マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙(2011年 イギリス)





現代のイギリス・ロンドン。ある小さな雑貨店に、一人の年老いた女性が牛乳を買いにやって来ます。レジで手の指を小さく震わせながら会計を済ませるその女性は、かつて11年半の長きにわたりイギリスの舵取りを担ってきた、あのマーガレット・サッチャー(メリル・ストリープ)でした。帰宅後、食事をとっていたマーガレットは、トーストにたっぷりとバターを塗る夫・デニス(ジム・ブロードベント)をたしなめます。しかし、本当はデニスの姿はそこにはありません。マーガレットは、認知症を患っており、しばしばデニスの幻が目の前に現れていたのです。





マーガレット・ロバーツ(アレクサンドラ・ローチ ※後のマーガレット・サッチャー)は、1925年にイングランド東部のグランサムで、雑貨店の娘として生まれます。マーガレットは、雑貨店を営む傍ら地元の市長を務めた父の「他人は他人だ。自分の道を行け。」という教えを守って成長していきます。マーガレットは、やがて、父の影響で政治家を志すようになり、オックスフォード大学を卒業します。そして、24歳の時に保守党から下院議員選挙に立候補するのですが、あえなく落選。落選の一報を耳にしたマーガレットは、ひどく落ち込みますが、かねてから交際していた実業家のデニス・サッチャー(ハリー・ロイド)が駆けつけ、勇気付けられます。そして、デニスは、なんとその場でマーガレットにプロポーズ。マーガレットは、「食器を洗って一生を終えるつもりはない」と、政治家を目指し続ける事を了承してもらった上で、承諾するのでした。


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1959年、デニスと結婚し、男女の双子の母となっていたマーガレットは、再び下院議員選挙に立候補し、初当選を果たします。晴れて下院議員の仲間入りを果たし、初登院したマーガレットを待っていたのは、文字通りの男社会でした。マーガレットは、自分以外に女性議員が一人もいない中で孤独な闘いを続けてきた結果、1970年に教育相に抜擢されます。教育相として議会で学校の環境の劣悪さを力強く訴えるマーガレットでしたが、野党の議員たちは彼女の独特の甲高い声をからかうばかりでした。


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1974年、マーガレットは、保守党の党首選挙に立候補する決意をします。当時の首相・ヒースをはじめとする保守党の政治家たちが弱腰になっている現状を憂いでいたのです。当選を果たすために、マーガレットは、それまでトレードマークだった帽子を被ることをやめ、甲高い声を矯正するためにボイストレーニングに励みます。こうして、マーガレットは、努力の甲斐あって、見事に当選を果たし、保守党初の女性党首となります。


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1979年、マーガレットは、ついにイギリス初の女性首相となります。しかし、首相として歩む道は、まさに茨の道でした。炭鉱の閉鎖や公社の民営化は、富裕層と失業した労働階級の人々との格差を大きく広げて、失業者たちを激高させました。1982年に勃発したフォークランド紛争では、イギリス軍が勝利を収めましたが、数多くの兵士が犠牲となり、マーガレットが自ら遺族にお詫びの手紙をしたためました。1984年には、保守党の党大会のため、イングランドのブライトンに夫婦で滞在していたホテルで、IRA(アイルランド共和軍)が起こした爆破テロに巻き込まれましたが、幸い、マーガレット、デニス共に無事でした。マーガレットは、野党や失業者、IRAからの痛烈な批判をものともせずに、常に己の信じる道を歩み続けたのです。



フォークランド紛争での勝利を機に、イギリスは好景気の時代に突入し、マーガレットの支持率も上昇。気が付けば、首相に就任してから10年の歳月が流れていました。しかし、マーガレットの父の教えに基づいた政治姿勢は、逆に言えば、周囲の意見にあまり耳を傾けないということ。閣僚たちからの的確なアドバイスがあっても、次第に耳を貸さなくなり、閣僚たちはやる気をなくしていきました。1990年、保守党の党首選挙で、マーガレットは自信を持って当選を目指しますが、閣僚たちとの信頼関係は崩壊し、野党からの批判は激しさを増し、国民の支持率は低下する一方で、もはや、マーガレットに当選の見込みはありませんでした…。



マーガレットを演じたメリル・ストリープは、この映画での演技が高く評価され、2012年に第84回アカデミー賞で主演女優賞を受賞しました。「プラダを着た悪魔」や「ジュリー&ジュリア」等で、品格とカリスマ性を兼ね備えた女性を見事に演じてきたので、今回の役柄はまさに彼女にうってつけです。また、イギリス英語の発音はほとんど違和感が感じられず、マーガレット本人の特徴である、少々大げさな話し方も上手く再現できていたように思います。
私はこの映画を観て、国のトップならではの批判やプレッシャー、これらを気にし過ぎない精神力の凄さを見せつけられた想いがしました。批判したり、プレッシャーを与える側は、その場で思ったことを口に出したり、行動にしたりするだけで済みますが、相手側である国のトップたちはこれらを毎日のように目にしたり耳にしたりするわけですから、これらに耐え続ける大変さは、私たち一般市民の想像をはるかに上回るものがあるのではないでしょうか。マーガレットの場合は、父からの教えのおかげで様々な雑音を乗り越えてきましたが、首相時代だけでも11年半も耐えてきたことを考えると、改めて凄い精神力の持ち主だったことがよく分かります。彼女の偉大さがよく分かる名作です。








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