声を掛け、事情を聞き出そうとするのですが、ウィンの口から出てきた言葉は、またしても「やり直そう」でした。ウィンはファイと一緒にホテルの部屋へ帰ります。ファイは、すぐに自宅へは戻らず、しばらくの間、ウィンと一緒に語り合います。ファイがブエノスアイレスのどこに部屋を借りているのか、いつか一緒にイグアスの滝に行ってみたいという夢など、2人は、たわいもない話ばかりするのでした。翌日以降も、ファイは、ウィンがいるホテルに出向き、ウィンの身の回りの世話をします。食事を作って食べさせたり、(医師から入浴を禁じられているので、)濡らしたタオルで体を拭いたりと、ファイは、夫の世話に勤しむ健気な妻のようでした。



その後、ファイは、ドアマンの仕事を辞め、中国料理店の厨房で働き始めます。毎日遅い時間まで真面目に働き、頻繁にかかってくるウィンからの電話にきちんと出るファイ。そんなファイの姿を見ていた、台北出身の後輩・チャン(チャン・チェン)は、なぜ同じ人物からファイに何度も電話がかかってくるのか、気になっていました。ある日、ウィンからの電話に出ていたファイは、電話の途中で、厨房にある卵を取ってほしいと同僚に頼まれ、席を外します。ファイの事がずっと気になっていたチャンは、誰がファイに電話をかけるのかがどうしても気になり、保留中だった電話にわざと出てみます。しかし、ファイがすぐにこれに気付き、受話器をチェンから奪い返します。この事がきっかけで、ウィンは、ファイが誰か他の男性に取られたのだと思い込むようになります。そして、ファイとウィンは、互いに激しい口調で口論をするようになるのです…。



「ブエノスアイレス」は、ウォン・カーウァイ監督の代名詞と言える映画の一つで、1997年に、第50回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で監督賞を受賞しています。これまで、香港を舞台にした映画のみを世に送り出してきたウォン監督ですが、この映画は、香港ではなく海外を物語の舞台にしている事、さらに、同性愛をテーマにしている事が特徴で、まさに異色の存在と言えます。



また、この映画は、モノクロ映像とカラー映像を併用しているのが特徴です。モノクロ映像で描かれているシーンには、モノクロ映像にしか出せない魅力が随所に見られます。例えば、ファイとウィンが車でイグアスの滝に向かうシーンは、モノクロ映像だからこそ表現できる哀愁が感じられます。どこまでも続く野原を通る一本道を、見るからに壊れそうなクラシックカーが通っていく様子は、不思議と哀愁を感じてしまいます。また、モノクロ映像は、ファイが働くバーも魅力的に描いています。アルゼンチン・タンゴ独特の音色を奏でるバンドネオン(アコーディオンを小さくしたような楽器)や、アルゼンチン・タンゴを踊る男女ペアの体の輪郭の美しさに、思わずうっとりしてしまいました。「うっとり」と言えば、ファイが煙草を吸うシーンもそうで、モノクロ映像でなければ、あのような渋さは出ないと思いました。もちろん、カラー映像にもカラー映像ならではの魅力があります。例えば、ウィンの部屋は、色々な物が床に散乱していますが、カラー映像のおかげで、散乱している物の一つ一つがカラフルに映し出され、部屋全体が不思議と芸術的に見えます。また、ブエノスアイレスの市街地の映像も、カラー映像のおかげで、町の活気を感じる事ができます。



ファイを演じたトニー・レオンは、浪費癖が治らないウィンに怒りをぶつけたり、両手を怪我したウィンの世話を健気に続けたりと、女性の長所を見事に表現しています。一方、ウィンを演じたレスリー・チャンは、どんなにファイに叱られても、何の罪の意識もなく大金を使い込んだり、ファイに会って、思う存分甘えるべく、頻繁にファイを呼び出したりと、女性の短所を見事に演じています。この映画は、同性愛をテーマにしていますが、男性のカップルというよりか、むしろ、女性のカップルを見ているような印象を受けました。



この後、ファイは中国料理店を退職し、今度はさらに給料が高い食肉加工場に転職します。なぜ、ファイは、こんなに職を転々とするのでしょうか。実は、ファイは、ウィンとの関係に疲れただけではありません。ファイは、香港に居続けられなくなった、ある深刻な過去を抱えています。真相が気になる方は、ぜひチェックを。


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